市場は急激な円高に見舞われているが、海外に投資してみたいと思っていた人にはチャンス到来ともいえる。為替差益と値上がり益の両方を狙えるからだ。では、海外投資商品のなかでどの商品を選べばよいかというとき、初めて投資する人でも、投資経験者でも、使い勝手の幅が広く、今もっとも注目なのが「海外ETF」。海外ETFという言葉を初めて聞く人もいるかもしれないが、どんな商品なのか、特徴や人気の秘密はどこにあるのか。取扱商品数NO.1の楽天証券・外国株式部長 新井党さんにお話をうかがった。

--最初に海外ETFとはどんな商品ですか。

「ETFはExchange Traded Fundの略で、日本語に訳すと『株価指数連動型上場投資信託』という名称になります。日本語に訳すとかなり長い名前になりますが、要は、投資信託の一種ですが、株式のようにマーケットに上場していること、それから株価指数に連動したインデックス型の投資信託であることが、大きな特徴です。

これが海外ETFということになりますから、つまり外国の証券取引所に上場された投資信託ということになります。外国で上場されていますから、当然、取引も外貨での取引になります。

日本でもETFが上場され、どんどん銘柄数が増えていますが、まだスタートしたばかりですので、TOPIXのような一般的なインデックスを中心とした商品構成になっていますが、海外では、すでに1,300程度の銘柄が上場されており、アメリカなどでは、今やミューチャアル・ファンド(投資信託)を凌ぐ人気を誇っているのです」

――海外の証券取引所に上場しているといわれると少しハードルが高く感じますが、初心者でもカンタンに売買できるのでしょうか?

「海外ETFは、初めて外国株式投資をする人にぴったりな商品といわれています。海外株式というと、個別の銘柄を選ぶのは、情報も少なく値動きの理由などもリアルタイムではわかりにくいので、なかなかむずかしいと思います。 その点、ETFはインデックスに連動する投資信託ですので、マーケット全体に投資するのと同じです。たとえば、アメリカのS&P500連動型ETFを購入するということは、アメリカの代表的な銘柄全体に投資するということを意味します。ひとつの銘柄に集中して投資するより、"分散効果"が大きく、破たんなどの心配もありません。また、値動きも毎日テレビなどで報道されるので、比較的わかりやすいと思います。 また、楽天証券の場合、ネット取引ですから、自分の好きな時間に指値をしておけば、マーケットが開き、価格が折り合えば自動的に執行されますので、日本株を売買するのとさほど違いは感じないと思います」

――ETFはマーケットに上場された投資信託ということですが、どんな点が違うのですか?

「最大のメリットは、ずばりコストです。投資信託の場合、売買時に発生する『売買手数料』と保有時に徴収されている『信託報酬』の2種類のコストを支払う必要があります。特に信託報酬は、保有しているときに基準価額から差し引かれていますので、その差は運用益に直接はねかえります。投資信託の場合、インデックスファンドで年0.8%~1.3%程度、ファンドマネジャーが運用するアクティブファンドだと年2%を超える信託報酬を払う必要があります。この点ETFの信託報酬は、年0.3~0.8%程度。この差は、長く持てば持つほど運用成績に響いてきます。中長期で保有を考えている人には、ETFのほうが圧倒的に有利なわけです」

――コストの安さは大きなメリットですね。既に投資経験のある人も含めて、売買方法やラインアップの面ではいかがですか?

「投資信託は1日1度基準価額という形で価格が決められ、その価格での取引しかできません。つまり、自分の思った価格で自由に取引することはできないということです。その点、ETFはマーケットに上場されていますので、自分の好きな価格を指値で売買することができます。自分の相場観で納得のいく投資ができることも大きなメリットです。

先ほど、S&Pの例でインデックスのメリットをご紹介しましたが、ETFの投資対象は世界中の株式に投資するもの、あるエリアや国の株式に投資するもの、さらに、コモディティや不動産といった株式以外の投資対象に投資するもの、テーマ型といって環境関連株式、水資源株式、SRI(社会的責任投資)など、幅広いラインナップがあります。たとえば、日本をのぞく世界中の株式に投資することもできますし、ブラジル、ロシア、マレーシアなどある1国に絞って投資することもできます。つまり、自分の今あるポートフォリオを補うのにも有効に利用できるというわけです。ですから、すでに投資を経験している人が、今自分が持っているポートフォリオで不足している投資対象の部分を、ETFを購入して補うといった使い方もあるわけです」

――世界中に1,300のETF銘柄があるということですが、楽天証券ではそのなかのどんなETFが取引できるのですか?

「現在、楽天証券で取引できる海外ETFは米国ETF61銘柄中国ETF18銘柄の計79銘柄です(10月25日現在)。2006年10月に4銘柄の取り扱いでスタートしましたが、その後、徐々に投資家への知名度が増し、運用会社側でも日本で取り扱ってみたいという企業が増えたため、順調に取扱銘柄を伸ばすことができています」

――現在、証券会社の中で取り扱い銘柄数は断然トップですよね。

「そうですね。実は海外ETFは現地で上場しているからといって、すぐに日本で販売できるわけではありません。運用会社が商品についての詳細を金融庁に届けないと、販売ができないことになっているのです。私どもは、海外の各運用会社に金融庁への届け出を随時お願いしたり、日本でニーズが高そうな商品の組成などもおねがいしたりしています。その結果、たとえば、9月から取り扱いを始めたヴァンガードなどは日本への届け出を提出する手続きをとってくれたわけです。海外には、本当にこんなインデックスもあったのかという、すばらしい指数がたくさんあります。投資の幅を広げるためにも、もっともっと取扱い数を伸ばしていけるよう努力していきたいと思います」

(聞き手 : 酒井富士子)