俳優の阿部サダヲが2日、大阪府摂津市の阪急電鉄 正雀車庫で行われた主演ドラマ『「経世済世の男」小林一三~夢とそろばん』(NHK総合 9月5日、12日 21:00~21:58)のロケ収録に参加し、作品にかける意気込みなどを語った。

9月放送予定のNHKドラマ「『経世済世の男』小林一三~夢とそろばん」に主演する阿部サダヲ

同作品は、阪急電鉄や阪急百貨店、宝塚歌劇団を創設し、現代にも通じるビジネスモデルを作り上げた実業家・小林一三氏の波乱万丈の生涯を描くドラマ。小説家志望の落ちこぼれ銀行員だった一三(阿部)が、ビジネスと人生の師に出会ったことから事業のおもしろさに目覚め、ユニークな手法で弱小電鉄会社を大企業へと成長させていく。

この日は、阪急電鉄の前身・箕面有馬電気軌道(箕有電鉄)の梅田駅で、一三が妻のコウ(瀧本美織)、一三をビジネスの世界へと導いた銀行員時代の上司・岩下清周(奥田瑛二)らと開業の瞬間を待つシーンを収録。当時の梅田駅のホームをセットで再現し、大正期に実際に運行していた木造車両を使用して行われたロケでは、車掌の制服に身を包んだ阿部が「出発進行!」と威勢よく発車の合図を送る場面も。阿部は「言ってみて…気持ちよかったですね。普段、『出発進行!』ってそんなに言わないですからね(笑)」と感想を語って笑わせながらも、箕有電鉄の開業をきっかけに実業家として開花していく小林氏に思いを馳せ、「小林一三という人がこれから生まれていく大事な場面でもあるので、気持ちよく演じられました」と笑顔を見せた。

小林氏は、沿線の宅地開発や女子だけのオペラ劇団「宝塚少女歌劇団」の創設、百貨店の開業など画期的なアイデアで電鉄会社を中心とした一大企業グループを創造した関西実業界の巨人だが、阿部は「やってることはものすごい人なんですが、銀行員のころは定時になるとすぐ帰っちゃうようなダメ社員だったり、そういうダメなところも出てくるのがドラマとしておもしろい」と見どころを。「僕も役者になる前に会社に就職していましたが、ダメなサラリーマンでした。ノルマは一回も達成したことないし(笑)。でも、役者を始めてからは悩まずにトントンときてる。小林さんにも、どういうふうになっていいかわからない時期があって、やることを思い描けるようになるまでに時間がかかってる。もともと小説を書いていて、物語を作ることが好きな人だったので、(さまざまな事業を)組み立てていくことも好きだったのではないかなと。だから、天職だったんじゃないかと思います」とドラマで描かれる小林氏の人間くさい一面に自身を重ねている様子だった。

「そういう意味では、ただの偉人伝じゃない、普通の人が見ても希望が沸くドラマ」と語った阿部は「ちょっとシュールなお笑いなんかも入ってますし、とても見やすいドラマになっていると思います」と作品をPRしていた。