スカイマーク再建が5月29日の東京地裁への再建計画提出期限に向け、大詰めを迎えている。その前に、再建の帰趨を左右する課題を整理してみたい。

5月29日までの再建計画提出で、今後のスカイマークの行く末が示される

搭乗率80%超でも難あり

今回の再建プロセスにおいては、既報の通りANAホールディングス(以下、ANA)が事業支援の中心母体となる。収入面ではコードシェア(固定買い取り)による下支え、コスト面ではANAの調達力やスケールメリットを活用した燃料費・整備費の削減などで事業改善策を実行し、早い内に事業を安定軌道に乗せられるのでは、というのが大方の見立てだ。もともとスカイマークの経営悪化を招いた最大の原因はA330の導入にあったと思われており、現在はその運航を全て取りやめている。

羽田空港の発着枠拡大が難しい環境下、スカイマークがB737からA330へと機材の大型化を図り、事業拡大を狙うという戦略自体は理解できた。実際ここ数年、JALとANAの大手2社が過敏な運賃競争でスカイマークに対抗して運賃を下げるよりも、全体的な収益ラインを確保できる運賃水準を重視した戦略をとっていた。その結果、スカイマークの搭乗率は上がり、JAL・ANAの収益も向上するなど、スカイマークもJAL・ANAもメリットを得ていたというのが国内幹線間競争の実態だった。

JAL・ANAの大手2社との差別化がスカイマークの活路だった

スカイマークの搭乗率が80%超の水準に高止まりしていたものの、JAL・ANAの判断としては「これ以上旅客を奪われるとしてもキャパシティーの限界がある。ならば全体の運賃水準を下げて対抗するより、高めの運賃を維持した方が総収入額は上がる」だったわけである。スカイマークにすれば当面の経営はいいのだが、将来の発展拡大余地が少ないという問題があった。

これを打開するのがA330だったわけで、JAL・ANAにすればスカイマークの機材大型化は「需給バランスが崩れ、市場が荒れる」との懸念からかなり警戒していただろう。しかし、この勝負をかけたA330が失敗した原因は「機材が大きすぎた」「プレミアム仕様で勝負しようとした」ことだった。

JAL「クラスJ」を読み違えたA330のプレエコ

国内線の主戦場である羽田~福岡/札幌線は世界で1、2位を争う多便数が運航する路線だが、スカイマークの顧客層に対していきなりB737の2倍の大きさのA330を持ってくるのは無謀だった。加えて全席プレミアムエコノミーにしたことで、満席でも採算を取るのが難しくなってしまった。

スカイマークのプレミアムエコノミーにはシートピッチが38インチ(約96.5cm)の「グリーンシート」を配置していた

このプレミアムエコノミーは、プラス1,000円で広い座席に座れるJALの「クラスJ」がいつも満席であることに目をつけたのだろう。しかし、クラスJはその座席での採算よりも、ターゲット層であるビジネスマンを自社に誘引し顧客化することを目的としており、もともと収益性には疑問符が付けられていたものだ。

事業規模は現状を踏襲か

このように、スカイマークが大きなスペースを割いたプレミアムエコノミーを普通席と同額で売ったのでは赤字の垂れ流しになることは明白だった。破綻後直ちにA330の運航を停止してB737に再度機種統一し、採算性の悪い地方路線を整理したのは当然の措置と言える。

この結果、1日あたりの運航便数は152便から126便へと約20%減少し、さらに冬ダイヤからは米子・仙台からの撤退、茨城での減便が示されている。次に発表される再建計画ではひとまず現状程度の事業規模を維持し、事業の収益性を確保することに最大の眼目が置かれることになるだろう。