押上の古民家カフェ「長屋茶房・天真庵」の内観

依然、人気観光地トップに君臨する東京スカイツリー。でも、まだまだ周辺の街まで楽しむ人は少ない。下町人情残る街には、東京スカイツリーオープン前から愛されてきた店も多い。そんな街を散策しながら、古い家屋を利用した古民家カフェでひと休みしてみない?

モダンなツリーの足元には昭和な風景が

浅草、押上、曳舟、向島……。東京スカイツリーのお膝元は、人情の街・下町。昔ながらの庶民の暮らしを支える代々続いた老舗店、職人の技が光る店、下町を愛してやまない若い世代向けのこだわりの洋品店や雑貨店、和小物をそろえた店などが並び、ぶらぶらと歩いて巡るのにうってつけだ。

地元押上の川沿いの小さな路地や、お隣浅草の雷門、仲見世などからふと見上げれば、東京スカイツリーが見えるのも楽しい。せっかくスカイツリーまで足を運んだなら、周辺まで歩かないと損だ。

そして、下町散策の休憩におすすめなのが、古い家屋を利用した古民家カフェ。再開発が進んでしまった東京の他の街に比べ、下町には古くから残る木造家屋が今でも多数残る。散策することで、そうした木造家屋をリノベーションした心和むスポットに出合えるのも、大きな魅力なのだ。

モダンな東京スカイツリーでたっぷり遊んだ後に、古民家を訪れほのぼの気分で昭和へ時間旅行する。そんな1日を楽しむのにうってつけのカフェを紹介しよう!

古民家カフェでそばとコーヒーのコラボを楽しもう

東京スカイツリーから歩いて10分ほど。築60年の長屋を改装したのが「長屋茶房・天真庵」だ。のれんをくぐりつつ引き戸を開ければ、居酒屋から譲り受けたというヒノキの立派なカウンター席と、しっくり落ち着くテーブル席が待っている。世界中から厳選したという、香り高い自家焙煎(ばいせん)のコーヒーを、石臼自家びきそばとあわせていただける。

そばは、のどごし、歯ごたえともに申し分なく、そば通をもうならせる。他にも、そばっこ雑炊やそばっこくれーぷなど、そばを使った各種メニューをそろえ、それらは特に女性から人気が高い。

料理に使う器やコーヒーを入れる際に使う道具などもにも味わいがある。良いものを長く愛して使いたいという、店主の思いが伝わってくるようだ。

若い女性たちやカップルが楽しそうに談笑する傍ら、カウンターでは“往年の文学青年”とでも表現したくなる、雰囲気のあるご老人が静かに読書しながらコーヒーを嗜(たしな)んでいる。その様子を眺めているだけでも、まるでここだけが時間が止まったような感覚に陥ってしまうのだ。

店内では頻繁に長屋LIVEが行われているというし、2階の座敷はギャラリーとして貸し出されることもあるというから、イベントをチェックして赴くのも楽しそうだ。

ギャラリーとしても使用される「長屋茶房・天真庵」の2階

ざるそば800円とコーヒー500円

木のぬくもりが漂う店内で、インド風カレーと至極の一杯

この天真庵のすぐ近くにあるのが、古い木造アパートを改装した「Spice Cafe(スパイス・カフェ)」。カレーの名店として知る人ぞ知るスポットとなっている。

世界各国で料理修行をしたオーナーの作るカレーは、インド風のオリジナル。ランチセットは野菜カレーにサラダ、ライス、キャラメルムース、アイスティーまでついた充実ぶり。とてもヘルシーで美容にも良さそうだ。

夜はカレーのセットやコースがある他、お酒も各種用意され、思い思いの時が過ごせる。自家製スイーツも評判がいい。また、木のぬくもりがあるインテリアでまとめられているため、女性ひとりでも寄りたくなる空間なのだ。と、温かな雰囲気いっぱいの店内だが、なんと左官仕事やタイル貼り、テーブル造りまで自分たちで行ったのだとか。

「スパイス・カフェ」の内観

ランチセット950円

ノスタルジックな商店街にあるかわいいカフェ

少し歩いて向島まで足を伸ばし、隅田川方面に歩いてみれば、なんともノスタルジックな商店街、「鳩の街通り商店街」に出合える。その前身は昭和3年(1928)に設立された寺島商栄会であり、約80年の歴史を誇っている。

このエリアは東京大空襲を逃れたため、今でも古い家屋が点在し、道幅も随分と狭い。まさに昔ながらの東京の商店街だ。また、商店街の周囲の向島は東京随一の花街として栄えたところで、今も料亭御用達の和菓子店があるなど、往時の名残を色濃く感じさせているエリアとなっている。

こちらの商店街にあるのが、カフェ「こぐま」。昭和2年(1927)に建てられた、元は薬局だったという木造の古民家を利用している。引き戸を開ければ、瞬時にタイムスリップした気分になる。

時の流れの中で黒ずみ、味わいを増した太い柱に掛かったアンティーク風な時計が時を刻み、店内には学校の古いイスが並ぶ。まるで映画の世界に迷い込んだかのような気分にさせてくれるインテリアだ。壁の棚には器などが飾られているが、これはギャラリーとしても利用されているんだとか。

そんな昭和ワールドにどっぷり浸りながらいただけるのは、自家製スイーツの数々や深みのある味わいのコーヒー、そして食事メニューも数々と用意されている。ちなみに同店の焼きオムライスは、“すみだブランド認証「すみだモダン」グルメ部門”を受賞した逸品だ。

オムライスのふんわりとした卵をケチャップと共に崩せば、チキンライスとホワイトソース、チーズ、ベーコンなどが中から登場。スプーンでまとめてハフハフと口に運べば、ケチャップとホワイトソースの絶妙なコンビネーションを楽しめる。

店を出たら幸田露伴など下町ゆかりの文豪の足跡を訪ねて歩いてもよし、最寄りの曳舟(ひきふね)駅からもう一度、東京スカイツリーに戻ってショッピングを楽しんでもいいかもしれない。

インテリアを見ているだけで楽しい「こぐま」

焼きオムライス1,000円