未来からタイムワープしてきた時空ジャーナリスト・沢嶋雄一(要潤)が、歴史に埋もれた庶民たちの生きざまをドキュメンタリータッチで追跡する歴史番組『タイムスクープハンター』(NHK総合・毎週木曜 22:00)が今、ひそかな人気だ。そこでマイコミジャーナルでは特殊な交渉術を駆使し、番組作りを支える制作統括・下田大樹氏と、脚本・演出を手がける中尾浩之監督から話を聞くことに成功した。

タイムスクープ社に所属する時空ジャーナリスト、沢嶋雄一(要潤)。歴史の中で必死に生きる庶民たちの暮らしぶりを克明にレポートする

――まずは番組が立ち上がった経緯から聞かせて下さい。

下田「今から4年前の2007年、新番組を放送する『番組たまご』という開発プロジェクトを(※2005年発足)で企画を募集したことが始まりです。従来の歴史番組とは違い、加賀藩の大名飛脚が氷を運ぶ様子をリアルに描くという視点と、庶民の暮らしにスポットを当てた企画主旨に私が興味を持ち、パイロット版(2008年9月13日放送『お氷様はかくして運ばれた』)の制作を進めていきました」

中尾「僕は大学時代に『時代劇をドキュメンタリー形式で撮ったら面白いのでは』というアイデアを思いついたのですが、当時はまだビデオカメラの機動性がなくて実現できませんでした。でも、そのうちにYouTubeで動画をアップするビデオジャーナリストが増え、9.11同時多発テロ以降、ハリウッド映画もリアルなテイストに移行するなど、昔と比べてフェイクドキュメンタリーを受け入れやすい環境になったことも企画が通った大きな理由だと思います」

下田「しかし、パイロット版を作ったからといって必ずしもレギュラー番組になるわけではありませんし、そもそも視聴者に受け入れられるかどうかは正直分かりませんでした。ただ、その中で最も心がけたのは『新しさ、斬新さを打ち出し、従来の番組やドラマに見えないようにしよう』ということ。既存の時代劇とは違うことがひと目見て分かるようしっかりとした時代考証に基づき、映像だけでなく歴史解説や当時の情報をふんだんに入れ込むスタイルを確立していきました」……続きを読む