チャンプルーや沖縄そばに代表される沖縄料理には、油っぽく塩味が強いイメージがあるかもしれない。しかし、実は沖縄料理は、タンパク質豊富な豆腐や季節の島野菜を使い、カツオや肉のだしも効かせた健康食。今回はそんな沖縄料理の魅力を存分に堪能できる、地元民イチオシの名店を紹介しよう。

絶対に失敗しない沖縄料理店をご紹介!

すべて美味! 心と体に優しい"アンマー"の味

ゆいレール「美栄橋駅」から徒歩3分とアクセスの良い「まーちぬ家(まーちぬや)」は、繁華街近くにありながらどこかほっと落ち着ける雰囲気の一軒だ。こちらでいただけるのは、素朴で優しい味わいの家庭的な沖縄料理。店名は沖縄の方言で"松の家"という意味で、店内にはその名の通り琉球松がふんだんに使われている。

リピーター客ですぐ満席に! オンシーズンや週末は必ず予約を!

同店の料理は、沖縄の方言でお母さんを指す"アンマー"の愛情にあふれている。例えば、「島らっきょうの塩漬け」(450円)では1つひとつ手作業で下処理を施し、島野菜"ハンダマ"を使った「ハンダマ炒め」(600円)は注文ごとにさっと手際よく調理する。人数に応じて量の調整をしてくれるので、気になる料理を少しずつ試すのにもちょうど良い。

「島らっきょうの塩漬け」(450円)はシャキシャキ感を残しつつ、適度な塩で甘みを引き出している

「ハンダマ炒め」(600円)。ハンダマはハーブのような風味の伝統的農作物で、貧血や目に良いとされる

同店では料理のおいしさと合わせて、店主の心尽くしも印象に残る。名前で呼んでくれたり、会計時にはフルーツのサービスがあったりと、至れり尽くせりのおもてなしに感動せずにはいられない。「これ以上混むとお店に入りづらくなるので、あまり教えたくない……」となじみの地元客が口をそろえるのも納得だ。

ほどよい量で提供してもらえる料理の数々。ついつい箸がすすんでしまう

●infomation
まーちぬ家(まーちぬや)
沖縄県那覇市前島2-7-14

地元サラリーマンも和む民謡酒場

沖縄料理と民謡を同時に楽しめる"民謡酒場"も一度は訪れておきたいところ。国際通りを歩けば「飲んで踊れて楽しいよ! もうライブが始まっちゃうよ! 」と客引きのお兄さんに声を掛けられることもしばしば。が、せっかく楽しむなら歌い手との距離が近く、料理の旨いところがいい。

ゆいレール「県庁前駅」から徒歩5分の位置にひっそりとたたずむ居酒屋「あっぱりしゃん」は、そんな心温まる店のひとつだ。まるで沖縄の友人宅に招かれたような雰囲気の中、沖縄料理と八重山民謡をじっくりと味わえる。

久茂地川沿いを歩くとのれんを発見!

石垣島出身のオーナーが開いた同店で提供するのは、沖縄本島でも珍しい八重山諸島の料理。看板メニューは八重山蒲鉾(かまぼこ)の「ちきあぎ」(680円)や、「オオタニワタリの天ぷら」(680円)など。これに合わせる泡盛も、やはり同じ八重山諸島のものを選びたい。個性的な風味が後を引く「白百合」(550円)は、現地ではハレの日に飲まれるという八重山諸島・石垣島の名酒だ。

ふわふわの軽い食感でいくらでも食べられる"八重山蒲鉾(かまぼこ)"「ちきあぎ」(680円)

「オオタニワタリの天ぷら」(680円)は爽やかな風味

人気の民謡ライブは、あえて開催時間を決めずに、客の顔や店内の様子を見てたびたび披露される。先ほどまで配膳をしていたスタッフが真剣な面持ちで音響を整えはじめると、自然と期待感が膨らんでくる。ライブ会場は手が届きそうなくらいの至近距離。八重山に伝わる民謡から耳なじみのある沖縄ソングまで、客との掛け合いを楽しみながら伸びやかに歌い上げる。

この手のお店は旅行者で埋め尽くされるかと思いきや、オフィス街近くというアクセスの良さもあり、会社帰りのサラリーマンやOLの姿も少なくない。ほかとは一味違った本場の歌声は地元民の心を癒やし、彼ら・彼女らの明日の活力にもなっているのだろう。最後は全員で手踊り"カチャーシー"を踊り、会場は大盛り上がり! 南の島で語り継がれる特別な歌と踊りに酔いしれよう。

目を閉じれば八重山の夜空が浮かんでくる。旅情溢れる歌に感涙必至!

●infomation
あっぱりしゃん
沖縄県那覇市久茂地3-23-8 2F

沖縄の人情に触れる名物酒場

琉球王国として栄えた沖縄には、独自の文化・慣習が数多く存在する。滋養強壮に絶大な効果を発揮する食材として、ヤギを食べるのもそのひとつ。お疲れ気味の方は、ゆいレール「牧志駅」から徒歩4分、国際通りから一歩入った竜宮通りに店を構える「山羊料理さかえ」へ。「山羊さしみ」(1,300円)は、二日酔いの心配も日頃の疲れも一気に吹き飛んでしまうほどのスタミナをチャージできる一品だ。

15時頃から営業しているので明るいうちからどうぞ

「山羊さしみ」(1,300円)。ヤギの赤身はねっとり、皮付きはコリコリの歯応え。臭みはほとんどない

同店が位置する竜宮通りは、レトロな風情が残る一角。この場所で約50年営業を続けるこちらでは、新鮮で臭みのないヤギ料理とサービス精神旺盛な店主の人柄が光っている。店内にお邪魔するとスナック風の雰囲気に驚くが、テーブル席や座敷席もあるので1人でも大人数でも利用しやすい。しかし地元客や旅行客がこぞって目指すのは、わずか8席のカウンター席。ここに座れば予期せぬ出会いが待っているのだ。

カウンター席が空いていたら滑り込むのが吉!

取材時には島豆腐の耳をサービスでいただいた!

「お客さん、どこから来たの? ヤギ肉は食べたことある? ちょっとクセがあるけど、栄養たっぷりでおいしいよー」などと話しながら、温かく迎えてくれるのは店主母娘。南国らしい陽気な人柄で多くの客を引きつけ、隣り合った見知らぬ者同士を取り持ってくれる。また、島豆腐に漬物、お菓子……と、お店のご厚意で続々とサービスの品が登場するのも「さかえ」流。旅行の醍醐味(だいごみ)である"ふれあい"を体現したような、人情味あふれる空気感が魅力だ。

●infomation
山羊料理さかえ
沖縄県那覇市牧志3-12-20

南国ならではの食材を使い、調理法・味付けにこだわった沖縄料理の数々。どれも食べやすいものが多いので、知らない食材でもぜひチャレンジしてみてほしい。また、料理だけでなく、店主やスタッフの温かな心遣いも名店の隠し味。ほっとする空間で格別の沖縄料理を召し上がれ!

※記事中の価格・情報は2015年5月時点のもの。価格は全て税込

著者プロフィール:阿久津 彩子(あくつ あやこ)

東京都出身のフリーライター。大手商社勤務を経て独立。2011年より沖縄へ移住し、WORD WORKS OKINAWAを立ち上げる。ビジネス系ライティングから沖縄観光情報、葬儀・仏壇まで、幅広く執筆・撮影。沖縄・国際通りの隠れ家喫茶「路の上のカフェ日日」のオーナーでもある。