――ところで昨今、指摘されて久しい視聴者の「テレビ離れ」についてはどう思いますか?

下田「まず、今後ますます映像がデジタル技術で高精細化していく流れは無くならないでしょう。それをテレビが供給するのか、ネットが供給するのか、映画が供給するのかは分かりません。でも、NHKの強みは常に『次』を意識して企画を考えコンテンツを作っているところ。視聴者の気持ちに敏感に反応していきつつ、番組を作る私たち自身も問われながら作り、育て続けないといけないと思います」

中尾「確かにテレビ離れとは言われてますが、僕は単純に『面白いモノがないから』であって、深い意味はないのではないかと思うんです。当たり前のことですが、作る側としては良質で本物の作品を作り続けるしかない。そこで数字(視聴率)を取るための計算をしていくと僕も楽しくないし、見る人もハッピーではないと思うんですよ」

下田「私は『事実をキチンと調べてありのままを伝える』という作業を新人時代から叩き込まれて育ったものですから、何かを作ろうとした場合、対象にただひたすら真摯に向き合うしかないですよね。ひいてはそれこそがNHKらしさではないでしょうか」

――そんな"NHKらしさ"も意識されている番組ですが、スタート当初は、局内で驚きの反応があったとか

下田「最初の頃は『何だこりゃ』というか、ずいぶんトリッキーなものを作ったなという反応でしたが、少しずつ慣れていただき、おかげさまで今では存在価値を認めてもらっています(笑)。やっぱり新しいモノを作ると反発されがちじゃないですか。そこを、コンセプトを固めてしっかりと作り込むことで有無を言わせないというか(笑)。自信を持ってお届けしています」

――さて、現在シーズン3が放送中ですが、早くもシーズン4への期待の声も寄せられているのでは?

下田「さぁ、どうでしょう(笑)。ただ、やりたいテーマはまだまだたくさんありますので、シリーズが続くかどうかは視聴者のみなさんの反響次第ですね」

中尾「みなさんからの応援が励みになりますし、本当に感謝しております。シリーズを継続させて、もっともっと大きなものにしていきたいと思っています。ぜひともよろしくお願いします!(笑)」

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謙遜しつつも、2人の言葉からは確かなクオリティーの作品を作っているのだという揺るぎない自信と覚悟、そして強さが感じられた。まさに番組に登場する、日本の歴史を支えてきた庶民のようにひたむきで真摯な姿勢こそが、この番組が視聴者に支持されている最大の理由ではないだろうか。今回こうして番組の裏側を垣間見ることができたのはとても貴重な体験だった。以上でレポートを終了したいと思う。