14種類のシートがある「WILLER EXPRESS」

高速バスの旅の常識が変わりつつある。電動リクライニングシートに座席専用モニター、セミコンパートメント……。プライバシーに配慮し、男女年齢ごとに最適なシートを提案しているのだ。特に急成長中の「WILLER EXPRESS」は、なんと14種類のシートを用意している。その代表的な快適シート5種類を体験してきた。

「WILLER EXPRESS」は、WILLER TRAVELと提携先バス会社が共同で運行している高速ツアーバスだ。東京・名古屋・大阪を拠点に全国主要都市を、昼行便と夜行便で結んでいる。今回は夜行便で使われるシートを取材した。夜行バスは昼行便より長距離で、「快適に眠る」「プライバシーを保つ」という要素が重要になる。「窮屈だけど安いからいいでしょ?」という、従来のバスの概念では通用しないのだ。

業界初のセミコンパートメント「コクーン」

「コクーン」は、「いままでにない座席を提案したい」というコンセプトで開発された座席。シートは2列、しかも進行方向に対して斜めに配置した。後ろの人を気にせずに背もたれを倒せるのだ。この「座席の斜め配置」を実現するために、企画から実現まで3年を要したという。

電動リクライニングシートは背もたれ130度、ゆりかご式リクライニング10度の合計140度を実現した。レッグレストを上げて足を投げ出すと、まるでベッドに寝ているよう。座席の両側にはパーテーションがあり、やや圧迫感もあるけれど、個室感覚で落ち着く。

プライバシーを重視した19席。通路から座席が見えない

横幅は67cm。コクーン(繭)の中はゆりかごのように快適

プライベートモニターを装備。テーブルを開くとゲームコントローラが。足はこの通りまっすぐ伸ばせるゆとりの広さ

プライベートモニターには映画約15タイトル・音楽32曲・オーディオブック6タイトル、ゲーム15タイトルを搭載。眠るヒマもないほど盛りだくさんの内容だ。映画は3カ月ごとに3~5タイトルを入れ替える。ゲームは懐かしのメガドライブで、レトロゲームファンなら感涙しそう。

各座席に電源コンセントを装備し、無線LANでインターネットに無料で接続できる。ノートパソコンを持ち込んで仕事をしたり、携帯端末を充電しながらのメールも可能。まるで"走る書斎"だ。靴の収納スペースやスーツを掛けるフックなど、至れり尽くせりの仕掛けがある。「コクーン」は関東 - 関西便に充当されており、料金は9,800円~1万2,800円となっている。

まるでホテルのロビーのよう「ビジネスクラス」

車内を見た途端、「これってバス? 」と思ってしまったのは「ビジネスクラス」。グリーンと木目調が調和した落ち着いたインテリア。開放感もあり、ホテルのラウンジのような高級感だ。シートは1+2列で、1列側が「ビジネスクラスComfort」、2列側が「ビジネスクラス」となっている。「ビジネスクラスComfort」のシート幅は65.5cm、デジタルテレビ付き、専用カーテンでプライバシーを高める。「ビジネスクラス」のシート幅は62cm。テレビはなく、隣の席との間に目線を隠すパーテーションを設置する。シートの材質と142度の電動リクライニングは共通だ。

「ビジネスクラス」の車内。もはや動くラウンジといっていい

座面も傾くゆりかご式電動リクライニングシート

「ビジネスクラス」の最後部は広々としたトイレを設ける。こちらも木目調の落ち着いた空間だ。このトイレは「用を足す」というより、「スーツを着替えたり、メイクアップするための空間」として考えられている。大きなミラーは女性にも嬉しいし、男性の髭剃りやネクタイのチェックに便利。腰掛けもあり、着替えのときに役立ちそうだ。

「ビジネスクラス」は関東 - 関西線に導入されており、料金は8,800円~1万1,800円。1列席の「ビジネスクラスComfort」のほうが、2列席の「ビジネスクラス」より1,000円高く設定されている。事前に予約するほど安くなり、利用日間際になるほど高くなる。ただし、高くても新幹線や飛行機とほぼ同等だ。夜間に眠りながら移動して時間を有効利用できるメリットを考えると、この料金設定は決して高くないだろう。ましてや、自分の車で高速道路を運転する場合のコストや疲労を考えれば、「ビジネスクラス」のほうが魅力的だ。

スーツハンガーを装備してビジネスマンに配慮

こちらがTVモニター付きの「ビジネスクラスComfort」