――本作は、ビーチ・ボーイズの「素敵じゃないか」が大きな役割を占めていますよね

三木監督「原作でも『素敵じゃないか』は大事なモチーフになっているのですが、この曲はすごく明るい曲なんですけど、どこか切なさがあると思っていて、実際に歌詞を見たら、やっぱり願望の歌なんですよ。一緒にいられるといいねと言っているのは、今は一緒にいられないということの裏返し。明るい曲なんだけど、切ないというところに、この物語をすごくイメージしやすかった。楽しい中に、終わりが見えている切なさなど、裏返しの切なさが描けたらいいなっていう思いはありました」

――明るさの中に切なさを表現するわけですね

三木監督「結婚までしちゃう二人ですけど、その結婚も何となくオママゴト感がある。でも、そのオママゴト感と『素敵じゃないか』という曲に共通している部分があって。禁じられた遊びじゃないですけど、きっとどこかで予感している危うさがある。終わりを予感させるオママゴト感があるから、明るさの中に切なさが見えるんじゃないかと思います」

――今回、映画の舞台を湘南にした意図をあらためて教えていただけますか?

三木監督「プロデューサーや脚本家から出たアイデアでもあるのですが、僕自身も、"陽だまり"を映像で表現するために、何かビジュアルでキラキラを感じさせる場所がいいなと思っていたんです。特に秋冬の物語なので、秋冬の太陽の光で一番キラキラする場所といえば、海を南に臨む、江の島、湘南が思い浮かびました。江の島はちょっとパワースポット的な場所だし、実際に猫がいっぱいいたりもする(笑)。ファンタジーを語る際、やはり場所の力ってすごく大事なんですよ。場所の力があれば、そこで起こる物語を映像ですごく説明しやすい。もちろんどこの海でもいいわけじゃなく、江の島は、もう島自体がランドマークになっていて、すごく存在感のある場所なので、その力を映像的にも借りたいと思って、舞台を湘南にしました」

――そんな『陽だまりの彼女』がBlu-ray/DVDとなって4月16日に発売されますが、本作をBlu-ray/DVDで観るときに、あらためて注目してポイントはありますか?

三木監督「Blu-ray/DVDは繰り返し観ることができるので、映画館で観るよりもディテールの部分に目が行くと思います。実はこの作品、細かいディテールにすごくこだわっているところがあって、キャラクターたちの衣装やセット、リビングの美術など、意外と隅々まで、美術さんが頑張ってくれています。特にBlu-rayだと、そういったところもクリアに観ることができると思いますので、ぜひそのあたりも注目していただけるとうれしいですね。最初のほうに出てくる広告なんかも、本物として通用するクオリティで仕上げていたりしますから(笑)」

――それでは最後に読者の方へのメッセージをお願いします

三木監督「この物語は、二回、三回と繰り返して観ても楽しめる作品だと思います。特に真緒の謎がわかった上で、あらためてもう一度見直すと、いろいろなところに伏線がはられているのがわかって、また違った楽しみ方もできる映画になっていますので、Blu-rayかDVDで何度も繰り返し楽しんでいただけるとうれしいです」

――ありがとうございました

『陽だまりの彼女』のBlu-ray/DVDは2014年4月16日発売。ビジュアル・コメンタリーや初収録の主題歌ビデオクリップほか豪華特典満載のメモリアル・エディションは、初回限定生産で、Blu-ray版が7,700円(税別)、DVD版が6,800円(税別)となっている(発売元:アスミック・エース / 販売元:東宝)。

(C)2013『陽だまりの彼女』製作委員会