――今は、前もってビデオテープと台本を預かって稽古できますが、当時は、フィルムだったんでしょうか。

「そうですね。全員でセーノで見て、すぐ(台)本直しして、それで、テスト、本番。『マクロス』は、とにかく絵がなかったですね」

――絵の代わりに、線が出たら、しゃべってくださいとか……。

「赤い線が出てる間は、その人のセリフで、紫の線だったら誰々さん、というようにやるんですけれど、赤い線がどのくらいの時間かは、もう体感、自分の時間なんですよね。赤で安心してしゃべってても、いきなりパッと消えて、紫になっちゃったりするわけですから。でも、線があるほうが、まだやりやすくて。丸(の中)に点とかって」

――丸に点とは?

「人の顔なんですね。人の顔といっても、ほんとに丸に点が描いてあるだけ。丸に点があって波線があると、こっちは女(のキャラクター)かな、みたいな。それが入り乱れて、ババババって、戦闘シーンとかもありますから。そうすると、一人じゃ、どれが自分の役なのかもわからないですし。だから、みんなで助け合ってました。みんなで自分のセリフのないところも一生懸命見て、それで、『や、違う、ここからだよ』とか」

――ほとんど、ピンポイントバリアのオペレータですね(笑)。

「『違う、違う』とか(笑)。それと自分のセリフのところが合ってる人は、ちゃんと声出して演ると、それが終わると次の人だっていうのが分かるじゃないですか。すごい助け合ってましたね。それは、絵を解読するためのチームなんですよ(笑)。この絵は一体どこの絵なのかという。ほんとにひどいときは3ページぐらい(先に)行ってるのに、みんながわからなかったり。『違うよ、もう8ページだよ』とか誰かが言うと、『あ、ほんとだ』って(笑)。そんな感じのときもありましたね」

――線や丸だと、お芝居しづらいんでしょうね。

「逆に言うと自分の芝居ができるんですよ。表情が、まるでわからないですから。でも、オンエアを見て、全然表情と違うなと。なんか落ち込んでしまうようなことが、一杯ありましたけど(笑)。でも、それは(番組を)観てる人には、もちろん言い訳は効かないのですけれどもね。でも、作ってる側ではわかるわけじゃないですか。途中からパッと表情が変わってるのに、セリフは全然変わってなかったりとか。自分で考えたセリフの流れで言ったら、表情が全然変わってなかったりとか。そういう、ちぐはぐさは、すごくありました。でき上がったものを観ると、こんなふうに絵がちゃんとあるんだと思って(笑)」