パソコン不要の自律型! コンセプトは "なんちゃって家庭用ロボット"

高橋氏:あと今回は、ユーザーにプログラミングさせることは想定していないんですよ。今までのロボット・キットは作っても遊びようがなかったので、自分でプログラミングして楽しんでください、とお茶をにごしていた訳です。それは黎明期には当たり前のことで、初期のパソコンもみんな自分でゲームを作ったりして遊んでいた。でもロビには、ちょうど初期のゲームソフトのような形で、こちらから遊び方を用意できたので、それで遊んでください、ということですね。

――完全にスタンドアローンで、外部とのデータのやり取りはないということですか?

高橋氏:そうですね。ロビを動かすのにパソコンはいりません。それでもマニアは手を尽くしていじるでしょうが、そもそも、一般ユーザーには今までのプログラム環境も遊べるレベルではなかったし、そこで間違った動きをさせてロボットを壊してしまう危険もありますから。あと、もうひとつの理由として、直接操作ができると、ロボットがあたかも命を持っているような感覚が冷めてしまうんですよね。そこはあくまで「勝手に動いてます」(笑)ということにしたい。

――高橋さんの側から完成後にアプリケーションを追加提供したり、バージョンアップさせたり、ということは?

高橋氏:今のところは考えていませんが、CPUボード上のSDカードスロットからそれも可能になっています。我々の側でも、もしプログラムに致命的なバグがあった場合などに対応できないのは怖いですからね。ボードのファームウェアまでは書き換えられないのですが、動きや音声データなどは変更できます。ただ、それにはボディを開けないといけないので、ふだんから自由にSDカードを抜き差しできる訳ではないです。

――では、音声データも、基本的には録音されたもののみで、最初から決まっている訳ですね。

高橋氏:とは言え、十分なパターンを用意しますよ。最初に性格決定をして、ユーザーごとに "自分だけのロビ" になるようにはしてあるので。約200種の音声認識に対して、性格がいくつかあって、答え方もランダムでいくつかあって、となると、全体ではすごい数になると思います。そのプログラムもまだこれから作らなきゃいけない……と思うと、いきなり言葉数が少なくなりますが(苦笑)。

様々な機能を備えた「ロビ」。そのコンセプトは、未来を先取りした "なんちゃって家庭用ロボット"?

――(笑) しかし、そもそも高橋さんはロボットにはあまり無闇に言葉を話させたくない、という方向だったと思うんですが。

高橋氏:そこは他の要素とのバランスの問題ですね。前の「ロピッド」(2011年秋発表のオリジナル・ロボット)で初めて音声合成によるコミュニケーションを取り入れたんですが、あの運動性能に対してもう少し頭もよくてよかったかな、と思っていたので。ロビはさらに自然な動きができるようになったし、音声認識の性能もよくなりましたから、それに合わせた形です。声優は、いくつかデモテープを聴かせてもらって決めました。やはり聞いたことのある声は安心、というところもあって(笑)、大谷育江さん(『ポケットモンスター』のピカチュウや『ONE PIECE』のチョッパー役で知られる)に担当してもらっています。

――ところでロビには、テレビのリモコン機能など、いろいろと便利な機能も入るようですね。

高橋氏:ええ。3方向の人感センサも目のところに入っていて、それを使って留守番させ、侵入者がいたら警告する機能もあります(「セキュリティ」モードに設定すると、人の気配を感じ、ロビが「誰?」「合言葉は?」と聞いてくる。これに対し設定された合言葉が返ってこないと警告音を発する)。人と会話ができて、家電が操作できて、セキュリティやタイマーの機能もあって……結局、何がやりたいかというと、ロビのコンセプトは "なんちゃって家庭用ロボット" なんですね。ロボットと暮らす未来をイメージしてもらうために、ひと通りの機能が入っている。それぞれに実用性があるのかと言われると、ないんですけど(笑)、ロビによって「家庭用ロボットってアリだよね!」と思わせたい。と言うのも、初代の「ルンバ」ってオモチャだったんですよ。

――ああ、日本でも2003年にタカラ(現タカラトミー)から黄色いモデルが発売されていましたね。

高橋氏:そうです。あれがアメリカではクリスマス商戦に合わせてトイザらスとかで安く販売されました。でも使ってみると「意外と掃除できてるやん!」とみんなが思った訳です。そこへ 「そうでしょう? 実はこういうのもあるんですよ」と3倍ぐらいの値段での本格的なモデルを出してきた。もし最初からそっちを出していたら売れなかったはずです。同じように、ロビも "なんちゃって" だけど、ロボットという存在を啓蒙して、ビジョンを広げていく役割ができるんじゃないかと。そういう訳で、デアゴスティーニさんを利用させてもらった訳です(笑)。……続きを読む