これが話題の「もろこしうどん」(850円)

名古屋に長く住んで感じること。それは、この地のうどん屋店主の発想力というか想像力の豊かさ、そして自由さだ! そのひとつとして、愛知県の岡崎市にはトウモロコシだらけの絶品うどんがある。口コミで話題になっている味を、本家の厨房まで突撃取材してみることにした。

「スイートコーン入りのかき玉あん」

足を運んだのは「大正庵釜春 竜美ヶ丘支店」。ちなみに大正庵釜春は、愛知県内にいくつもの暖簾(のれん)分けがある、地元では有名なうどん店だ。噂のメニューは竜美ヶ丘支店の店主・成瀬敏治さんが開発したもので、メニューの正式名は「もろこしうどん」(850円)。うむ。ストレートな名前だ。

現在では、このうどんを供している店は市内におよそ15店舗あるという。有名どころでは、岡崎市欠町の「鐘庵 欠町店」、そして市外にはなるが、豊田市竹元町の「手打ちめん処 しら川」などが挙げられる。

「大正庵釜春 竜美ヶ丘支店」の成瀬敏治さんにお話をうかがった

「え? もろこしうどんを取材するの? 作り方? 見せてもいいけど地味だよ?」率直なお答え。しかし、その口元はニヤリと笑っている。成瀬さんいわく、「もろこしうどんは」は35年前に独立した時からあるメニューなのだという。

レンゲ2杯分のコーンをつゆに投入。片栗粉でとろみをつける

今回、特別に調理風景を見せていただいた。まずはレンゲ2杯分のコーンをつゆに投入し、カタクリ粉でトロミをつける。次にとき卵を投入加え、うどんの入った丼にかければ完成。うどんさえゆで上がっていれば、あっという間にできあがるスピードメニューと言っていい。

ちなみにこのメニューは、各県の県民性を紹介する某番組ホームページでも紹介されているのだが、その紹介文たるや「うどんの上にスイートコーン入りのかき玉あんかけをかけたもの」と、いたってシンプルなのだ。

よくといた卵を投入!

中華料理屋で閃(ひらめ)いた一品

あっという間に完成した一品を見ると、つゆのとろみで表面ツヤッツヤ! 卵とコーンがいずれも黄金色なので目に眩(まぶ)しい。つゆの色は明るめで、確かに地味ではあるが華やかな雰囲気もあわせもっている。つゆは甘辛い名古屋風ではなく、地元三河の薄口しょう油を使った三河風だ。

とろりとうどんの入った丼にかけて、できあがり!

「三河のつゆは本返しを使わず、その日の朝に調合するんだよ。お昼にちょうどなじんでくるからね」と店主。なるほど、鮮度とキレのある味わいでダシがすごく利いている。つゆをすすると玉子とコーンが口の中にドッと流れ込む。さらに、ふわふわ卵とコーンの風味が追いかけてくるのだ。

見るからに柔らかなとろみのあるスープとうどんのコンビが最高!

つゆとの相性もお見事の一言。これは子供から女性、年配者まで日本人なら世代を問わず好まれる味だろう。麺は手打ちで少し細口。モチモチ食感がまたナイス。うどんというより、コーン玉子スープにうどんが入ってる感じといえばいいだろうか。それもそのはず。メニューのルーツを成瀬さんはこう説明する。

「店を出す前に、中華料理屋でたまたまコーン玉子スープを飲んだんだよ。すごくおいしくてねぇ。これをうどんにしたら店の看板になるかもって閃いたんだよ」。その予想通り、開店から5年目で、もろこしうどんはブレイクし、今やダントツの人気なのだという。

確かに一見すると「中華のコーン玉子スープ」に見える

オススメは「うどん雑炊」

それにしてもこの味、最後にご飯を投入して雑炊にしたい衝動に駆られる。そうコメントすると、「むふふ。いいところ突くね。そんなお客さんが多いから、うどん雑炊(950円)ってメニューもあるんだよ」。

それは下にご飯、上にうどんの2層になっていて、最初はうどん、途中から雑炊の「ひとつで2度おいしい」メニューなのだという。やはり、一般的な「うどん」というカテゴリーを軽々と超えた、この発想の自由さ。さすがはご当地B級グルメの宝庫、愛知県である。

ちなみにこの店、成瀬さんが4年前に体調を崩してからは、ランチ営業(11時~15時)のみだという。それでも休日は200食を売り切るという。岡崎生まれの「もろこしうどん」が、全国に進出するのも時間の問題かもしれない。

●information
大正庵釜春 竜美ヶ丘支店
岡崎市竜美中2-1-2