回復基調のヨーロッパREITに注目する理由

人気の毎月分配型投信の多くが、投資対象としていることでお馴染みとなったのが、グローバルREIT。純資産残高がランキング上位のいわゆる1兆円ファンドと呼ばれる「新光US-REITオープン」「ラサール・グローバルREIT」「フィデリティ・USリート」などがREITファンドの代表格だ。従来投資対象は、グローバルREITの中でも、アメリカ中心だったが、ここに来て注目されているのがヨーロッパREITだ。

というのも、REITは低金利下でパフォーマンスが上がるという特徴がある。リーマンショック以降、金融緩和がまずアメリカを中心に始まり、その後日本にその動きが波及したため、日米とも毎年10~20%のパフォーマンスをあげてきた。それに対し、今まで見劣りしていたのがヨーロッパREIT。というのも、先行き不透明だったヨーロッパ経済が、ECB(欧州中央銀行)の金融緩和導入により、金利が下落傾向になり、ここにきて回復の道筋がついたと判断されてきたからなのだ。

今後のヨーロッパの不動産市場回復に期待

実際、ヨーロッパREITのパフォーマンスは、2015年1-3月期で20%以上上昇しており、米国4.7%、日本マイナス1%と比べると、かなり高いパフォーマンスになっている。

今、ヨーロッパREIT市場が熱い理由はなんだろうか? 日本の場合、バブルがはじけて不動産価格が大幅に下がった2000年代前半に、その環境をREITが利用して、不動産市場回復に貢献。自らの市場も活性化したという経緯がある。

ヨーロッパも、たとえば、スペインやアイルランドは、不動産バブルが崩壊。アイルランドでは、過去4-5年で土地の価格が約50%下落した。そうした状況の今、ヨーロッパでもREITが注目され、不動産の再開発や復活に一役買ってほしいと貢献が期待されているのだ。ヨーロッパREIT市場自体、フランスが2003年、ドイツ・イギリスが2007年、イタリアが2008年、スペインが2009年と、まさにREIT市場ができあがったばかり。市場としては、遅れてきた市場ながら、これからの成長が大きく期待できるというわけなのだ。

またヨーロッパREITは、配当利回りでみても、世界的にみて非常に高い水準にあるのも注目点。日本の平均利回りが3%前後、アメリカが3.5%前後なのに比べると、イギリスを除くヨーロッパは5%前後の水準にある。

ヨーロッパREIT市場を対象とする投資信託も続々登場

こうしたなか、ヨーロッパREIT市場を対象とする投資信託も昨年来、続々と設定されている。比較的早く設定されたのが、2014年5月30日設定の「インデックスファンド欧州リート(毎月分配)」(日興アセットマネジメント)。インデックスファンドだが、直近6カ月の騰落率は18.18%となっている。2014年6月30日設定の「NN欧州リート・ファンド(毎月決算/為替ヘッジ無)『愛称:アビーロード』」(NNインベストメント・パートナーズ(旧アイエヌジー投信))は、銘柄をリサーチして選ぶアクティブ型で、直近6カ月の騰落率は19.96%。

その後も、2014年10月24日に「ドイチェ・欧州リートファンド(毎月分配)B(円為替ヘッジ無)」(ドイチェ・アセットマネジメント)、2014年11月18日に、「欧州REIT・リサーチ・オープン(毎月決算型)(三井住友トラスト・アセットマネジメント)など、続々と新規設定がされている。

足元、日経平均株価は2万円を超え、日米ともまだまだ強気の相場予測も報じられているが、遅れてきた新興市場であり、成長市場であるヨーロッパREIT市場が今、注目だ。

<著者プロフィール>

酒井 富士子

経済ジャーナリスト。(株)回遊舎代表取締役。上智大学卒。日経ホーム出版社入社。 『日経ウーマン』『日経マネー』副編集長歴任後、リクルート入社。『あるじゃん』『赤すぐ』(赤ちゃんのためにすぐ使う本)副編集長を経て、2003年から経済ジャーナリストとして金融を中心に活動。近著に『0円からはじめるつもり貯金』『20代からはじめるお金をふやす100の常識』『職業訓練校 3倍まる得スキルアップ術』『ハローワーク 3倍まる得活用術』『J-REIT金メダル投資術』(秀和システム)など。