今年最大の話題作、松本人志の初監督映画『大日本人』が、開催中のカンヌ国際映画祭で現地時間の19日、公式上映された。

カンヌに降り立った松本監督

これまでに数多の伝説的コントを残してきた奇才の第一作とあって、製作発表段階から注目されてきた『大日本人』。タイトルと主演を松本人志が務めることしか明かされず、深い謎に包まれていた。6月2日の公開が間近になっても、出演者に竹内力、UA、神木隆之介、板尾創路が名を連ねることが明らかにされたのみで、試写会をまったく行なわないこともあり、ストーリーに関する情報は皆無だった。

そんなファンの飢餓感を煽りまくった作品が、ようやくというか、満を持してカンヌ国際映画祭の監督週間に公式上映されたのだ。松本監督が紹介されるとともに、盛大な拍手と歓声が飛び、フランスでも監督のファンが多数いることが伺えた。司会のオリビエ・ペールによって「すばらしいコメディアンによる映画『大日本人』は情熱的で、とてもオリジナルで独創的。オフビートなドキュメンタリータッチのリアリティを追求した作品です」と紹介を受けると、松本は「日本のスターです(笑)。誰も見たことのない映画になっていると思います。そして、一生忘れられない映画になっていると思います。新しいフランスの大統領も気に入ってくれると思います。楽しんでご覧ください」とボケながらも緊張した面持ちで返した。

そして上映が終了……。日本では未だ謎に包まれたままの本作だが、カンヌでは大喝采を浴びた。かなり気を張っていた松本監督もこれには安心したようで、上映後の会見では、初めて作品の内容に踏み込んで心情を語ってくれた。

無数のフラッシュが焚かれる

上映後の囲み取材

公式上映後、会場に集った30人の国内メディア向けに囲み取材が行われた。ここからは場面写真を交えながらその様子をお届けしよう。

Q カンヌに入られての印象はいかがですか?
A 普段のカンヌが分からないですけど、こんな感じなのかな、という感じです。

Q カンヌでの公式上映はいかがでしたか?
A 初めてのことで、こんなに緊張したことはないですね。一番緊張したというより、今までにない緊張で、次に映画をやってもこんな緊張はないでしょうね。ど真ん中に座って観るっていうのは緊張します。笑いが起きていたことは嬉しかったです。どうせならいろんな国での反応が見てみたいですね。

Q 次回作は?
A 今後のみなさんの反応次第だと思います。これで浮かれずに更に、というのはあるんですが。

Q 観客の反応については
A 思っていないところで反応があったことには驚きました。"ふえるわかめ"のところは意外に分かるんだなと思いましたね

Q もともと外国人の方に分かるだろうという算段はあったんですか?
A カンヌに出品するということも知らなかったので、完全に日本人向けです。アメリカよりはヨーロッパかなぁとは思いますね。キャスティングについては、割とすぐに決まったんですが、これは完全に日本人向けですね。こちらの人は役者さんのタレント性も分からないですし。

Q 浜田さんが観たらなんと言いますかね?
A 観ないんじゃないですか? 僕もシュレックみたことないですから(笑)

公式会見

現地時間の5月20日、約100人の外国メディア向けに取材の場が設けられ、矢継ぎ早に質問が飛んだ。

Q なぜ映画を作ろうと思ったのか?
A 映画を壊そうと思いました。誰もやっていないことをやろうと。

Q 政治的な意味は?
A 面白いことを追求するとそこに落ち着いた、ということですね。

Q 笑いの天才と言われていますが、『大日本人』の笑いのレベルは?
A 5段階だとすると2です。相当分かりやすくしています

Q 映画のアイデアは?
A 基本はテレビの仕事で、その先に何がある? と考えたときに、映画を撮ることにしました

Q 製作の期間は?
A 順撮りしまして、1年間くらいですね

Q とても日本的だと思いました。日本の監督で影響を受けたり、尊敬している監督はいますか?
A 基本的には誰にも影響されていないと思います。もちろん尊敬している監督もいますが、作品が好きであって、その方自身が好きであることはないですね。

Q 舞台挨拶時にいつもと違った松本さんの顔を拝見した気が致しましたが、カンヌ映画祭に出品されてみて、カンヌに対する意識の変化はありましたか?
A そうですね、作品に対して自信がある分、緊張も大きかったですね。

Q 日本のマスメディアがとても多く、北野武さんの後継者なのではという期待があります。その期待に対してどう思いますか?
A そうですね、武さんのことを意識していないと言ったら嘘になりますよね。確かにとてもリスペクトしています。でも、それだけに勝ちたいです。

Q いらっしゃる前と後で、カンヌに対する印象は変わりましたか?
A 少し欲が出たかもしれないですね。

Q 主人公は才能を持っているのに認められていないですよね。自画像的な面があると見受けられたのですが。
A そのとおりです(笑)。

現地での評判も上々で、世界各国から配給のオファーが届いている同作。日本が誇る才能を、日本人として確かめないわけにはいかないだろう。

『大日本人』は6月2日より松竹系で全国公開予定。