『ファミコンの驚くべき発想力』の著者に聞く!
RPGのパーティといえば何人編制が一般的なのだろうか。少々ゲームをかじったことのある人なら、「4」と答えるかもしれない。実はこのある意味定番ともいえる「RPGは4人パーティ」というカタチ、ファミコンの時代に誕生した。理由は、勇者、戦士、僧侶、魔法使いの4人がいれば十分だから……ではなく、ハードウェア性能の制限を回避するための工夫ゆえ。そんなエピソードを収録するのが、このほど技術評論社から刊行された『ファミコンの驚くべき発想力 -限界を突破する技術に学べ-』。性能の限られたファミコンというハードウェアを舞台としたゲーム制作者たちの工夫を振り返る一冊だ。
なぜいまこの時期にファミコンの性能に言及するのだろうか。著者であり公私ともにパートナーである松浦健一郎氏と司ゆき氏に、ゲームに対する想いとともに本書の狙いを伺った。
ゲーム自体にもゲーム作りにも強い関心を持つという著者の松浦健一郎氏(右)と司ゆき氏。松浦氏は東京大学工学系研究科電子工学専攻修士課程修了後、研究所勤務を経て、フリーのプログラマ、ライター、講師として活動中。司氏は東京大学理学系研究科情報科学専攻修士課程修了、在学中よりライターやプログラマとして活動している。著者サイト「ひぐぺん工房」からも情報発信中 |
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──近年、ファミコンやスーパーファミコン時代のゲームソフトが再評価されています。Wiiの「バーチャルコンソール」でダウンロードできたり、携帯ゲームになったり、と一部のマニア以外でもそれらのソフトを手軽に遊べる環境が整い、いわゆるファミコン世代だけでなく、若者や子どもたちにも親しまれているようです
『ファミコンの驚くべき発想力 -限界を突破する技術に学べ-』(松浦健一郎・司ゆき 著/ 技術評論社/ 1,449円) |
松浦 若い人が、想像以上にファミコン時代に生まれたシリーズを遊び続けているようです。私は専門学校でプログラミングを教えたりもしているのですが、生徒たちが『くにおくん』や『ロックマン』のシリーズに詳しかったりして、驚かされることもあります(笑)
──ゲームコンテンツとしてだけでなく、音楽やアートなども巻き込んだ"カルチャーとしてのファミコン"というムーブメントが定着しつつある中での本書の刊行ですが、企画の意図は?
司 ファミコンというテーマと、その掘り下げ方については、本書の編集担当さんと相談しながら詰めていった感じです。かれこれ10年以上、コンピュータの仕組みを直観的につかんでもらえる本を書きたいと思ってきたので、今回、ファミコンを切り口にそれが実現できてうれしかったですね。
松浦 ファミコンをプログラミングやハードウェア特性から切っていくにしても、わかりやすさをとにかく大事にしようと考えました。重苦しい技術解説書ではなく、気軽な読み物としての仕上がりには、かなりこだわりました。『ゲーム アルゴリズム マニアックス』シリーズ(ソフトバンククリエイティブ)では、プログラムをバリバリ書いている方はもちろん、プログラムは書かないけれどもゲームは好きという方にも読んでいただけるように工夫をしました。たとえば、仕組みが一目で分かる図をふんだんに掲載するといったことです。本書ではさらにその方針を押し進めて、「ファミコン」というキーワードに関心を持ってくれる方なら誰でも読めるような本を目指しました。
──確かに、一部のページで数列や計算式なども出てくるものの、文系でも対応可能というか、理系的な素養がなくてもつい読み進んでしまう内容です
司 たとえば弾を飛ばそうとした場合、どういう処理をして、どう表現しようとしたのか……などを仮に技術的なことがわからなくても、雰囲気をなんとなく掴んでもらえるような方向でまとめたつもりです。技術的な制約が厳しいなかで、効果的な表現をするために、色々なアイディアが生まれました。そんなファミコンのころのゲーム制作者の努力、創意工夫の精神というような要素をぼんやりとでも感じ取ってもらえればと考えました。
松浦 だから、ファミコンプログラミングやアセンブリプログラミングの専門知識がある方からすると、ちょっと物足りなく思うかもしれません。ごくごく初歩的なことを、丁寧に解説することに注力した構成なので。そんな場合は、ご自身の周囲にいる「プログラミングって何?」「ファミコンゲームのどこがスゴイの?」という方々にぜひ読んでみるようオススメいただいて、古いゲームに興味を持ってもらったり、ファミコンについて理解してもらったり、さらにはゲーム仲間を増やしたりするのに役立ててください(笑)
文系理系、老若男女問わず、本書に目を通すと細かな理屈はさておきゲームハードやプログラミングの面白さを感じ取っていただけると思います。その結果として、ゲームへの興味がさらに深まり、もっとゲームを好きになってもらえれば……というのが著者としてもっとも強く願うところです。そして、読者のなかから、「よし、自分がもっと面白いゲームを作ってやろう」と考える人が出てきてくれたら、こんなに嬉しいことはないですね。……つづきを読む