――ちなみに福圓さんが演じるのは?

福圓「春梅という『金瓶梅』の"梅"の字になっている使用人の女の人を演じます。春梅は、主役の金蓮と唯一馬が合う、田舎出身の、ちょっと腹黒い使用人です」

――4月26日が初日になりますが、稽古のほうはいかがですか?

福圓「うちの劇団の場合、出演者は声優さんが多いので、お仕事との兼ね合いもあって、稽古の期間をだいたい2カ月ぐらいとるのですが、今回は再演のつもりだったので1カ月ちょっとしかなくて……。思いのほか改稿してしまったので、時間が足りないです! セットが複雑なので、先に出ハケと流れを把握し完璧に覚え、今ようやくシーン作りのお稽古をしています」

――福圓さんの場合、自分の劇団ということもあって、役者に専念できるわけじゃないですよね

福圓「役者よりも、全体をプロデュースする業務のほうがメインになったりしますね。演目を決めて、お金を計算したり、人員を配置したり、客演を決めたり、劇場を押さえたり、スタッフと交渉したり……。もちろん、役者としても舞台に立ちますが、それ以外の仕事が山積みです」

――自分の劇団ということで、やはり演出などにも口を出したりするのでしょうか?

福圓「クロジ☆は劇団員が2人しかいなくて、演出も脚本も書かないプロデュース団体なので、ほかの劇団とはちょっと違っているかもしれません。普通は演出さんにプロデューサーが口を出すことはあまりないと思うのですが、うちはけっこう口を出させていただいています。現代劇をやったり、ファンタジックなものをやったりと、いろいろなことをやる中で、それでもクロジ☆の舞台と言っていただけるように、同じ匂いがする舞台にしたいので、演出さんや脚本家さんとは事前に、かなり会議をして共通認識を持つようにしています」

――今回のストーリーは『金瓶梅』の抜粋ということですが

福圓「原作は本当に長いお話なので、人も減らし、細かいお話はかなり思い切って省いてます。エピソードの取捨選択が一番大変でした。企画の段階から、どのエピソードを残すかはもちろん、誰を出すかについてもかなり検討しました。原作だと50人以上も出てくるのですが、舞台では15人に絞っています。前回はどうしても原作にとらわれすぎているところがあったので、今回あらためて全体を読み直し、まずは原作に沿ったものを作って、そこからオリジナルとして新しいものを作り出す。そんな感じで、さらにもう一段階創作しているような形になっています」

――出演交渉なども福圓さんがなさっているということですが、客演の方を選ぶ基準はどういった感じなのでしょうか?

福圓「関(智一)さんの場合は、『一緒にやりたいね』というお話を前からいただいていたので、今回参加していただくことになったのですが、そのほかの方でいうと、やはり現代劇にあう人、異世界の話にあう人など、人によって芝居にあう雰囲気というものがあるので、今回は『金瓶梅』の世界にあう雰囲気を持っている人ということを重要視して選びました。女性陣、特に第一夫人から第五夫人を選ぶときは、自分が男性だったらどんな女性を選ぶか? 第一夫人がこういうタイプなら、次はこんな人を選ぶだろう……みたいな(笑)、ちょっと失礼な感じなんですけど、いわば男性目線で選ばせていただいています」

――声優の方を舞台に誘う場合、何か苦労するようなことはありますか?

福圓「スケジュールの調整が…(笑)みなさんお忙しいですからね。今まで舞台に興味あったけどやる機会がない、という方から芝居に出させてくれないか、と逆にお願いされることもあって、そういう方々は本当に楽しそうにお稽古に出て下さるのでとても嬉しいです」

――西門慶役は藤波瞬平さんですよね

福圓「そうです」

――最初にお話を聞いたときは、関さんが西門慶役かと思いました

福圓「それも考えたのですが、木村(はるか)さんが先に決まっていたので、そのバランスを考えて、今回の配役になっています。ただ、関さんが西門慶というのは何かそのまんまの感じじゃないですか。私個人としては、もっと汚い関さんが見たかったので、ちょっと汚い役を振りました。性格的にも外見的にも薄汚れた、普段の関さんのイメージからは外れた役をやっていただきたいなと思ったのですが、実際に稽古などを見ると、やっぱり色っぽいんですよ。主役を凌駕するような勢い、存在感があって、さすがだなって思いました」

(次ページへ続く)