沖縄菓子パンの代表的存在である「うず巻サンド」(120円、461kcal)

沖縄を初めて訪れた人は、現地では何もかもが大きいことにすぐに気づくだろう。かくいう筆者も、初めて沖縄に旅行した時、コンビニで真っ先に目に留まったのは菓子パンの大きさだった。通常の倍ほどのサイズの菓子パンがたくさん並んでいる。そして、「おおきい〇〇」、「でっかい〇〇」など、ネーミングでも大きさをアピールしていることにも驚いた。

存在そのものがビッグな菓子パン

菓子パンは食事で主役になることがあまりないためか、一般的にはさほど存在感がない。でも沖縄のビッグな菓子パンは、大きいだけでなく、確かな存在感がある。

菓子パンを買い求める人の多さからも伺えるが、とにかく菓子パンが注目されているのだ。スーパーに行けば菓子パンバイキングなるコーナーがあり、そこでは菓子パンを大量に買い求める主婦や学生たちがいつも白熱している。

地元の人に聞けば、実家に帰れば当たり前のように菓子パンがたくさん台所にあるという。また、菓子パンは立派なお土産にもなる。TV番組「さんまのまんま」にゲスト出演したBEGINの手土産が、両手いっぱいの菓子パンだったことからも、沖縄での菓子パンの位置づけが非常に高いことが伺える。

では実際に、沖縄の菓子パンがどのくらいビッグなのか? 今回は、映画「ホテル・ハイビスカス」にも登場した、地元民に愛されてやまない沖縄の製パン「ぐしけん」で展開されている、大きな菓子パン「ぐしけんパン」個々にスポットを当ててみたい。

独り占めしたくてもできない大きさ

まずはその名も、「でっかいメロンパン」。大きさは通常の約2倍はある。その大きさが分かるように、隣にスマホを置いて撮影してみた。表面はカリカリコーティングでなくふわふわで、手でちぎって食べようとすると、手の圧力通りの形に変わっていくほどの柔らかさ。単に大きいだけでなく、食べやすさもしっかり計算されている。

こちらが「でっかいメロンパン」(120円、569kcal)。でっかいシリーズは他にもメロンチョコ、あんぱんなどたくさんある

次に、これまた分かりやすいネーミングの、「ウルトラメロンチョコ」。「大きさ・おいしさウルトラ級」というキャッチコピーもついている。このクラスになれば片手で持つのは難しい。表面はつぶつぶとけしの実コーティングされたチョコ生地で、これまた柔らかい。中には何とマーガリンがたっぷりと入っている。パンを割って中身を見てビックリ!も、ウルトラ級である。

すべてがウルトラ級の「ウルトラメロンチョコ」(170円、842kcal)

そして、菓子パン界の横綱とも言っても過言ではないだろう、なかよしパン。このパッケージを見ただけで、なかよしパンのカエルだ!と識別できるほど、地元の人たちに愛されているロングセールスパンである。大きさはデスクトップPCのキーボードと言えば分かりやすいだろう。

そびえ立つ大きさの「なかよしパン」(315円、1,307kcal)

最上級の大きさのこのパンは、菓子パンの陳列棚から取り出すのではなく、引きずり出すというニュアンスになってくる。ココア風味の生地の中に、バタークリームがたっぷりサンドされているのが特徴だ。また、パンには山があり、8等分に簡単に分けることもできる。「分け合える=なかよし」ということからつけられた名前なのかもしれない。

では、このなかよしパンを始め、大きな菓子パンは実際にどのように食べるのか? 地元の方に聞いてみると、やはり兄弟で分け合ったというエピソードは多く存在した。「ひとり占めしたかったけど、絶対にひとつ丸ごとは食べさせてもらえなかった」などの声も上がったが、当時の記憶も鮮明に引き出されたようであった。

そうしたエピソードからも推測されるが、沖縄には子供がたくさんいる家庭が多いのも、菓子パンが大きくなった理由のひとつなのだろう。

誰もが子供の頃を思い出す大きさと甘さ

沖縄の菓子パンの特徴は、「大きい」ということの他に、「甘い」ということが挙げられる。「健康のためにも甘さ控えめがいい」という時代の流れに逆行するかのごとく、しっかりと甘い。でもその甘さは、口にする誰もが子供の頃を思い出すような、郷愁をそそる甘さなのだ。昔と変わらない味……これも菓子パン人気不動の理由なのかもしれない。

最後に、「どうして沖縄の菓子パンが大きいか?」ぐしけんに問い合わせてみたが、ビッグ菓子パンの誕生当時を知る方は残念ながらもういないそうで、詳しいことは分からなかった。しかし、ずっと昔から変わらず大きい。ということだけは確かなようだ。

ちなみにぐしけんによると、現在同社のパンは、沖縄県内でしか販売していないとのこと。オンラインショップでの販売等も一切ナシなので、沖縄でしか食べることができないのだ!

地元の方にとって、菓子パンとは物心ついた頃から変わらぬサイズと味で、いつもそばにあるもの。子供たちの成長をずっと見守り続けてきたビッグな菓子パンを、沖縄を訪れた際には是非堪能してほしい。