最近では癒やしや勉強の場、人々の集いの場として広く一般に開かれたお寺が増えている。坐禅や写経はもちろん、ヨガ教室や映画鑑賞会、音楽会、美術展、カフェ、フリーマーケットなど様々なイベントが開催されてにぎわいを見せている。あなたもきっと行ってみたくなる!? そんな首都圏のユニークお寺を紹介しよう。

爽やかな風の吹き抜ける光明寺・神谷町オープンテラス

ビジネスマンも憩うオープンテラスで無料「傾聴」

地下鉄日比谷線・神谷町駅から徒歩1分、東京タワーを間近に望む都心の一角に立地する「梅上山光明寺」。本堂2階への階段を上ると、広いテラスが広がっている。テーブル席やベンチがゆったりと配置され、まるでオープンカフェのごとしである。

この「神谷町オープンテラス」はすっかり地元に定着し、昼休み時間ともなれば、お弁当やお茶を持って訪れてくるサラリーマンや若い男女でにぎわいを見せる。周囲の木々の緑が目にやさしく、吹き抜ける風が心地よい。

「お寺や仏教をもっと身近に感じていただきたいという思いから、2005年よりお寺に縁の深い方のみならず地域の皆様に向けても開放し、憩いの場として親しんでいただいております」(光明寺僧侶で神谷町オープンテラス店長の木原祐健さん)。

神谷町オープンテラスは、平日の朝9時から夕方5時まで無料で利用できるばかりでない。木原さんはこのテラスと本堂を使って、一般の人たちの悩みや思いなどに耳を傾ける「傾聴」を行っている(毎週木曜日限定/要メール予約)。

「ともに喜び、ともに悲しむという仏教の慈悲の心を大切に、お悩みなどもじっくりと聴かせていただき、心やすらぐ時間をお過ごしいただけるように努めております。30~40代の女性の方が多いでしょうか。もちろん無料で、帰りがけにご本尊への感謝の気持ちを込めた焼香と合掌をお願いしております」(木原さん)。

「傾聴」は週に1回、木曜日に行われており、メールでの予約が必要。この他、神谷町オープンテラスでは4月の後半から毎週水・金の2日間、無料の茶菓のもてなしも行っている。こちらもメールでの予約が必要だ。

神谷町オープンテラスの茶菓のおもてなし

禅寺でヨガに励み、書道やお茶を学ぶ

坐禅、写経からヨガ、お茶まで様々な学びができる広尾の香林院

広く一般に開放するばかりでなく、寺院施設を癒やしや自己研鑽、イベントの場として提供しているお寺も多い。例えば臨済宗大徳寺派の「広尾 香林院」。法話や坐禅、写経・写仏はもちろん、ヨガ、書道、お琴、整体、日舞、お茶などの教室も開かれ、まるでカルチャーセンターのごとしである。

「お寺は人の出入りが命です。それが寺の活性化にもつながります」と語るのは、広尾香林院住職の金嶽(かねたけ)宗信さん。金嶽住職は、平日朝7時からと日曜夕方5時から坐禅の会を、毎月15日には法話会を開催し、無料で一般の方を受け入れている。火・金の朝10時からは1回1,000円の写経・写仏の会も催している。

ヨガ、書道、お琴、整体、日舞、お茶の各教室は、外部のインストラクターに貸し出しの形をとっているので有料だが、お寺という日常の喧噪から解き放たれた環境でのレッスンでは、他の施設では味わえない心やすらぐ時間を味わうことができる。

香林院での「寺ヨガ」を主催しているインストラクターの丸茂麿さんは、「禅寺の美しい四季折々の日本庭園を眺めながら、畳とお香のよい香りに包まれて、ゆったりとヨガを体験していただけます。季節によっては、池の蛙の合唱や蝉の鳴き声などが聞こえてきます」と話してくれた。

香林院の書院で開かれている「寺ヨガ」。これ以上ない練習環境である

この他、目黒区の「圓融寺」も意欲的に新しい試みを行っているお寺として有名。「写経と仏典に親しむ会」、「ちょっと座ろう会(朝禅・夜禅)」などに加えて、「禅×YOGA×アーユルヴェーダ」、「圓融寺ライブ」といったイベントが不定期開催され、若者たちの支持を集めている。

国の重要文化財に指定されている圓融寺の釈迦堂。室町時代の建立である

オーシャンビューに癒やされるテンプルステイ

都内ばかりでなく地方にも、様々なユニークイベントを行っているお寺は少なくない。その代表的な存在が千葉県勝浦市の「正榮山妙海寺」。フリーマーケット「寺市」や「寺ヨガ」、映画上映会、勝浦の未来を作っていこうとする人たちの「勝浦ミラクル人会議」、次の世代へ想いを伝えていこうという「想続」など、そのメニューは実に多岐に渡る。

地元の人たちでにぎわう勝浦市妙海寺の「寺市」

「勝浦は小さな港町ですが、いま過疎化に悩んでいます。漁師の跡継ぎも少なく、地域に元気がなくなっている。そんな中、私たちの小さな寺が地域の人たちが支え合う核となれればと考えまして、人の集まれるいろいろな行事を行っています」(妙海寺住職の佐々木教道さん)。

妙海寺のイベントの多くは地域住民のためのものだが、東京など首都圏に暮らす人たちに向けて開かれたイベントもある。お寺宿泊体験「テンプルステイ」だ。妙海寺からは房総の海を一望にできる。そんなオーシャンビューのお寺に泊まって、仏教法話や瞑想、創作精進料理体験などを通じて心と身体の点検と調律を行う1泊2日のコース。

「日程を終えてお寺を旅立つ時、きっと景色が変わって見えるはずです」と住職の佐々木さん。今年は6月29~30日の2日間で催される予定だそうだ。

海の見えるお寺での2日間。自分自身に向かい合うにはうってつけの環境だ

そのほか、都内近辺でも様々な体験ができるお寺はある。是非一度、チェックしていただきたい。

※記事中の情報・価格は2014年3月取材時のもの