――最初に買われた電子楽器は単音だけ出るミニモーグで、日本では初期のころだったとか。

「そう、日本で6台目だとかいうね。ある楽器屋さんが売りに来たんですよ。冨田勲さんが買いましたよと(笑)。最初のころは、毎回使いましたね。自分で担いでいって(笑)」

――印象深い使用例は、『キカイダー』の敵役・プロフェサーギルの笛の音ですね。

「あ、あれもそうですね」

――ほかには、『電子戦隊デンジマン』のイントロの部分ですね。

「あれはねぇ、全部五線紙に書いて、それを打ち込む専門の人に頼んでね、その場でやってもらったんですよ。もちろん、ミニモーグではありませんが」

――後にYMOに参加された松武秀樹さんですね。

「ええ。あの方はよくやってくれましたね。非常にいい音を作る人でしたね」

――コンピュータで全部、波形変えて、という今の音楽についてはいかがですか?

「ああいうものが、ありすぎてね、かえってよくないときがありますね。録音現場でも行われていますが、音程を直しすぎてしまうこともあり、良し悪しです。かえって、迫力がなくなっちゃうんですね」

――楽器の原音の迫力は残したいと……。

「そうそう。ピッチは誰でも多少はズレてるわけでねぇ、ひどくズレたときだけ、正確まで行かない、ちょっと手前で押さえて、全体があまり乱れないような程度にしないと、一カ所正確にしちゃうと、ほかが目立っちゃうから全部直しちゃう。だから、すごい迫力のない音になっちゃう」

――『宇宙刑事シャイダー』の『不思議ソング』も……。

「あれはねぇ、台本に、いきなり書いてあるわけですよ。『不思議、不思議、摩訶不思議』てな詞でしょ」

――脚本は上原正三先生さんでしたね。

「そう。うーん、これは困ったなぁということでやったんだけど、やっと今のメロディーができあがったんですね。苦心しましたよ」

――『不思議』というのを強調してくれということだった……。

「一回聴かせてくれっていうことになりますよ。スタッフが東映の撮影所にいるから、そこまでもってきてくれという。カセットテープに私の歌と、シンセサイザーの安いキーボードがあったんで(笑)。それで、『ブッチャカ、ブッチャ』みたいなリズムで伴奏を入れて、ラジカセ持って東映撮影所まで行って聴かせた。『あ、いいじゃないか』と」

――それで、そのテープをお預けになり、録音は後日行うことになっていたんですね。

「これ正式じゃないから、専門の歌い手で録り直しましょうということになっていたので、『こおろぎ'73』を呼んで録ったんだ。そしたら監督が、『いやぁ、これじゃあ、面白くない。こないだの安っぽい音がいいんだ』。で、デモテープの音楽が使われちゃったんです(笑)」

――ちなみに、『シャイダー』のヒット曲集の中の『シャイダー・ブルー』という曲で、男性の6重奏のコーラスがありますね。

「あれは田中公平さんですね。編曲で歌も歌った。あれはなかなかうまかった、驚きましたよ。これディレクターが、『たまには、他の編曲者にも依頼しようじゃないか』ということで、田中公平さんが選ばれて、ああいう編曲をしてきたんで、いやぁ、これはすごい人だなぁと思って驚きましたけどね(笑)」

――この何十年か、アニメや特撮の楽曲を手がけられて、その魅力はどんなところにあるとお考えでしょう?

「アニメ・特撮ならではの、音楽がたくさんある。これが大人のアクションものだとね、ああいうようなスタイルに徹するということができないんですよね。血湧き肉躍るというふうに。縦横無尽というかね。大人のものだとああいうふうにはいきませんね。ものすごく深刻なアクションものでリズムは刻んでいても、もう少し暗い感じになっちゃうとかね。あれ(アニメ・特撮)だと、これでもかこれでもかで攻めていけるという、おもしろさはありますね。しかも"溜め録り"という録り方には問題もあるが、よさもある。いろんなものを作ることができる。要するに決まった画面があると、その絵にあったものしか作れないけど、どんな絵が出てくるかわからないから、こっちが勝手に想像しながら作っちゃうという。そういう面白さがありますね」

――大人向けのドラマよりも、バリエーションが広い。

「だからある意味では大変ですよね。アクションでもいろんなものがあり、怖いといってもいろんなものがあり、リズムだけで迫力を出せることもあります。自分でワクワクしながら作ることもあります。大変は大変ですよ。しかし、そういう意味じゃ、やっぱりやってよかったなぁという気持ちが強いですね。大人のアクションっていうか、サスペンスもやるにはやったけど、結局、誰も後で振り向いてくれない。まあ、アニメ関係はほとんどの音楽をCDにしてくれる、この自分の作品が音で残るというメリットがありますから特に一所懸命やるんですね。やりがいを感じながら作曲することができます」

――遊びに来たり、手紙が来たり、大人ものにはない反響もあると。

「そうそう、沢山ありましたねぇ。で、今でもね、コンサートやると大人から若い人まで、一緒にワァーっとなってるでしょ。こんなコンサートっていうのはないですもんねぇ(笑)」

――ありがとうございました。