ボーイングは10月9日、北東アジア(日本、韓国、台湾)における最新民間航空機市場予測に関する説明会を実施。2014年から2033年までの20年間の北東アジアにおける見通しと日本市場への狙いを、同社の民間航空機部門マーケティング担当バイス・プレジデントのランディ ティンゼス氏が発表した。

ボーイングの全プロダクト・サービスのマーケティング活動を統括しているランディ ティンゼス氏が、今後20年の最新民間航空機市場を予測。この予測に則って、ボーイングは製造計画をしている

今後20年間の新造機需要は1,340機

ティンゼス氏によると、北東アジアでの新造民間航空機需要は、機数ベースで1,340機、金額ベースでは2,800億ドルという。同地域においては、今後20年間で旅行者数が年率2.7%のペースで増加が見込まれており、それに応じて運航機数も増加すると予測している。

2033年までの20年間でデリバリーが見込まれる1,340機の内訳としては、560機(42%)が737やエアバスのA320などの単通路機、660機(49%)が777・787やエアバスのA350などの双通路型機、70機(5%)が747やエアバスのA380などの大型機、そして、50機(4%)が三菱航空機が現在開発中のMRJのように、地方の都市間を定期的に結ぶリージョナル機と予測。

今後20年間に北東アジアにデリバリーされる機体は、その36%となる480機が新規に追加導入され、64%の860機が代替機であると試算している。これにより、2033年時の運航機数は継続して運用される100機と合わせて、現行の960機から1,440機に増加する見通しとなっている。

なお、リージョナル市場に対して市場の大きさに限りがあると同社は見ており、既に多くの企業が供給している中に同社が新規参入する可能性は低いという。その逆である、リージョナル市場の企業が単通路機などの市場に参入することは、今後十分に想定できると見ている。

機材の大型化より増便・新規路線

世界的な市場を見てみると、民間航空機市場は過去5年、連続して5%の成長を続けており、今後も継続した成長が見込まれているとティンゼス氏は言う。民間航空機市場における伸展はGDP成長率と比例しており、特に発展途上国や新興国が今後も成長を支えていくことは確実である。

同社の見解として、増加傾向にある旅行者数に対して各航空会社の動きは機体の大型化よりも、「運賃の安さ」「便数の多さ」「直行便の利用」を求める旅行者のニーズに応えた増便や路線の拡大であるという。

その点において、787はパーフェクトだとティンゼス氏は語る。実際、9月19日の時点で、787-8は44社から481機、787-9は27社から441機、現在開発中の787-10は6社から132機と、合計59社から1,054機を受注しており、787の約20%が新規路線に投入されている。

ANAは8月4日、787-9で世界初の旅客フライトを実施した。手前が787-9、奥が787-8

対エアバスの課題は供給力

しかしJALは2013年10月、中長距離路線用の更新機材として787などの対抗機材に当たるエアバスのA350導入を決定し、エアバスの旅客機を初めて発注した(2004年4月に統合した日本エアシステムの機材を除く)。同機は2019年運航開始を目途に準備し、6年程度で更新を進めていく予定となっている。

また、今後も拡大が見込まれるLCC市場では、737とエアバスのA320が対抗機材と言えるが、日本市場においてはA320の方がシェア争いを優位に進めている。

こうした状況に対し、「JALの期待に応えられなかったことに我々は大いに失望した。しかし、777に関しては重要な供給を果たしていると認識しており、また、787に関しても製造体制を整えることで引き続き市場を拡大していきたい」とティンゼス氏はコメントしている。

エアバスはボーイング社と比べると、コスト面と供給力という点で戦略を進めているとティンゼス氏は見ているが、ボーイングは機能面の追求とともに供給力を高めることで、拡大する民間航空機需要に応えていくという。

10月2日には737に関して、現在月産42機のペースを2017年には47機に、2018年には52機にまで増加することを発表。この決定は市場の需要に応えるもので、増産が開始されると737の年間製造機数は620機を超え、プログラム史上最多となる。

次世代3機種が市場を動かす

ここで一度、ボーイングが2033年までに進めている開発プランを整理してみよう。現在同社は、機材の大きい順に「747-8」「777-300ER」「777-200ER」「787-9」「787-8」「767-300ER」「737-900ER」「737-800」「737-700」などを供給しているが、今後は「747-8」「777-9X」「777-8X」「787-10」「787-9」「787-8」「737 MAX9」「737 MAX8」「737 MAX7」などを展開していく。

ボーイングの現行モデルと2033年までに進めている開発プランの一例

現行モデルより約14%燃料効率を高めた737 MAXに関しては、737 MAX8ではエアバスのA320neoより2.2m長く、12人多い162人を乗せることができる。スケジュールとしては、2015年に組み立てられ2016年に初フライト、2017年に初号機が供給される予定となっている。

737 MAX。初号機は2017年に供給される

この7月に初号機が引き渡された787-9の後には、-9よりもさらに6m長く、約320人の乗客を乗せることができる787-10が続く。予定通り2018年に就航を開始できれば、この時点でもっとも燃料効率の高い機材となる。

787-9。787-10はさらに6m、胴体が長くなる

8月31日の時点で6社から300機の受注を獲得している777Xは、エアバスのA350-1000と同規格でありながら、乗客ひとり当たりの燃料効率、運航コスト、航続距離で高い機能性を有している。今後のスケジュールとしては、2019年に飛行テストを経て、2020年に777-9Xの初号機が供給、その数年後に777-8Xが供給される見通しとなっている。

777X。2020年には777-8Xに先行して777-9Xが供給される予定

世界有数の経済紙である『Forbes』は9月2日に、「ボーイングにおける民間航空機の製造構想は、エアバスよりも多角的で優位である」というコメントしている。その言葉は正しく見通した見解かどうか、今後の展開に注目したい。