中古住宅リノベーションブームで、安い中古物件を購入して自分好みの部屋に作り変えようという動きがでています。この流れに乗って、住宅金融支援機構が「フラット35(リフォーム一体型)」の取り扱いを開始しました。中古住宅を購入する際にリフォーム費用も上乗せして借りられるというもの。このローンのメリット、デメリットを考えてみましょう。

中古住宅の購入資金+リフォーム費用をまとめて

今回、住宅金融支援機構が取り扱いを開始した「フラット35(リフォーム一体型)」は、中古住宅の購入資金とリフォーム工事の資金を1つの「フラット35」でまとめて借り入れができるというもの。リフォーム工事の内容は限定されておらず、太陽光発電パネルの設置、水回りの取り換え、壁や天井、床の張り替えなど、さまざまなリフォーム工事に対応できるのが特徴です。

これまで、中古住宅を購入して、リフォームしようとすると、住宅ローンとは別にリフォーム用のローンを借り入れるか、リフォーム分は自己資金で賄うのが一般的でした。住宅金融支援機構でも以前からリフォーム融資はありましたが、高齢者向けのバリアフリー工事や耐震改修工事など限られた工事にしか使えませんでした。また、住宅ローンとは別にリフォームローンを借りることはできますが、金利や返済期間など条件が、やや厳しくなるケースがほとんどです。

住宅ローンもリフォームローンも毎月の返済をまとめてできれば、家計管理もラクになりますし、ローン自体の管理もしやすくなるので、今回のこのローンは、利用者にとって利便性の高いローンと言えるでしょう。さらに、築年数が古い住宅の場合、そもそも「フラット35」を利用できない(フラット35の技術基準を満たしていない)ことがありましたが、リフォーム工事によって技術基準をクリアできれば、フラット35を利用できることが最大のメリットでしょう。

フラット35(リフォーム一体型)の主な条件は、以下のとおりです。

  • 借入対象となる住宅:中古住宅購入価額とリフォーム工事費の合計額が1億円以下

  • 借入可能額:100万円以上8000万円以下

  • 借入金利:全期間固定金利、借入期間・融資率によって金利が異なる

  • その他:リフォーム工事費の金額が確認できる資料(工事請負契約書など)

これ以外は、通常のフラット35の借入条件と同じです。

利用するなら、事前準備をしっかり行う必要がある

手続きに関しては、通常の中古住宅購入の場合よりも、事前の準備が重要になります。一般的な手続きの流れは以下のようになります。

借入申し込み・審査結果のお知らせ

→事前確認

→既存住宅売買瑕疵保険の付保(※3)

→中古住宅の代金決済←つなぎ融資実行(※2)

→リフォーム工事計画の確認(※1)

→リフォーム工事

→工事後に適合証明検査

→リフォーム工事の代金決済←つなぎ融資の返済

→入居

ここで重要なのが、中古住宅を売買する時点で、リフォーム工事の内容を決め、見積もりを取っておく必要があること(※1)。通常は、中古住宅の引き渡しが終わってから、実際のリフォーム工事内容の詳細を決めるわけですが、事前に工事内容を決めないといけないので、複雑なリフォームはマンションの構造によっては難しいケースもでてくるでしょう。

また、中古住宅の売買のときは、金融機関から「つなぎ融資」を利用し、リフォーム工事終了後に、つなぎ融資を返済するとともに、フラット35で一括して資金融資を受ける形になる点も注意です(※2)。つなぎ融資の期間が長ければ、その分の金利が発生するので、できるだけ短期間で売買からリフォーム工事が終了するように、スケジュールを組まなければなりません。

既存住宅売買瑕疵保険(※3)については、引き渡し後に、建物に瑕疵が見つかった場合、その補修費用をまかなうことができる保険ですが、10万円程度の費用がかかります。

フラット35に適合するかどうかを事前にチェックしたり、工事後もチェックが入るので、その分、手間と言えますが、逆にきちんと検査を受けられることで、安心感を得ることにもつながります。

一番大事な、資金計画と資産価値

フラット35(リフォーム一体型)を利用する際に、実は、もっとも気を付けたいのが資金計画です。借入可能額は8000万円が上限ですが、年間合計返済額は年収の35%以下(年収400万円以上の場合)という条件があるので、中古住宅価格とリフォーム工事費用の合計を意識した物件選びが重要になってきます。現在は住宅ローンが低金利のため、返済額が低く抑えられ、多くの資金を借りられると錯覚しがちですが、自分の返済能力をしっかりと理解した、資金計画が必要です。

万一、将来、売却することになったときの査定額にも注意が必要です。たいていの場合、リフォームしたことはあまり査定で評価されず、物件そのものの価値や周辺相場、取引事例で査定されます。リフォームに多額の資金をかけても、その分が売却のときに考慮されなければ、場合によっては、ローンが残るということも考えられます。ローンに頼った資金計画は非常にリスクが高いといえるでしょう。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

伊藤加奈子

マネーエディター&ライター。法政大学卒。1987年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。不動産・住宅系雑誌の編集を経て、マネー誌『あるじゃん』副編集長、『あるじゃんMOOK』編集長を歴任。2003年独立後、ライフスタイル誌の創刊、マネー誌の編集アドバイザーとして活動。2013年沖縄移住を機にWEBメディアを中心にマネー記事の執筆活動をメインに行う。2級FP技能士。