顧客獲得競争や最近の不況の影響を受けて航空業界の動きが激しさを増している。大手航空会社が生き残りや経営の安定を求めて資本提携や合併を進める一方で、安い運賃を武器に格安エアラインが勢いづく。そんな変革の時を迎えた航空業界だが、利用者が空の旅をお得に、便利に、そして快適なものにするにはどうすればいいのだろうか。上手な利用の仕方を様々な角度から考えてみよう。

「クアラルンプールからバンコクまでたったの800円!」

正月明け早々に格安エアラインのエア・アジアから届いたメルマガに、休みボケした頭が一気に働きはじめた。クアラルンプールからバンコクまでの距離は、成田からソウルまでとほぼ同じ。この区間を800円で移動できるというのだ。

実際には税金などがかかるため、計3,300円ほどになるが、それでも激安だ。往復でも約8,000円で済むという。航空券が8,000円で済むなら、残りのお金を使ってバンコクでうまいタイ料理を食べて、割安な買い物ができるクアラルンプールでほしかったサングラスを買って……、と思わず楽しい旅を空想するのは筆者だけではないだろう。

実際、安い安いといわれる成田 - ソウル往復の格安航空券でも往復1万5,000円はする。これに税金や燃油サーチャージなどを加えると2万5,000円前後。エア・アジアのクアラルンプール-バンコク往復の約3倍もする計算だ。なぜ航空券にこれほどの差が生じるのか。

よく目立つエア・アジアの機体。エアバスA320という中型機を数多く使っている

格安運賃を出せるビジネスモデル

あまりにも運賃が安いと、安全性に極端に問題があるとか、客室乗務員が少ないのではないかとか、疑ってみたくなるかもしれないが、そんなことはない。エア・アジアは格安エアライン(正式にはロー・コスト・エアライン)=LCCと呼ばれる航空会社で、日本航空(JAL)や全日本空輸(ANA)やシンガポール航空といった従来の大手航空会社とはビジネスモデルがまったく違うのだ。

どういうビジネスモデルかというと、LCCという名の通り、コスト=経費を低く抑えるビジネスモデルである。使用する飛行機は1機種か2機種に限定して整備を効率化する、空港での滞在時間を短くして駐機料を安くする、予約をインターネット中心にして人件費を抑える、エコノミークラスのみのモノクラスで余計な設備費をかけないなど、様々な工夫をして乗客に安い運賃を提供している。

エア・アジアの軽食。カップ麺やサンドイッチ、ドリンクなどがあり、有料

サービスも簡素だ。食事は出ないから、何か食べたくなったら機内で購入しなければいけない。運賃を下げるために、機内食のコストも削っているわけだ。ただ、考えてみてほしい。クアラルンプールからバンコクまで、あるいは日本から韓国までのフライト時間はたかだか2時間程度。この間に食事が必要だろうか。

LCCは、近距離路線を運航することが多いので食事がなくても困らないはず。バンコク(タイ)や韓国は食べ物がおいしいから、現地で食べればそれでいいだろう(今なら円高で割安感もある)。大半のLCCには大手のようなマイレージもないが、運賃が格安なら、わざわざマイルを貯める必要はないだろう。