本誌でも既報の通り、第26回自衛隊観艦式が自衛隊の最高指揮官である内閣総理大臣を観閲官として迎え、10月25日に神奈川県相模沖で実施される。これに先立ち、本番と同様の形式でリハーサルを行う予行が10月21日、23日に実施された。

今回の観閲付属艦隊は護衛艦の他、掃海母艦、潜水艦救難艦、試験艦、訓練支援艦といった日頃見る機会の少ない自衛艦で構成されていた。護衛艦に比べ艦内スペースも大きいため、見学者は比較的過ごしやすい

観艦式は、自衛隊で実施される観閲式のうち海上自衛隊が行うもので、陸上自衛隊(観閲式)、航空自衛隊(航空観閲式)と各自衛隊で順番に実施されるため、観艦式としては平成18年度以来の3年ぶりの実施となる。また、今回は、2009年に就役した海上自衛隊最大の基準排水量を誇るヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」も参加する。

観閲を受ける艦艇は、縦一列となって観閲艦隊、観閲付属艦隊とすれ違う。観閲艦隊、受閲艦隊ともに航行しながら行われる移動観閲式は、観閲部隊が停泊状態の受閲艦艇の間を航行する形態で行われる停泊観艦式に比べ難度が高く、十分な事前の訓練が必要とされている

受閲艦艇部隊の旗艦、護衛艦「あしがら」。第2護衛隊群に所属しており、母港は佐世保。今回の観艦式には全国の海上自衛隊基地を母港とする艦艇や航空機が参加している。ソマリア沖の海賊対策、インド洋上の補給活動などの国際協力支援活動などに従事中の艦艇が多いことなどから、参加艦艇数は29隻(うち海上保安庁1隻)と前回の49隻から減少している

最新のヘリコプター搭載護衛艦「ひゅうが」も登場した。ひゅうがは21年3月に就役した自衛隊最大の護衛艦で、全通甲板を持つヘリコプター搭載型護衛艦。格納庫と甲板をあわせて最大11機のヘリコプターを収容できる。また、全通甲板などの設備により。陸上自衛隊や消防防災ヘリコプターなどの離着艦も可能とされ、大規模災害時の海上基地としての機能も盛り込まれている

護衛艦「ひゅうが」から2機同時発艦するヘリコプター。ひゅうがは全通甲板を活かし3機のヘリコプターを同時に発艦させる能力を持つ。艦橋を片側に寄せ、船の甲板全体を離発着用に確保したものを全通甲板といい空母などに見られるが、ひゅうがは航空機の発進能力は持たず、あくまでヘリコピター搭載型の護衛艦だ

23日の予行には、横須賀、横浜、木更津の各港から出港した29隻の艦艇の他、海上自衛隊厚木航空基地や航空自衛隊百里基地などから離陸した航空機などが参加。イージス護衛艦「あしがら」を先頭に護衛艦7隻、潜水艦3隻、掃海母艦、補給艦、輸送艦、ミサイル艇、エアクッション艇などからなる艦隊が一列縦隊で観閲リハーサルを受け、P-3C哨戒機、SH-60J哨戒ヘリコプター、UH-60J救難ヘリコプター、MH-53E掃海ヘリコプター、YS-1A救難飛行艇といった海上自衛隊の航空機、陸上自衛隊CH-47J輸送ヘリコプター、航空自衛隊F-2支援戦闘機、F-15J要撃戦闘機などからなる編隊が順次、海域に飛来して同様に観閲を受けた。

受閲艦艇では、乗組員が甲板に整列した登舷礼で観閲を受ける。一列にきれいに並んだ様子は壮観で、規律の取れた組織であることを実感できる

登舷礼は潜水艦も例外ではない。艦外の潜航舵上で登舷礼をする乗組員が正装の上にライフジャケットを装着していることに注目

今回の観艦式には、先日までソマリア沖で海賊対策に従事していた護衛艦「さざなみ」も参加している。またテロ対策特別措置法、新テロ特措法に基づき、インド洋に派遣され補給任務に従事していた補給艦「ましゅう」も観閲を受けた

海上自衛隊のヘリコプター、SH-60J、UH-60Jの編隊飛行。UH-60Jは全国で海難救助などに従事する。航空自衛隊配備のダークブルーの洋上迷彩塗装と異なり、白とレッドオレンジで視認性の高い救難用の塗装だ

陸上自衛隊の輸送ヘリコプターも参加した

航空自衛隊からはF-2、F-15Jの戦闘機、C-130H輸送機などが参加した

また、訓練展示として護衛艦からの対潜ロケット弾の発射、潜水艦の潜航・浮上、ミサイル艇からのIRデコイの発射、P-3C哨戒機からの対潜爆弾の投下、IRフレアーの発射などが行われた。

護衛艦「ゆうべつ」から発射される対潜ロケット弾。爆薬は実際のものにくらべて減らしてあるが、発射時には轟音が響き、着水爆発すると大きな水柱が上がり迫力満点だ

高速航行するミサイル艇から発射されるIRデコイ。赤外線追尾のミサイルなどを撹乱する

対潜哨戒機P-3Cによる対潜爆弾投下(左、中央)。P-3CによるIRフレアの発射(右)

会場となる相模沖までは、横須賀港から約3時間の航海。朝8時前後から各船は出港し、12時から13時に観艦式が行われる。帰港は午後4時から5時とこの時期はすでに暗くなる。この後、電灯艦飾、満艦飾が行われ、20日、22日、24日には一般公開される艦艇もあった

なお、観艦式は洋上で行われ、艦艇に乗船して見学する乗艦イベントは事前に申込みをして乗船券を入手する必要がある。