登山を楽しむために絶対知っておきたいこと

警察庁生活安全局地域課はこのほど、平成25年中における山岳遭難の概況を発表した。

件数、遭難者、死者・行方不明者全て増加

平成25年中の山岳遭難は発生件数が2,172件で、前年より184件増となっている。また、遭難者は2,713人(前年対比+248人)、うち死者・行方不明者は320人(前年対比+36人)、負傷者1,003人(前年対比+76人)、無事救助は1,390人 (前年対比+136人)と、発生件数、遭難者、死者・行方不明者が、統計の残る昭和36年以降で最も高い数値となった。

また、過去10年間の山岳遭難発生状況をみると増加傾向にあり、平成16年と比較すると、発生件数+851件(+64.4%)、遭難者+1,104人(+68.6%)、死者・行方不明者+53人(+19.9%)となっている。

過去10年間の山岳遭難発生状況

山岳遭難の発生件数を都道府県別にみると、長野県が一番多くて300件。以下に、静岡県(139件)、北海道(132件)が続いた。

死者・行方不明者では91.6%が40歳以上

平成25年中の全遭難者2,713人について目的別にみると、登山(ハイキング、スキー、登山、沢登り、岩登りを含む)が71.8%と最も多く、次いで山菜・キノコ採りが13.3%を占めている。また、態様別にみると、道迷いが41.8%と最も多く、次いで滑落が17.0%、転倒が14.5%を占めている。

年齢を見ると、40歳以上の遭難者が1,996人と全遭難者の73.6%を占めており、このうち、60歳以上が1,258人と全遭難者の46.4%となっている。また、40歳以上の死者・行方不明者が293人と全死者・行方不明者の91.6%で、このうち、60歳以上が204人と全死者・行方不明者の63.8%を占めている。

単独登山における死者・行方不明者は164人で、全単独遭難者の19.2%を占めており、複数(2人以上)登山における遭難者のうち死者・行方不明者が占める割合(8.4%)と比較すると約2.3倍となっている。

全発生件数2,172件の71.3%が遭難現場から通信手段(携帯電話、無線(アマチュア無線を含む))を使用し、救助を要請している。今後も、携帯電話による救助要請の増加が予想されるが、携帯電話は通話エリア内での万が一の通話手段として有効であるものの、多くの山岳では通話エリアが限られることやバッテリーの残量に注意が必要である。

都道府県別山岳遭難発生状況

山岳遭難の未然防止対策5つ

山岳遭難の多くは、天候に関する不適切な判断や不十分な装備で体力的に無理な計画を立てるなど、知識・経験・体力の不足等が原因で発生している。警察庁生活安全局地域課は遭難を未然に防ぐため、登山に当たって以下のような注意をうながしている。

登山計画の作成、提出
気象条件、体力、体調、登山の経験等に見合った山を選択し、登山コース、日程、十分な装備、食料等に配意して、余裕のある安全な登山計画を立てる。単独登山はできるだけ避け、信頼できるリーダーを中心とした複数人による登山に努める。また、作成した登山計画書は、家庭や職場、登山口の登山届ポストなどに提出しておく。

危険箇所の把握
計画を立てる時、滑落等の危険箇所を事前によく調べる。

的確な状況判断
視界不良・体調不良時等には、滑落や道迷い等のおそれがあることから、状況を的確に判断して早めに登山を中止するよう努める。

滑落・転落防止
滑りにくい登山靴、ストック等の装備を有効に使用するとともに、気を緩めることなく常に慎重な行動を心掛ける。

道迷い防止
地図、コンパス等を有効に活用して、常に、自分の位置を確認するよう心掛ける。