「ある日、普通の中学生がホームレスになってしまう」という実際に起こった驚愕エピソードが話題を集めた『ホームレス中学生』(ワニブックス刊)。お笑いコンビ・麒麟の田村裕の自叙伝であるこの作品は、225万部を越えるベストセラーとなった。この『ホームレス中学生』が小池徹平主演により完全映画化され10月25日より劇場公開される。ベストセラー作品の映画化に挑んだ古厩智之監督に、作品の魅力を語ってもらった。

『ホームレス中学生』 ストーリー
大阪のベッドタウンに暮らす中学生の「たむちん」こと田村裕(小池徹平)は、ごく普通の陽気な中学2年生。一学期の終業式を終えた裕が帰宅すると、自宅は差し押さえられていた! 父親(イッセー尾形)は家族解散を勝手に宣言して姿を消してしまい、たむちんは兄(西野亮廣)や姉(池脇千鶴)とも別れ、ひとり公園でホームレス生活を始めるのだった

――誰もが知ってるベストセラー作品の映画化ですが、古厩監督は原作のどんな部分に重点を置いて映画化されたのですか?

古厩(ふるまや)智之監督

古厩智之(以下、古厩)「『ホームレス中学生』は、みんながよく知っている話です。すでに田村さんによって、テレビでもさんざん話されています。これをどう映画化しても、皆さんの心の中にある『ホームレス中学生』には敵わないと思ったんです。田村さんにそっくりの役者を使って原作のエピソードを忠実に描いても、再現ドラマを越える作品にはならないと思いました。だから、"原作と目指す部分が同じであればいい"という意識で作りました」

――たしかに、ある程度イメージができている部分のある作品だと思います。「目指す部分が同じ」という発言がありましたが、具体的にはどういうことでしょうか?

古厩「細かい面白いエピソードにはきりがない。それを忠実に再現しても、モノ作りをする人間として、喜びはあまり感じられないと思ったんです。なら、同じメッセージを発することができさえすればいいと。なぜここまで原作が売れたかと考えると、みんなが欲しい何かが原作にあったのだと考えた。それは"どうやったら生き易くなるんだろう?"という事なのではないか、と思ったんです」

ある日、学校から帰宅すると玄関には「差し押さえ」の黄色いテープが