――大和屋さんはシリーズ構成ということでクレジットされていますが、脚本もすべて大和屋さんですか?

「だいたいは自分で書いていますが、清水(恵)さんにも入ってもらっています。時間はかなりあったので、自分ひとりでもという感じではあったのですが、ちょうど脚本を書いているときに、『ソウルイーター』が終わったので、そのタイミングで清水さんにも少し書いてもらおうかと」

――最近のアニメで、時間があるという状況はけっこう珍しくないですか?

「日米合同のプロジェクトだったので、リーマンショックやらサブプライム問題やらの影響があって、制作がなかなか進まなかったんですよ。そんな国際的なイベントは自分たちには関係ないと思っていたら、こんなところに余波がくるとは……。不景気ってこういうことなんだと実感しました(笑)。実際に、動き始めたのは、『ソウルイーター』よりも先でしたからね」

――脚本を書くとなると、やはり時間があったほうがいいですよね

「南さんは泣いていましたけどね(笑)。まあ、進行自体が止まっていた時期もありましたから、ずっとやっていたというわけではないので、それほど大きな影響はないですね。ただ時間があったので、ネタはいっぱい仕込んでいます。それこそ、2年でも3年でも続けられるぐらい(笑)」

――スタン・リーが原作で、舞台もアメリカということもあって、アニメではかなりリアルなアメリカが描かれている印象ですが、そのあたりはやはり力の入っているところなのでしょうか?

「そこはもう作画の人たちの力ですよね。監督をはじめ、弾丸ツアーでアメリカに行ったりしていますから」

――そのあたりに脚本的なこだわりはありますか?

「脚本での工夫というよりも、武半(慎吾)さんやコヤマさんの絵によりかかっている感じです。アメリカにもスタッフがいるので、書いたことがアメリカの文化として合っているかどうかというチェックもしてもらっていますが、やはり、ロケハンの効果が大きいと思います。短い時間で、写真とかを撮りまくってきたみたいですよ。もう寝るヒマないぐらい」

――大和屋さんもアメリカにはいらっしゃったのですか?

「本当に初期の段階でスタンに会いに行きました。生まれて初めてアゴ足つきで連れて行ってもらって(笑)」

――スタン・リーに会った印象はいかがでしたか?

「元気なおじいちゃんでしたね。もう90近いのに、背筋もピンとしているし、ノリも若い。あともう一つ言うとやっぱりカリスマなんですよね。会って話すと皆が好きになる。ちょうどコミコンというイベントにスタンが来るということで会いに行ったのですが、そうしたらステージに出て、元気に喋っていました。やあああっ! とか言いながら」

――実際にスタンと会って、プロットの細かいところを詰めたりしたわけですね

「それ以前からSkypeなどで何回か打ち合わせをしていたりもしたんですけど、アメリカに行って、そこであらためていろいろな話をしましたね。『俺の好みはこうだ』みたいなことを言われたり、『日本でやったスパイダーマンのあのロボットはカッコいいぞ』みたいな話を聞いたり」

――「レオパルドン」ですね

「『お前ら知っているか?』とか言われましたよ(笑)。ものすごくレオパルドンのことが気に入っているみたいで、『あんな感じがいいだよ』って言い出して、もともとHEROMANのデザインはもう少し細身だったんですけど、スタンの要望で、今のHEROMANのデザインになったみたいですよ(笑)」

――基本的にスタンの意向を優先した構成になっているということなのですが、そういった中で、どうしてもスタンと意見が合わなかったところはありますか?

「サイという足の不自由なキャラクターがいまして、松葉杖をついているんですけど、それをやめてもらえないかって頼んだら断られました。作画が大変なので、なんとかやめてもらえるように画策したんですけどね(笑)。でも、意見が合わなかったのはそれぐらいで、大体は『Great! Cool!』とかいって褒めてくれましたよ。最初の方向付けがしっかりできていたので、あとは任せてくれた部分が大きいですね」

――Skypeを活用されていたということですが、アメリカとのやりとり困ったことはありますか?

「朝が早いことですね(笑)。おじいさんなんで、夜がダメなんですよ。夕方の4時ごろには帰ってしまうみたいで、それにあわせると、日本では朝の8時ぐらいに、目をこすりながらみたいな感じで……。それが大変でした」

――内容的にはまったく問題もなく、といった感じですね

「スタンとの間には特に問題はなかったのですが、それ以外の間に入ってくる人とのやり取りがちょっと大変だったかもしれません。『こんなのはCoolじゃない』とか言ってくるんですよ。『アメリカじゃこんなことはやらないよ』って。でもアメリカのドラマとかを観るとちゃんとやっているんですよ。アメリカの映画とかドラマでやっているから、こういう展開もありだろうと思って入れると、意外なところから『Coolじゃない』とか言われて……。そうなってくると、何がダメなのかがわからなくなってくるんですよね」

(次ページへ続く)