人口190万の都市とは思えない、溢(あふ)れる緑や自然の静寂を楽しむことができるスポットが、市の中心部および近隣に点在する札幌。そんな美しいこの街で、カフェに立ち寄りながらのちょっぴりマニアックな秋の散策コースをご紹介。
音楽や文学も楽しめる「中島公園」で一杯
秋はグルメの季節。おいしい食を求めて札幌を訪れる人は多いが、この街の魅力は食だけではない。札幌では都市部の周辺だけでなく、市内でも広大な緑を楽しむことができる。自然豊かな北海道の都市らしい魅力のひとつといえるだろう。
冬の気配が間近に迫る晩秋は、紅葉に色づいた木々の葉も落ち始め、札幌が最も北の都らしい美しさを見せる季節。立ち寄った際には、ぜひ散策していただけたらと思うのである。
札幌への旅行者の多くは、中心部に宿を取るケースがほとんどだろう。その中心部からさほど遠くない、気軽に散策できるスポットを紹介するのがこのレポートの目的だ。徒歩と札幌市電(路面電車)で巡り、途中カフェに立ち寄りながらのんびりと北の都の情緒を楽しんでいただきたい。
スタートは、ススキノの南側に広がる「中島公園」。面積21万416平方メートルの広大な公園で、多くの樹木に覆われた園内には、モニュメントや音楽ホール、文学館などの施設が点在している。1歩足を踏み入れた途端に騒がしさが遠ざかる、まさに都会のオアシス。イチョウの落ち葉がじゅうたんのように敷き詰められる晩秋の風景は大変美しい。
中島公園の園内を案内に従いながら西に向かうと住宅街に出る。その住宅街をさらに西に進むと、電車通りに出る。公園を出たすぐの場所にひっそりたたずむ「渡辺淳一文学館」や、公園内の東側にある「北海道文学館」内にはそれぞれカフェスペースがある。北海道文学館のカフェからは眺望もいい。
公園を出て路面電車の通り沿いにある「オレンジペコ」は、札幌では珍しい紅茶専門のカフェ。店の外に掲げた大きなユニオンジャックが目印のこの店では、種類豊富な紅茶によく合うスイーツが人気だ。
●information
オレンジ ペコ
札幌市中央区南12条西6丁目1-20サンピア中島公園 1F
市内にある原生林の空気に触れながらの一杯
路面電車の「中島公園通」停留所から西4丁目方面の電車に乗り、藻岩山(もいわやま)に向かってみよう。「ロープウェイ入口」という停留所で降りると、そこはもう札幌市民の母なる山、藻岩山の麓である。
トレッキングや観光でも親しまれている藻岩山は、500m級の低山。藻岩山を麓から見上げるだけで物足りなければ、昨年リニューアルオープンしたばかりの展望台に、ロープウェイで行ってみるのもいい。展望台にはレストランやプラネタリウムなどがある他、眼下に見下ろす札幌の風景は昼も夜も人気がある。
「麓から藻岩山の原生林を眺めるだけでいい」という人は、ロープウェイ入口の停留所に程近い「カフェ ブラン」に立ち寄るのがオススメ。落ち着いた佇(たたず)まいのフレンチ風のしゃれたカフェで、コーヒー、フード共に評判だ。
オモシロ雑居ビルにあるカフェは台湾茶がずらり
再び西4丁目方面の路面電車に乗り、終点を目指してみよう。少しずつ中心部へと舞い戻り、終点の西4丁目のひとつ手前「西8丁目」の停留所を降りる。
東方向に2丁ほど歩くと、近代的なビルに挟まれるように建つ「第2三谷ビル」という、小さくて古風なビルがある。個性的でユニークなショップが多く入るこのビルの2階にある「BUND CAFE」が今回のゴールだ。
コーヒーや紅茶、手づくりの絶品スウィーツを用意しているこのカフェの自慢は、上質な台湾茶。常時12種類、季節に応じてさらに数種類用意している台湾茶を飲むことができる。
これからの寒い季節にぴったりの、体が温まる焙煎(ばいせん)系のお茶ももちろんある。台湾茶の味はもちろん、香りも満喫できるとひそかな人気があるカフェで、雑踏の気配を感じさせないゆったりとした雰囲気もまた魅力的だ。
札幌だけでなく、地元民ならではの散策コースというのはどこの街にもあるはず。今回紹介したのはほんの一例だが、より深く札幌の魅力を感じられる散策コースはまだまだある。ぜひ、あなただけのコースも見つけていただきたい。