スマートフォン向けの放送局NOTTV(ノッティーヴィー)で、10人の異なった監督とキャストが10週連続で放送しているドラマ『ラヴコンシェル』。同作は、スマホのコミュニティーサービス“ラヴコンシェル”で出会った見知らぬ2人の男女を描く電話での会話劇で、主人公の2人の男女がラストで「会うのか、会わないのか」を視聴者の投票によって決めるマルチエンディング形式になっている。そこで、1月28日から放送される最終週で、監督・脚本・主演を務めた俳優のムロツヨシに話を聞いた。

ムロツヨシ プロフィール
1976年1月23日生まれ。1999年に役者として舞台デビューし、本広克行監督の『サマータイムマシン・ブルース』(2005年)に出演後、同監督の『踊る大捜査線』シリーズにも出演し知名度を上げる。2012年は大河ドラマ『平清盛』やドラマ『勇者ヨシヒコと悪霊の鍵』、『メグたんって魔法つかえるの?』などで個性的なキャラクターを演じる。2008年から始めた自身プロデュースの舞台『muro式』では、脚本・演出も務めている。

――『中は?』というタイトルですが、どのような内容ですか?

「単なる時間潰しから何気なく始まるお話です。うだつの上がらない男とサバサバした女が主人公で、男はコインランドリーの乾燥機にコインを入れてからの40分間、女は鍋を煮込む間の40分間から繋がる2人の物語。実は、男と女の恋愛ものって初めてなんです。お話を頂いた時は、どうしても出会い系しか思い浮かばなかったので、どう男と女の関係の距離を縮めていこうか考えました。ラブストーリーでもあるしコメディでもあるのかな?今、自分が面白いと思うものを書いて、演出して、演じました。ムロツヨシの最初で最後かもしれない恋愛ドラマを観て頂きたいなと思ってます」

――監督・脚本・主演という3役をやってみていかがでしたか?

「脚本はmuro式でも書いてるんですが、2つのエンディングを書くのは難しかったです。どっちもハッピーエンドにしたかったので、会う方はすぐ書けたんですが、会わない方がどうしても書けなくて。脚本会議の朝までずっと書いてたんですけど、適当に書いたのがバレまして……。本当は監督と脚本だけだったんですけど、脚本を書いている時に自分しか分からないだろうなっていうニュアンスもあったので、僕が主演をやることになりました。でも、いざやってみると相当大変でしたね(笑)。お芝居をやりながら、自分で『ハイッ!』ってカットをかけるのが恥ずかしくて。『出演、監督をやっている方は、どうやってやってるんだろう?』と思いながらやってましたよ。撮影が終わって『役者から監督に切り替わる瞬間が一番好きでした』ってカメラマンさんに言われちゃいました」

――映像作品の初監督をやってみた感想を教えて下さい。

「最初で最後だと思ったので、生意気でも嫌われても良いからぶつかっていきました。思いつきのものでも、ほとんどスタッフさんが受け入れてくれたので、やっててすごく楽しかった。映像に関しては、ちゃんとお仕事として映画監督やテレビの演出家がいらっしゃるので、手を出してはいけないと思ってたけど、途中から演出というものを知ってしまったなと(笑)。小栗旬が監督をやった時には役者として出たんですけど、彼はカメラの種類だったり映し方だったり、相当勉強していたんです。今回、監督をやってみてまだまだ勉強と時間が必要だと分かった一方、やり終わってからはまたやってみたいという気持ちも出てきました」

――"ラヴコンシェル"があったら体験してみたいですか?

「好きな女性の条件を色々入れれるんで、やってみたいですね。多分、今回書いたようなサバサバした人が理想かもしれない。クールビューティーじゃなくてサバサバビューティーな人。クールビューティー程、格好良くはなくて、サバサバでしか無い人ってたまにいるじゃないですか。そういう人がたまに笑うのが好きなんですよね。って、恥ずかしい……(笑)。お付き合いする方とか僕と向き合ってくれる人はそんなサバサバしてるわけじゃないので、現実は理想とは違いますけど」

――同作のテーマである“つながり”を感じるエピソードはありますか?

「僕がこの世界でお仕事が出来るのは、人とのつながりでやってる部分はあります。人からの紹介とか飲み会の席で知り合った人とお仕事したり。最初に出会った本広監督と知り合ってからは色んな人に出会えましたし、そこで瑛太と知り合って役者仲間が増えたし、本当につながりにお世話になってます。僕は、1つのつながりを大事にする方ですね。一緒の空間にいる人には自分から話しかけに行くタイプなんです。人の懐に入るスピードはこの世界の中ではランキングが高い方だと思います」

――2012年は振り返ってみてどうでしたか?

『勇者ヨシヒコ』の反響は大きいかなと思います。キャラが強い仕事が立て続けにくるだろうなと思ってたんですが、2012年は予想通り、キャラものか刑事ドラマとかで真犯人の前に1回犯人に疑われるような役どころが多かった。やり過ぎて『コイツは犯人じゃないだろ』って視聴者が分かるくらいまでやり尽くしたと思う。でも、今回はキャラものを一切捨ててやってるので、そこを観ていただけたら嬉しいです」

――では、最後に今年の意気込みをお願いします。

「毎年挑戦してるのは舞台なので、自分がやりたいことはmuro式に集約されてますね。新しいことも怖がらずに自分の芝居が出来たらそれが1番かなと思います。でも、芝居を続けるのは大変なことなので、今までやってきたことも馴れずに手を抜かずにやっていきたいと思ってます。昨年は、今までの人生の中で、お芝居をする時間が多かった年なので、来年は自分なりに質を高めたいなと思います。どの現場でも楽しくやっていきたい」

ドラマ概要

ドラマ『ラヴコンシェル』は、10人の異なった監督とキャストが10週に渡って放送しているマルチエンディングドラマ。相手に求める条件を登録しておけばコンシェルジュから相手を紹介してくれるスマホのコミュニティーサービス“ラヴコンシェル”での会話を通して、見知らぬ男女の物語を描く。放送は、月曜日~金曜日の23:00からで、木曜日のエンディングではラストで男女が会うか、会わないかを視聴者の投票を行う。日曜日には、投票で選択されなかった方のエンディングを使った総集編を放送する。なお、NOTTVは1月6日に契約者数50万人を超え、本作をはじめアニメやバラエティーなども放送中。視聴にはドコモのスマートフォンNOTTV対応機種が必要となっており、ワンセグの約10倍の高画質で番組を視聴できるサービスとなっている(月額サービス利用料:420円)。