――話は変わりますが、そもそも『ゴッドタン』という番組に関して、佐久間さんの中ではテレビ東京だからこそ作ることが出来た、みたいな感覚はありますか?

僕はもともと『ASAYAN』が好きで、それでテレビ東京に入ったようなものなんです。でも、あの番組はタカハタ秀太さんという外部の人が作ってたことに入社した後で気づいたんですけどね(笑)。それはさておき、やっぱり時代時代でとんがっている番組を作っているテレビ局、というイメージが僕の中にはあったので、『ゴッドタン』もそうなりえたら嬉しいと思って作ってます。

――では、佐久間さんが感じる「テレビ東京」らしさとは?

制作環境においてはスタッフの人数が少ないということもあって、若手・中堅ひっくるめて仲がいいっていうのはありますね。スタッフの貸し借りもわりとセクショナリズムなくて出来ますし。そういう意味でいうと、同年代同士で番組の話が気軽に出来る風通しの良さはあるかもしれないです。

――佐久間さんが番組づくりにおいて最もこだわる部分は何でしょうか。

ひと言でいえば「その人が他の番組で見せていない"引き出し"を一個、開けられるようにしよう」というのが自分の中のテーマです。劇団ひとりもいろいろな番組に出てますけど、『ゴッドタン』でしか開けられない"引き出し"があると思うし、「芸人マジ歌選手権」でフットボールアワーの後藤(輝基)さんが、あのダサい"引き出し"を開けてくれるのは『ゴッドタン』だけだと思いますし。僕とテレビ東京と仕事をした人が一個、そういう"引き出し"を開けてくれると嬉しいですし、その意味ではテレビ東京のカラーがどうというより、新しい魅力を引き出せる装置になればいいなと。

――その意味では「アドリブ」というものに新しい可能性を感じますか?

小学生の頃からずっと僕、コントが好きだったんです。中学生の時は『夢で逢えたら』が好きで、ダウンタウンさんも大好きですし。でも、テレビ東京のバジェットだと純粋なコント番組ってなかなか難しい部分があって。それは他局もそうだと思うんですけど、NHKさんくらいですよね、今、純粋なコント番組をやれてるのは。ただ、そんな状況の中でも「アドリブ」という要素を入れてドキュメント性を高めたらワクワクして見れるんじゃないかと言う思いがあって。『ゴッドタン』のいくつかのコーナーもやってることはコントなんだけど、そうすることによって今の視聴者もついて来れるようにしてみたりしています。もちろん最初にアドリブありきではなく、根っこにあるのはコントをしっかり作りたいという気持ちです。

――でも、それは同時にかなりタフで苦しい作業では?

確かに、今思うと手間がかかる番組ばかり抱えちゃったな、というのはありますね(笑)。『ゴッドタン』も深夜番組なのに毎回企画が違いますから、そのつど会議が必要ですし、その上『ウレロ☆未確認少女』のような長尺のシチュエーションコメディーを抱えると週に2、3日、脚本会議で徹夜している状態ですから。時々、何でだろうとは思いますけど(笑)、それはきっと10代の頃から自分が「面白い」と思って見てきたものが手間のかかったものばかりだったからだと思います。

――佐久間さんのモノづくりの原点はいったい何でしょうか。

たくさんあります。一番最初に好きになったテレビ番組は『夢で逢えたら』ですし、アニメも好きなので『機動警察パトレイバー』とかも好きですね。トップクリエイターが集まって、ジャンルを横断して面白いものを作っていく姿というのは憧れでした。

――ジャンルの枠を超えてつながりたい、作りたいという気持ちが人一倍強いとか?

というよりも、僕の作る番組は"きっかけ"になって欲しいんです。他のジャンルと絡む時は、そこに本気で侵食したいというより、笑いをきっかけに「この人たちって面白くないですか?」「すごくないですか?」と、紹介したい気持ちの方がどちらかというと強いですね。それはずっと僕がポップカルチャーやサブカルチャーが好きでそれらに人生を支えられてきた人間なので、今、自分が作る番組を通じて、見てる人たちに面白いものをたくさん知って欲しいからジャンルを横断したものを作るというか。

――それはもう性格的なものなのでしょうか。

手間をかけてずっと考えているのが好きなんですよ。僕がテレビ番組の制作過程の中で好きな作業って実は「編集」なんです。全部撮り終わった素材をパソコンでニマニマ見ながら編集するのが、大抵の人は嫌いだと思うんですけど僕は大好きなんです。やればやるほど楽しくなるから、ずっとやっていられるならこんなに楽しいことはないですね。テロップを考えるのも好きで楽しくてしょうがないですよ(笑)。編集で徹夜するのは何の苦でもないです。

――そこらへんのこだわりや集中力はサブカル好きと関係するような気がします。

小・中・高と漫画家になりたかったんですけど、いざ描いてみたら死ぬほど絵が下手で破り捨てましたし(笑)、音楽もホントに好きなんですけど信じられないくらい音痴で、小学校の時に親戚の集まりで親父に無理矢理『夢芝居』を歌わされて親戚が凍りついたこともありました(笑)。自分が好きなものにずっと関われずにいたけど、やっと今、少しだけでも関われるから、そのこと自体がもう楽しいんですよ。