――戦闘用アンドロイドとして生まれたマリですが、やがて椿谷大臣の秘書的な役割を務めることになりました。ここでは、アンドロイドらしい無表情でクールなたたずまいが印象に残りました。

いつも、お芝居をするときは"心"でやっていたところがありましたが、今回の映画では心を無くした芝居となります。何があっても感情を示さない、感情を閉ざす芝居をするのは難しかったです。でも、感情を持って常に心が揺らいでいるジローと比較するためにも、マリには一切の感情を持ち合わせない演技が要求されました。

――マリの人物像について、下山監督から何か言われたことはありますか。

今回の映画では、お芝居の部分より先にアクションパートを撮影したんです。そこでマリのアクションをしっかりとやった後に、秘書モードでの演技に入ったのですが、そのときはすでに私の中でマリというキャラクターをつかんでいました。下山監督も私の演技を見て「そうなんだよ、マリ、そうなんだよ」と言ってくださり、監督の持つイメージどおりのマリを演じることができたなと思ったんです。それも、アクションを先に撮影してくださったおかげなんですね。言葉ではなく、マリを身体で覚えたという感じです。

――マリはジローを攻撃する際、片腕を銃に変型させますね。まさに特撮ヒーローものならではのシーンだと思うのですが、こういう特殊なギミックについてはいかがでしょうか。

腕が銃になってドーンと撃ったり、入江くんのジローではなく変身した後のキカイダーと戦ったとき、おお、これはホントに特撮ものだなあ、ヒーローと戦ってるよ……なんて、感慨のようなものを感じましたね。ブルーバックを使った合成シーンなどもたくさん撮りましたが、特に背景がなにもないスタジオであっても、マリはアンドロイドだ、場所なんてどこだって気にしないんだ、と思っていました。ですから、合成の入るシーンでも関係なく、気持ちを込めてお芝居をしています。

――キカイダーと戦ってみたご感想はどうですか?

キカイダーの身体は硬かったですよ(笑)。ですから攻撃する分には、思いっきり殴っても向こうは平気ですから、やりやすかったです。でも、彼の腕には鋭いツメがついていますから、ちょっとコワかったかな。

――椿谷の秘書を務めるようになったマリは、創造主であるギルバート神崎に対しても冷ややかな物言いをしています。あのような場面はどういうお気持ちで演じられているのですか。

マリは心を持っていないアンドロイドですが、常に自分が"得"をする側につこうとするんです。今は神崎より椿谷のほうについたほうが得だ、と考えている。これは台本にははっきりと書いていないんですけれど、監督からも言われたことですし、私も同じように考えて演技をしました。マリは損得のみで動くアンドロイドなんです。