マスコットキャラ化している「あの人」

輝く太陽に青い海と、色鮮やかな花々がリゾート気分を盛り上げてくれる宮崎。神話ゆかりの地も多く、パワースポットとしても注目されている。ところで、宮崎といえばあの人。そして、あのグッズ。ご本人はともかく、グッズは今、どうなっている?

あっちもこっちも知事だらけ

「どげんかせんといかん」。流行語大賞にも選ばれ、一世を風靡(ふうび)したこの言葉の主、東国原英夫氏。2007年に見事、県知事に当選して以来、積極的にマスメディアに登場し、宮崎のトップセールスマンとなって全国に宮崎県を売り込んだ。そして、地元ではグッズとなって、至る所に東国原氏が増殖したのである。

地元の人に当時のことを聞くと、それはすごかったらしい。右を見ても左を見ても知事ばかり。県庁には等身大のパネルが立ち、ツーショットで写真に納まろうと大勢の観光客でごった返したという。みやげ店に入れば東国原グッズ一色。

似顔絵をあしらったTシャツにキーホルダーから、東国原という名の焼酎もあったそうだ。似顔絵入りは加工品ばかりではない。県産の鶏肉や野菜、果物などの生鮮食料品にもシールが張られ、宮崎ブランドとして全国に出荷された。

名物知事の後は、素朴な「みやざき犬」

そんなブームも今は昔。前知事が退任して1年半がたち、グッズは見当たらない。そこで宮崎県内の土産店だったら事情が分かるだろうと、宮交ホールディングスに尋ねてみた。すると、かつては自社でストラップを9種、食品を5品目作って販売していたそうだが、知事退任後は生産をストップしたとの。

それらも自然消滅し、現在、直営店舗には自社製品はないという。しかし、他社を探せば、何か見つかるかもしれないと教えてもらった。それではと、宮崎県庁横のみやざき物産館を訪ねてみた。ここは県が運営し、宮崎の特産品で置いていないものはないといわれているショッピングスポットだ。

早速店内で探してみると、おおっ、ステッカーとクリアファイルを発見。スタッフの方に聞くと、文具関係は比較的売れ行きがゆっくりだからという。でもこれらがなくなるのも時間の問題なのではないかというもくろみだそうだ。

ちなみに県庁を訪ねてみると、観光客に人気だった県庁ツアーの目玉「知事の等身大パネル」は2011年11月末に撤去済み。代わりに県の新イメージキャラクターである3匹の「みやざき犬」が素朴なまなざしで迎えてくれた。

知事の等身大パネルがあった県庁には今、みやざき犬たちのパネルが置かれている

あの知事の似顔絵作者に直撃取材

こうやって東国原グッズを調べていると、なんとあの似顔絵の作者という方とコンタクトを取ることができた。宮崎市で飲食業や食料品の製造販売を行う岩切邦光さんだ。

イラストを手掛けることになったいきさつを尋ねると、「テレビで知事が『私をどんどん利用してください』」といっていたので、それならとテレビで見た姿をさっとデッサンしてデザイナーに仕上げてもらい、宮崎県商業労働部へ直行。担当の方から直接、知事に渡してもらったら『いいんじゃない』とその日に許可が下りたんです」という。

それで岩切さんは「みんなで宮崎を元気にしよう」という思いで、似顔絵を県内の農産加工業や食品関連業者に限り、無償で提供したそうだ。そのかいあって、ブームのピーク時には売り上げが現在の2.5倍もあったとか。でも今は「マスコミも来なくなって街は静かになったけれど、全国に宮崎県の良さが知れ渡って新しい観光客が増えたのは確かです」と喜ぶ。

その言葉の通り、宮崎には今日も癒やしを求めて観光客がやって来る。人気の土産はマンゴーや日向夏のお菓子、焼酎。加えて、「みやざき犬」グッズの売れ行きも上々だ。が、果たして東国原グッズに代わって宮崎をどこまでアピールできるか。ここは静かにエールを送り、見守ることにしよう。がんばれ、みやざき犬!

くまもんに続いて、みやざき犬は躍進するか!?