名古屋で愛され続けている「キリンラーメン」

インスタントラーメン(即席麺)の元祖といわれるチキンラーメンが登場したのは昭和33年(1958)。以来、即席麺は被災地の救援物資として大活躍するなど、今や世界中で愛されている。もちろん企業間の競争は激烈だ。毎年様々な即席麺が登場し、人知れず消え去っていく商品も多い。

キリンの首のように長~く愛されることを祈って

石黒昭弘/名古屋を中心に中部圏のカルチャーを発信しつづけるライター

一方、地方の中小メーカーが独自に作り続けている「ご当地もの即席麺」というジャンルが存在すること、みなさんご存じだろうか? コンビニなどでは取り扱われず、地元密着型スーパーなどで見かける存在だ。今回は、名古屋生まれ名古屋育ちのライター石黒が、東海エリアのユニークなご当地麺のひとつ「キリンラーメン」をご紹介しよう。

キリンラーメンは、高度成長期の昭和40年代に小笠原製粉によって発売され、地元三河を中心に東海エリアで根強い人気を集めてきた。僕の子供時代に忘れがたい思い出を残した一品だ。印象的なパッケージは、一度見たら誰でも忘れないだろう。

「2012年最新のキリンラーメンの全バリエーションを入手できる店は?」と製造元の小笠原製粉に問い合わせたところ、「中日ビルの『ピピッと! あいち』には置かせていただいています」とのお返事。

なるほど。「ピピッと! あいち」は、愛知県の特産品を販売するアンテナショップ。早速、クルマを飛ばすと、あるある、懐かしのキリンラーメンと10年ぶりのご対面だ。シンボルのキリンはちょうネクタイを付けている。そして、キリンなのに、びろんとたてがみがある。なかなか勇壮だ。

パッケージには、「キリンは首が『長く』、子供から年配まで大変『親しみやすい』動物です。『末永く』『親しみやすい』商品になればと名付けられました(原文まま)」と由来が記されている。なるほど。とはいえ昔と比べて、明らかに違う部分があった。それは原材料だ。

原材料が分かりやすく表示されている

おいしさだけじゃなく安全性にもこだわる

「小麦(小麦粉)、大豆(豆乳)、 米(米粉) 国内産100%使用」と明記してある。こんなこと書いてあったっけ? 調べてみると、キリンラーメンは何と、平成7年に1度製造中止になったらしい。しかし、地元ファンの熱いラブコールに応えて復活。限定販売→完売を何度も繰り返し、結局定番商品として舞い戻ったのだそうだ。

その時、「社会に貢献できる商品に」と原材料の見直しを行い、安心・安全な国内産の材料を使うことにしたのだという。

よりおいしく、より安全な即席麺となって帰ってきたキリンラーメン

では、久しぶりに作ってみよう! 作り方は即席麺なので超カンタン。沸騰した麺をお湯に投入して2分後、火を止めて粉末スープを溶かすだけ。具はもちろん好みでOK。今回は肉野菜炒めをトッピングしてみた。

完成したキリンラーメンは、しょう油スープの割には色が薄くて少しだけ白濁している。これは麺を練り込むのに水ではなく豆乳を使っているので、その豆乳が麺からスープに溶け出るからだろう。麺は油揚げ麺特有のちぢれ麺。スープがよくからみ、ツルツルっと口に入っていく。

2012年にはキリンの仲間が登場!

東京・池袋のサンシャイン水族館で先行販売された「ペンギンラーメン」

ところでこのキリンラーメン、なんと新商品も登場したという。

それが、シーフード味の「ペンギンラーメン」。2012年11月から東京・池袋のサンシャイン水族館で先行販売され、今、大好評を博しているというのだ。

大都会の水族館と愛知のローカル麺という取り合わせがユニークである。レトロなパッケージそのままに、現代に跳躍する名古屋のキリンラーメン。ネット通販で購入もできるので、ぜひ一度味わってみてほしい。