来年放送開始30周年を迎える『超時空要塞マクロス』のヒロイン・早瀬未沙役などで知られる声優・土井美加。この役に出会うまでの当時の現場の様子、そして、その後の歩みについてうかがった。

土井美加
■プロフィール
現代演劇協会附属総合芸術学院を経て現代演劇協会"劇団昴"に在籍。2003年2月15日劇団昴を退団し、現在はフリー(個人事務所"トモダチ")を経て"ムーブマン"に在籍中

――子どものころ、お芝居を観て女優さんに憧れたことはありましたか。

「高校生ぐらいのときに文学座の『飢餓海峡』を観て、太地喜和子さんにすごく憧れたというか、なんかステキなお姉さんという感じがして。あと、唐十郎さんがやっていた状況劇場が大好きで、お友だちとか同級生は誰も興味がなくて、ずっといつも一人で観に行っていたのですけれど。仙台の西公園というところに状況劇場がテントを張って。李麗仙さん(大鶴義丹さんの母)とかが、すごいステキで。人の前でなにか普通じゃないことをしている人たち、そういう女性に、憧れがあったかもしれないですね」

――ご自身でも演じられたんでしょうか。

「演劇部にも入っていたんです」

――では、中学・高校の演劇部で、発声練習とか早口言葉とか、基礎をおやりに……。

「そうですね。先輩にビシビシやられて」

――中学入学と同時に演劇部に入部されたと。

「最初、バレーボール部だったんですけど(笑)。でも、背が低いんで、なかなかアタッカーにはなれないぞっていう感じで。これは無理、とか思っちゃって。一番真面目な部員だったんですけど。とにかく1年間はすごく真面目に。雨の日でも、こう、網張ったり、ボールを用意したりするのを1年やって、パッて辞めちゃって。やるだけやって、やっぱダメだって。それで、急に演劇部に入ったんです」

――なぜ演劇部だったんでしょう。

「女子校だったんですけど、演劇部自体すごく人気があって、100人以上部員がいたんですね。それで、1年生のときに、シェークスピアの『テンペスト』(邦題は『あらし』)をやったんですよ。それがすごくステキで。それをやってみたいって。それで、演劇部に入って。最初の文化祭みたいなので『アンネの日記』をやることになって。礼拝堂でやったんですけども、アンネを演ったんですよ。で、学校にはアメリカ人の先生が何人かいらしたんですけど、大好きな先生が、私が演ったアンネを観て、まあ、内容に感動したんですよね。だけど、その先生が終わった後に、手を握ってくれて、涙一杯流して、『美加、すごく良かったよ』って言ってくれたのが、たぶんなにか芝居のようなことをして人に褒められて、嬉しかったっていうか、未だに"嬉しい"の根っこだと思うんですけど」

――そこから、将来女優を目指そうと……。

「学校に演劇が来たりするような学校だったんですけども。終わってから役者さんとお話しができますとかいうと、嬉しくて絶対行って、ハイハイとか言って質問したりもしたんですけども。やっぱり食べていけるとは思わなかったというか」