TBSラジオ「文化系トークラジオLife」(隔月偶数月の第4日曜日 深夜1時~4時放送)の出演者による自主トークイベント、西森路代プロデュース「ドラマヒロイン進化論~東京ラブストーリー・赤名リカから失恋ショコラティエ・高橋紗絵子まで」がこのほど、紀伊國屋書店新宿本店で開催された。その模様をお届けする。

西森路代プロデュース「ドラマヒロイン進化論~東京ラブストーリー・赤名リカから失恋ショコラティエ・高橋紗絵子まで」

イベントは、ライターの西森路代さんがプロデュース。ゲストに、婚活ブームの生みの親である白河桃子さん、マンガエッセイストの川原和子さん、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表の清田隆之さん、文化系トークラジオLifeのサブパーソナリティである斎藤哲也さんが迎えられた。

3つのドラマに見るヒロインの変遷

『東京ラブストーリー』(1991年放送)
永尾完治(織田裕二)を「カンチ」と呼ぶ同僚の赤名リカ(鈴木保奈美)は、自由気ままに生き、まっすぐに恋をする。リカから思いを寄せられ、最初は戸惑っていたカンチもリカに惹かれるが、同郷の同級生である三上健一(江口洋介)と関口さとみ(有森也実)との三角関係が絡み合い、恋は複雑に展開していく。

『やまとなでしこ』(2000年放送)
客室乗務員の神野桜子(松嶋菜々子)は、気配り上手で類まれな美貌を持つが、貧しい漁師の家に生まれた過去から、玉の輿に乗るべく、合コンに情熱を燃やしていた。大病院の御曹司を射止めても、さらなる標的を狙う桜子の前に現れたのは、超金持ちの医者・中原欧介(堤真一)。しかし本当の彼は、小さな魚屋で恋愛に臆病だった。 心よりお金が大事と公言する一方で亡き母が教えてくれたお金では買えないたった一つのものが頭を離れない桜子が本当の恋を見つけるまでを描く。

『失恋ショコラティエ』(2014年放送)
製菓学校に通う小動爽太(松本潤)は、高校時代に一目ぼれした憧れの先輩の高橋紗絵子(石原さとみ)とさまざまな努力の末、クリスマスの直前から付き合い始めた。バレンタイン前日に爽太はチョコレートを渡そうとするが、紗絵子に受け取りを拒否され、「付き合っていたつもりはない」とまで言われてしまう。それでも紗絵子が好きな爽太は、チョコレートで彼女を振り向かせようと一念発起。単身フランスに渡り、修行を積んで一流のショコラティエになる。

"恋愛に積極的だけど、家庭に入るにはちょっと……だった赤名リカが共感されていた1991年と、恋愛の名手なのに家庭に早々に入った紗絵子を興味深く見守る2014年。このヒロインの変化を見れば、女性の変化も見えるはず!? 仕事、結婚、友情、モテなどをテーマにドラマヒロインの変遷を見ていきます。"(イベント告知文より)

『東京ラブストーリー』のリカが支持されていた理由

西森さん「『東京ラブストーリー』が1991年放送で、『失恋ショコラティエ』が2014年放送――この23年間のあいだに仕事、恋愛、結婚がどう変化したのか見えそうな2作品を見比べてみようと思います。

『東京ラブストーリー』の赤名リカは仕事に生きる人で、そのライバルに関口さとみという対照的な人がいるんですけど、それは今の『失恋ショコラティエ』の高橋紗絵子とかぶるようなキャラクターです。"家庭に入るのが幸せ"という登場人物です。1991年には脇役だった人が2014年は主役に変わっている、女性が昔は憧れなかった人が今は憧れる人になっているというのはおもしろいのではないかと思いました。

川原さん「実は今回ドラマを初めて見たのですが、リカが思ってたイメージとかなり違っていました。奔放で正直で当時の女性たちにすごく支持されていたって聞いていたんです。今見ると、いきなり初対面で新入社員の男子に下の名前で呼びかけるとか、距離感が独特。勝手にカンチの家に友達二人連れてくるとか、勝手に電話とって、カンチの実家のお母さんと仲良くなっちゃってカンチがすごく怒ったりするんですが、そりゃ怒るだろうって(笑) 今の感覚だと、少し言葉は悪いかもしれませんがハイテンションなフシギちゃん感がある。当時ってそういうイメージはなかったですよね?」

白河さん「まだ当時は仕事と恋愛・結婚が二項対立だったので、仕事バリバリしているヒロインが、まずかっこいいみたいなところがあったんだと思います。

1991年だと男女雇用機会均等法から5年くらいたっているのでバリバリのキャリアウーマンもちょっと出始めてたんですが、大半の人は普通のOLで、さとみみたいに肩パッドが入ったスーツを着て会社の中で婚活に励んでいた。当時の結婚ってほとんど社内結婚なんですよ。一般事務職の採用っていうのは社内の結婚相手を採用するっていうこと。

私も新卒時は大手商社でまさにああいうOLだったんですね。もちろん肩パッド入ってました(笑)。その頃は女性だけで200人同期入社がいたんですけれど、毎年200人辞めるんです。なぜなら結婚したら寿退社ということもあって、事務職は3年で肩たたきだったんです。それは不文律で決まっていた。

さとみみたいな女の子たちが普通で、真逆のリカは女の子たちの言いたいことをすぱっと言ってくれる、好き放題やっている、というところが支持されたのでは。男の子って今も昔もあまり変わっていない。でもその人たちに気に入ってもらって結婚しないと自分の生活が立ち行かない時代だったので、逆に男を振り回し系のヒロインは、女の子たちをスカッとさせたのかな。ですから、最後にカンチがさとみを選んだことに関しては、けっこうブーイングだったんです」