100%自分で作りたい

また映画を撮りたい――そう断言する高須氏。彼は今回、どこに楽しみを見出したのだろうか。

高須 : 「テレビは演者のもので、映画は監督のものじゃないですか。僕らが放送作家や脚本家として、いくら設計図を考えても、最終的に作品が完成するときには自分の手を離れるんですね。つまり、最後まで僕が作ったものってないんですよ。それでも昔は書くこと自体や、設計図が形になることに対する楽しみが大きかったんです。でも、この年になってようやく『100%最後まで自分で作りたいな』って思うようになった。もともと僕、何でもオリジナルじゃないとイヤなんですよ。そんな中、今回は脚本も監督も編集も自分でやることができた。画、テンポ、セリフ回し……すべて自分の思い描くように実現できたんです。すごくいい経験をさせてもらいました。『映画監督はクセになるな』って思いましたね」

そしていま、高須氏は以前にも増して「100%自分で作りたい」と切望するようになった。実は『賽ノ目坂』制作以外にも、その思いを後押しするキッカケがあった。それは今年の初め、韓国での出来事だった。

高須 : 「たまたま食事のときに同席した有名な占い師さんに、『あなたは韓国でも仕事をしますよ。今後、すべての権限を持ってつくるということを始めた方がいい』と言われたんです。でね、その人曰く『子どものころ、絵が好きだったはず。あなたはだいぶ色彩感覚も人とは変わっているので、そういうこともやった方がいい』と。確かに僕、子どものころは絵が好きだったんです。しかも、人には言わなかったけど、放送作家をやり出してからも『絵もやりたいな』って思ってたんですよね。そういうこともあって、『映画でも、絵でも、本でも、オブジェでも何でもいい。自分で完結できることをいっぱいやっていこう』って、具体的に考えるようになりました」

映画ひとつ取っても、その夢は日々具体的になっていっている。近々撮ってみたい作品を尋ねると、子どものように目を輝かせながら、次から次へと構想を語り出した。

高須 : 「まずは、時代劇ですね。いまの日本って、西洋文化を追いかけてたりして、どうもオリジナルじゃないでしょ。だから『カッコ悪いな』って思うんです。でも、日本にはそれこそチョンマゲとか城とか切腹とか、世界に類を見ない文化がちゃんとある。僕はそっちの方が画に力が出るし、カッコいいと思うんです。となると、やっぱり時代劇じゃないですか。さらに言うと、僕は設定が命の人間なんで、ちょっとSF調だったり、変わった設定の時代劇を撮ってみたいんです。あと、僕はほとんどやったことないけど、ラブストーリーね。あのね、実はこの間『冬のソナタ』を、初めて全部観たんですよ! 流行り出してからずっと家に置いてあったんだけど、どうも観る気がしなくて放置してたんです。ところがいざ観たら、昼メロみたいで、面白い(笑)。これがアジア全域で流行ったというんなら、こういうものをちょっと過激にしたラブストーリーを撮ってみるのもいいかなって。そもそも僕、意外とロマンチストなんでね(笑)。そういう自分の気持ち悪いところを思いっきり出した作品も、面白そうだと思うんですよ」

文業はちょっと減らそうと思ってる

構想を聞いているだけで、高須氏オリジナルの作品をひとつでも多く観たくなってくる。が、そちらの創作活動に取り掛かるとなれば、放送作家としての仕事量は減らさざるを得なくなるのでは? そのあたり、高須氏はどう考えているのだろうか。

高須 : 「もともと僕、こんなに放送作家として仕事をやれると思ってなかったんですよ。35歳でどんどん仕事がなくなっていくであろうと、ずっと悲観的に見てた。だから、放送作家は35歳で引退や、と思ってたんですね。でも、実際に35歳になったら『まだ仕事あるんか!』って。だったら、仕事をもらえる限りは続けようというスタンスだったんです。でも、せっかくやりたいことができたわけですからね。文業をちょっと減らして、その分の時間をそっちに充てたいな、と思ってます」