露店の上は住居になっていたり、古いビルのそばに高層ビルが建っていたりと、市場がある煙廠街の風景そのものも興味深い

旺角(モンコック)エリアと言えば、掘り出しものを探すのが楽しい「女人街」や、幻想的な雰囲気さえ漂う「金魚街」など、ただ街歩きをしているだけでも楽しい街。そんな旺角には、地元の人たちの台所を支える市場もあるのだ。

馴染みの食材も“香港規格”に

女人街(通菜街)のとなりには、衣類や雑貨などの露店が連なる花園街があり、その先で煙廠街という通りにぶつかる。市場はこの煙廠街に設けられており、魚や肉、野菜、果物、乾物などなど、あらゆる「食」がどの店でも隙間なく並べられている。通りを訪れた時間は16時過ぎということもあり、夕飯の食材を求める地元の人たちで道は混雑。そんな客を引き止めようと、あっちからもこっちからも威勢のいい店員の声を聞こえてくる。

商品を見てみると、白菜や人参、オレンジやリンゴなど、特に野菜や果物系は日本でも馴染み深いものを多く見かけた。とはいえ、家庭ではなかなか使い切れなさそうな大きなショウガが、16香港ドル(約210円)というようなお買い得な値段になっているなど、“香港規格”のサイズや価格を見て歩くのも一興だ。

また、香港には果物が好きな人が多いらしく、香港で働くOLなどには、果物を切るためのマイナイフを職場に置いている人もいるという。果物を1個から売ってくれる店もあるので、ホテルで小腹が空いた時のために、ちょっと買ってみるのもいいかもしれない。

根菜らしきものを買われたよう。どうやって料理するのだろうか

果物はオレンジや洋ナシのほか、スターフルーツやドラゴンフルーツなどもある

一方、魚や肉に関しては、「香港らしい」の一言に尽きる。一見しただけではそれが何の魚や肉なのか判断がつかないこともある上に、店頭で解体しながら販売している店もあるので、初めは見慣れない風景にギョッとしてしまうかもしれない。市場を訪れた11月は、ちょうど上海蟹のシーズン。店先いっぱいに蟹を並べた店もあり、マイクを使って呼びかけをしている店員もいた。

魚は生きたままで売っている店もあった

店先で切り分け、そのまま並べて販売する店も

100円以内で食べられる健康系スイーツ

地元の人に市場で食べられるグルメを聞いたところ、豆腐専門店「人和」にある「豆腐花」と「豆漿」がオススメということだった。「人和」の店先では厚揚げやもやしのほかに、豆腐を鉄板いっぱいに敷き詰めて焼く豆腐ステーキ「煎豆腐」(7香港ドル・約90円)の販売もしており、おやつ代わりに買い求めていく人が後を絶たない。

「人和」では「煎豆腐」のテイクアウトも可能

店内には家族連れが多かった

店の奥は飲食スペースになっているのだが、特に席の案内はないので、自分でテーブルと椅子を探して相席をするようになる。「豆腐花」(7香港ドル・約90円)は見たところ杏仁豆腐のようだが、基本ベースは豆腐。地元の方はスイーツ感覚で食べており、甘過ぎずつるっとした喉越しが特徴だ。ただ、7香港ドルのわりに量もあるので、途中で少し味に飽きてしまうかもしれない。そんな時は、テーブルに置かれた砂糖をまぶしてみよう。

左から)「豆漿」と「豆腐花」。2つ頼んでも12香港ドル(約150円)!

もうひとつの「豆漿」(5香港ドル・約60円)は、日本で言う豆乳のこと。印象として、日本の一般的な調整豆乳よりもサラッとした薄味で、「豆腐花」と同様、程よい甘さに仕上げられている。店頭には500ml程度のペットボトルに入れられたものもあり、これを飲みながら市場で買い物をしている人もいた。味わいからすると、この豆乳もおやつ感覚なのかもしれないが、香港で見かける漢方ドリンクよりも、もっと気軽に楽しめる健康系ドリンクとして試してみるのもいいだろう。

特に自分で買い物をしなくても、地元の人がどのようなものを買っているのかを眺めたり、それでどんな料理を作るのか想像したりするだけでも楽しくなってくる。市場自体は10分あれば全て見て回れる程度の大きさなので、旺角観光のついでに是非ちょっと足を伸ばしてみよう。