――中学の頃の続きを大人になってからやり直しているような二人ですよね

三木監督「中間をすっ飛ばしているからこそ、色あせない想いのまま、二人の関係性が続いているし、そこを描くのが一番大切なんじゃないかと思って作りましたね」

――その流れを作ることこそが、今回の映画におけるキモになっている気がします

三木監督「プロデューサーや脚本家陣と話していく中で、ファンタジーのリアリティラインに説得力を持たせるため、原作ではほぼほぼ浩介側の主観で描かれているところを、映画化にあたっては、真緒側の視点も描いていこうと。ファンタジー要素が強いのは、特に真緒側なんですね。なので、そこに説得力を持たせるため、夏木マリさんが演じるちょっと謎の女性や、玉山(鉄二)君が演じる新藤といった、原作にはないキャラクターを加えたりしています」

――この作品はとにかく爽やかなラブストーリーという印象があります

三木監督「それは最初からテーマとしてあったかもしれません。いわゆる恋愛の駆け引きだったり、誰かと誰かがくっついたり離れたり、みたいな話ではなくて、変わらない二人の愛情を描くラブストーリーなんですよ。ライバルのような存在を匂わせつつ……みたいなフェイントは少しありますけどね(笑)」

――ラストのほうはやや原作に手を加えた感じになっていますが、そのあたりの意図は?

三木監督「僕の中では新年会で曲を聴いて、身体が反応して、思わず涙する浩介……というところでハッピーエンドだと思っていたんですけど、それだとちょっとビターだなと。なので、後味よく帰っていただくために、ちょっと甘さを付け加えたところもあります。ただ、その先については、皆さんにいろいろと想像していただけるといいかなって思います」

――本作のキャスティングは監督主導ですか?

三木監督「もちろんボクも意見は出させていただいていますが、基本的にはスタッフのみんなで意見を出し合って決めた感じですね」

――主演を松本潤さんにしたのは?

三木監督「これは小川プロデューサーのアイデアですね。松本君は、パブリックイメージだと、ちょっとツンデレでカッコよさ全開みたいな感じじゃないですか。だから、浩介という役に合うのかなって、最初はちょっと思ったんですけど、小川プロデューサーが、犬童監督の『黄色い涙』という作品で、松本君が本当に朴訥とした青年役を演じている姿を見て、こういうキャラクターを見てみたかったということで。一方の(上野)樹里ちゃんが出すほうのお芝居をする女優さんなので、松本君が受けをやるのも面白いなと思ったので、浩介役をお願いしました。パブリックイメージとはちょっと違うキャスティングかもしれませんが、それが逆に新鮮で、この映画が面白くなる要素にもなるのではないかと思いました」

――その狙いがキレイに嵌った感じですね

三木監督「もうバッチリという感じで(笑)。今回、松本君と樹里ちゃんにお願いしてビンゴだったと思います」

――上野樹里さんを真緒役にしたのは?

三木監督「以前から一緒にお仕事をしたいと思っていた女優さんなんですよ。『虹の女神』という映画がすごく好きなんですけど、それを演じていた樹里ちゃんがすごく良かったので、一緒に仕事をしたいと思っていたところ、プロデューサーも、『ジョゼと虎と魚たち』という作品、これも犬童さんですが(笑)、その作品のオーディションのときから良いと思っていたということで。樹里ちゃんが作る空気はとにかく独特で、不思議な空気感のある女優さんだと思っていたので、今回の真緒という、どこか謎を抱えているキャラクターを、説得力を持って演じられる女優さんは、樹里ちゃんしかいないなと」

――そんな二人の作り出す空気感はかなり独特なものだった気がします

三木監督「ラブストーリーは、どうしても二人に委ねるところがすごく大きい。だからそのキャスティングは、一種の賭けになりますね。二人のキャッチボールがお芝居だけじゃない何らかの空気感を醸し出せるかどうかが、物語を豊かにするかしないかを決定付けてしまう。二人一緒の芝居を見るとドキドキするんだけど、それがバチッと合わさったのは、撮影していても快感でした」