皆様、あけましておめでとうございます!

2009年1月1日、新しい年の初日の出をいつもとはまた違った視点で楽しむため、今回はJAL(日本航空)の初日の出フライトに搭乗してきた。本レポートではその様子をお届けしよう。

「2009 初日の出 初富士フライト」は、JALと成田国際空港(NAA)が共同企画として実施したもの。1月1日の日の出前にチャーター機で成田空港を飛び立ち、千葉県銚子市の犬吠埼沖で海から昇る初日の出を観賞して、さらに初日の出に輝く初富士も拝んでしまおうという欲張りなイベントだ。JALではこれまでに初日の出フライトは実施したことがあるが、成田空港発着のフライトは今回が初めて。昨年11月21日の発売後、チケットはわずか3日で完売したという。

1月1日午前4時30分、まだ真っ暗な中、自家用車で成田空港第2ターミナルへ到着。集合時間は4時45分~5時。集合場所となったJALの国内線カウンターには、すでに多くの参加者たちが集っていた。

元日の早朝から多くの乗客でにぎわった"縁起物"の初日の出フライト。受付場所となったJAL国内線カウンターでは、正月気分を盛り上げる晴れ着姿のお出迎えも

国内線出発ロビーから搭乗機までは連絡バスで向かう。バスを待つ乗客たちは、成田空港マスコットキャラクターのクウタンと記念撮影を楽しんでいた

搭乗前、ロビーでは乗客一人ひとりに大きな紙袋が手渡される。中にはお弁当と、紅白まんじゅう、さらに記念品が詰め込まれたエコバッグが入っていた。参加者は、若いカップルあり、幼い子連れの家族あり、ミドル&シルバーエイジのご夫婦あり。単独参加者の姿もかなり見かけられた。

今回の参加者は209人。これにNAAや報道などの関係者25人を合わせた計234人が、便名「JAL2009便」のボーイング767-300型機に乗り込む。出発予定時刻は午前5時45分だったが、若干遅れて6時12分に離陸した。

搭乗前に渡された紙袋の中にはお弁当と紅白まんじゅう、エコバッグが。エコバッグの中身はエコ箸、カレンダー、特製ルービックキューブ、付箋紙、ボールペン。お弁当はご覧のとおり

成田発で、行き先も成田。めずらしい表示だが、係員に指摘されて初めて「ああ、そういえば」と気づく乗客も多かった。便名は「2009」と気が利いている

連絡バスから寒風吹きすさぶ滑走路に下り立ち、高鳴る胸で搭乗……かと思いきや、すぐには搭乗せず、タラップの前や上がる途中で記念撮影を行う乗客が続出した

成田を発ったその足で、まずは犬吠埼沖をめざす。犬吠埼といえば、南鳥島、小笠原といった南の離島や山の上など高所を除いて、日本でもっとも早く初日の出が昇る地である。2008年の犬吠埼初日の出の模様は、筆者の連載(日本の「端」を巡る旅・第5回)でもお送りした。1年後は、その犬吠埼を上空から眺めての初日の出体験というわけだ。

気象庁発表の犬吠埼の初日の出時刻は6時46分。飛行機は高い空の上だから、もちろんそれよりも早い時間になる。出発時間が少々遅れたせいか、離陸前、滑走路での待機中に、すでに東の空はうっすらと明るみ始めていた。「間に合うの?」という微妙な空気が機内に流れ始める。

離陸後すぐ、機長のアナウンスが入る。飛行高度は26,000フィート(約8,000m)。6時19分、飛行機が犬吠埼沖に達した頃合でシートベルト着用サインが消え、機内の乗客はいっせいに立ち上がって左右の窓側に寄り集まった。機内の移動はもちろん自由である。

定刻より遅れ、6時12分、ようやく離陸。窓の外はすでに美しいグラデーションとなっている。明るみ始めた東の空を映して、翼が黄金色に輝いていた

この高度での日の出時刻は6時33分頃の予想。右の機窓眼下にはまだ暗い犬吠埼の姿が見え、一方で大きな翼は東からの曙光の兆しを受けて徐々に明るく輝き始めていた。窓々を入れ代わり立ち代わり、乗客たちが覗き込む。まだ暗いうちから写真やビデオを撮影する乗客もいる。そして離陸からほぼ20分後、東の海上から2009年の初日の出が昇った。水平線付近に若干雲がかかっていたせいで予想時刻よりは遅れたが、犬吠埼で待っている人々よりはもちろん早い。見事な日の出だ。

飛行機だから、右か左かどちらかの窓からしかご来光を拝むことはできない。それぞれの窓は大混雑。まずは右の機窓に現れた初日の出に多くの人々が殺到し、パシャリ、パシャリとシャッターを切る。太陽が顔をのぞかせた瞬間、乗客たちから感動の拍手が湧くのかと想像していたけれど、みなさんデジカメやビデオの撮影に夢中で、案外にも静かな初日の出となった。

そしてとうとう、2009年初日の出の瞬間。水平線付近に雲がかかっていたため、実際に日の出が見え始めたのは計算上の日の出(6時33分頃)より数分遅かった。それでも眼下の犬吠埼よりは10分ほど早い

飛行機が旋回し、右の機窓から銚子の街がよく見えた。両側が海で、中央を縦に流れるのが利根川の河口付近。残念ながらこの撮影時、犬吠埼は翼の真下にあって見えなかった

両側の窓から初日の出がよく見えるように、機は犬吠埼沖上空で何度も何度も旋回を繰り返す。初日の出をしばらく拝んだ後、今度は針路を西へ取り、一路、富士山をめざした。 千葉県北西部から埼玉東部、東京都下西部の上空を抜ける。左の機窓には房総半島から東京湾を経て三浦半島、さらに神奈川県の形が地図そのままに眺めることができた。やがて左前方に、初日の出に照らされた富士山の神々しいまでの姿が迫ってくる。

富士山の北側を西へいったん抜けた後、御前崎の近くまで飛んで旋回。ここでも左右両方の機窓から初富士を拝めるよう、当初予定とは異なったコースを管制と交渉して飛行しますと機長のアナウンスが入った。

それはともかく、初日の出と初富士飛行の間は20分前後とそう長くないインターバル。乗客はみんな窓外観賞と写真撮影に大忙しだから、お弁当を全部食べきれた人はあまりいなかったようだ。キャビンアテンダントも大忙し。乗客たちが席を離れ通路にあふれている状況で、通常のフライトと同様に飲み物のサービスでてんてこ舞いだったためか、ギャレーから「初富士見てないね」という会話が聞こえてきた。

THIS IS JAPAN……とでもいうべきか、2009年初の朝日を受けて輝く富士山の神々しい姿。北東側の山梨県上空から撮影している。眼下には山中湖の形もくっきりと望むことができた

富士山の北から西へ回り込み、南側の静岡県上空に到達。太陽もかなり昇り、曙光の富士とはまた趣が異なって、青い空に白い雪のまさに富士山という姿が美しい。登山道のジグザグもよく見えた

初富士見物も終え、成田に戻り始めた機内では、プレゼントの抽選会が行われた。賞品はカレンダー、クウタン(成田空港のマスコットキャラクター)のぬいぐるみやTシャツといったところから始まり、3等 有機野菜セット、2等 東京ディズニーリゾートパスポートペア券、そして1等は沖縄オクマ3日間の旅ペア券まで盛りだくさん。そんなこんなでふたたび千葉県上空に戻ってきたJAL2009便は、午前8時5分に成田空港へ着陸。2時間弱の素敵なフライトが終わった。

富士山を離れ、成田空港へと帰還開始。左の窓からは箱根の芦ノ湖(左)や、湘南海岸に突き出た江ノ島、三浦半島、房総半島に加えて、横浜ベイブリッジ(右)まで遠く見渡せた

機内に表示されていた今回の航路。銚子沖で何度も何度も旋回した様子だけでなく、初富士をよく見せるため御前崎沖でもグルグルと回っていた様子がうかがえる

機内で配られた「2009 初日の出 初富士フライト 搭乗証明書」に、今回の搭乗券を貼り付けてハイ完成。みなさん、正月のいい思い出となったことでしょう