巨大な虎が出迎えてくれる。“張り子”でも迫力は満点

日本では「八百万(やおよろず)の神」という考えのもと、自然に存在する全てのものに神が宿っているとして、米粒ひとつひとつにさえ感謝の念を抱いてきた。そのため、神社仏閣にもいろいろな神が祀(まつ)られている。とりわけ奈良県・信貴山(しぎさん)にある朝護孫子寺(ちょうごそんしじ)ほど、インパクトがあるものを祀っている寺は珍しいかもしれない。

朝護孫子寺はその昔、聖徳太子が「寅の年、寅の日、寅の刻」に毘沙門天(びしゃもんてん)王の力を借りて、世の中に平和を取り戻したという由緒ある寺。日本に初めて毘沙門天が姿を現した場所とされることから、寺中に虎があしらわれている。

トレードマークになっているのが、赤門前にある巨大な張り子の虎(世界一大福寅)。ちなみにここは、「阪神タイガース」の関係者がシーズン前にお参りに来る場所としても知られている。

24時間・365日対応というコンビニのような寺

朝護孫子寺は信貴山真言宗総本山の寺で、本尊は寺の由来となった毘沙門天だ。ちなみに朝護孫子寺に加えて、近隣の久米寺、子嶋寺、小房(おふさ)観音寺、談山(たんざん)神社、當麻寺(たいまでら)中之坊、安倍文殊院を合わせて「大和七福神」と呼ばれている。

醍醐(だいご)天皇がご病気になられた際に平癒の祈願を行ったところ、たちまち癒えたといういわれがある。そのため、商売繁盛や受験などにご利益がある寺として、今でも広く信仰を集めている。

こちらのお寺のユニークな点は、24時間・365日参拝できるという点。まるでコンビニのようだ。信楽山観光協会によると、「毘沙門が出現したのが寅の刻、つまり現在の午前4時頃でした。その時間にちなんでお参りしたいという人がいるため、24時間対応にしました」とのこと。

豊かな緑に囲まれた朝護孫子寺の本堂

虎以外にも見所が満載!

境内には、例えば札束をくわえた虎の石像など虎関係のもの以外にも、巨大な大地蔵尊様など様々なオブジェが点在している。どこにどんなものがあるのかを探して回るのも楽しみのひとつ。さらに、「阪神タイガース」の必勝守りなどもあるので、お土産選びも楽しめる。

また、この寺を訪れたらぜひチャレンジしてほしいのが、本堂での「戒壇(かいだん)めぐり」。これは、本堂地下に設けられた回廊を、真っ暗な中、手探りしながらめぐるもの。「如意宝珠(にょいほうじゅ)」を奉安している扉に触れることができたら、功徳を得られるとされている。

夜でも街の明かりが消えることのない現代社会においては、なかなか体験できない本当の“漆黒の闇”が待っている。勇気を出してトライしていただきたい。一願成就の御利益をたまわりたいと思う人には、特におすすめだ。

漆黒の闇が待つ「戒壇(かいだん)めぐり」

紅葉や桜の名所でもあり

また、本堂は信貴山の山頂近くにあるので、眼下に斑鳩(いかるが)方面の山や町並みを一望することができるのも楽しみのひとつ。さらに、古代から信仰の地であった信貴山だけに、心が洗われそうな豊かな自然が残されているので、春には桜を、秋には紅葉を堪能することができる。

「夜でもお参りができるように、信貴山には各所に灯籠が設置されていますので、夜桜やライトアップされた紅葉目当てに夜間登山する人も多くいらっしゃいます」(信楽山観光協会)。

その他、近隣には農業体験などができる「農業公園信貴山のどか村」があるので、お参りついでに立ち寄ってみるのもいいだろう。また、車で15分ほどの場所にある法隆寺とセットで訪れるのもイチオシだ。

近々だと、11月3日に「オープンカーフェスティバル」が行われる予定。その他にも、これからの季節には各種イベントや楽しい行事が企画されているので、秋の行楽シーズンに訪ねるにピッタリのスポットだ。

本堂からの絶景も見所のひとつ