99%の精度!?

「新型出生前検査」は確定診断ではないということを忘れずに(写真は本文と関係ありません)

母体の血液を検査することで胎児の染色体異常の有無を調べる「新型出生前検査(無侵襲的出生前遺伝学的検査)」。羊水検査のように流産の危険性がない上、精度の高い検査として最近注目を集めている。しかし一方で、診断結果によって中絶を選択するケースもあることから、命の選別につながるとの懸念の声も上がっている。これに対し、産婦人科医で性科学者の宋美玄医師は次のような見解を語る。

「精度が高い、染色体異常かどうかが99%の確率でわかるなどいわれていますが、これは検出率が高いという意味です(ダウン症の胎児を見逃す確率が低いということ)。一番の問題点は、実はそのうち実際に染色体異常でうまれてくる率(陽性的中率)がそれほど高くないという点です」。

つまり、陽性反応が出たからといって「99%染色体異常」という確定診断ではないということ。知識がないまま検査を受け、陽性と知った結果、羊水検査を受けずに中絶を選択するといったケースだけは絶対に避けなければいけない。そのため新型出生前検査は、日本産科婦人科学会の指針に沿った施設限定で実施され、遺伝カウンセリングも受けて正しい知識を得られるように配慮されている。

しかし、「中国企業が新型出生前検査の売込みをしているといった報道がありました。これには、学会の条件を満たしていない施設での実施、遺伝カウンセリングを軽視するといった内容に問題があります」。

また、「新型出生前検査を『新型出生前診断』としている媒体もありますが、これは診断ではなく検査です。染色体異常の確率が高いサンプルを抽出するスクリーニング検査です」と強調。検討している人は、確定診断ではないということをしっかりと頭に入れておいたほうがいいだろう。

宋美玄(そん みひょん)医師

産婦人科女医・性科学者
1976年兵庫県神戸市生まれ。2001年大阪大学医学部医学科を卒業。同年医師免許取得、大阪大学産婦人科入局。2007年川崎医科大学講師就任、2009年イギリス・ロンドン大学病院の胎児超音波部門に留学。
2010年には日本国内の病院にて産婦人科医として従事する傍ら、「女医が教える本当に気持ちいいセックス」を上梓。50万部突破の大ヒットとなる。 2012年には第一子となる女児を出産。現在、フジテレビ「とくダネ!」火曜日レギュラーコメンテーターとしても出演中。