ホラー映画を作り続ける

――今回の作品ではふたりが得意とするホラー映画の要素を残しつつも、完全にコメディというか、ジャンル分け不可能な作品になっています。これは意図したものなんでしょうか?

『THE JUON/呪怨』(2004年)で全米映画興行成績1位を獲得した世界の清水監督。でも、チラシも自分で配ります

清水「日本映画界は、ホラー映画が流行ると、ホラー映画ばかり。ヤクザ映画の東映まで、ホラー映画を作る。そういう流れってあるじゃないですか? それを一過性のブームにしたくないので、ホラー映画は作り続けたいです。あと、大きな話をすると、新しいジャンルを作りたかった。ホラーなのに笑えるとか、恋愛モノなのに馬鹿馬鹿しいとか。こんなの見たことないという作品はなかなか企画が通らない。だったら自分たちでやろうと(笑)」

豊島「僕はひたすら、やりたい話をやったという感じ。イイ女に会って地獄に落ちるというブライアン・デ・パルマ風というかファム・ファタル(運命の女)モノをやりたかったんです。それを『幽霊VS宇宙人』の枠でやるとどうなるのかという感じです(笑)」

――清水監督のようにハリウッド映画も経験した監督が、低予算の厳しい条件でも、やりたい事は出来るのでしょうか?

清水「ハリウッドで予算が何億あっても、けっこう時間がなくてばたばたした中で撮影したりで、別の条件や規制も当然存在します。大変という意味ではこういう低予算映画とさほど変わらないんです。だから、問題を予算や規模のせいにするのは、作り手の言い訳になってしまうと思うんです」

――今回、清水監督は誰もが知っている日本の『四谷怪談』をモチーフにしていますね。

清水「ホラーをやってきた立場としては、いつか手を出してみたい素材でした。じゃあ、ここでやっちゃおうと(笑)。ホラー映画で人を怖がらせようというのは当然なんですが、見慣れてる人にとって、やり過ぎた描写は、笑いにもなるんです。ホラーでも何でも、特にシリアスなものって茶化し易いし(笑)。それに撮影現場で幽霊役の人が『よろしくお願いしまーす』て入ってきて、大の大人達が皆で『怖がらせよう』と必死になってる姿なんて冷静に見たら可愛いし(笑)。撮影中はいつも、いたずらしてる気分です。その裏の部分も含めて、ホラー映画の馬鹿馬鹿しい瞬間の空気を作品として見せたかった。それを本編中で出来ないかなと。幽霊が口から垂らした血を、自分でせっせと拭くみたいな(笑)」

本当にお岩さんが現代社会に登場しちゃうんです。しかも一般家庭のリビングに!

恐怖描写に定評のある豊島監督。最近は脱がないエロ描写でも注目を集めている

――豊島監督の作品では、直接的な性描写がないのに、とにかくエロい作品となっています。ホットパンツ姿の女宇宙人・メグがとにかくセクシーでした。

豊島「僕の才能じゃないですか(笑)? 失礼しました(笑)キスで人間の精気を吸い取るという宇宙人は『スペースバンパイア』(1985年 ※トビー・フーパー監督による宇宙人の侵略を描いたSFホラー)を意識しました。ファム・ファタルを考えるにあたり、やはり幽霊より女宇宙人が良いかと(笑)。でも、話の構造自体は古典怪談の『牡丹灯篭』にそっくりなんですよ。どんどん女にはまりやつれてく男。本人は恍惚としているんだけど、外から見ると悲劇なんだよと。日本の古典怪談をやっていたと。まあ、撮影中は意識してなくて、別のインタビューで指摘されて、気がついたんですけど(笑)。天才を映画で描くのは難しい。でも、ファム・ファタルはなんとか自分でも描けると思っていた。それが今回の作品で出来たので嬉しいです」

まったく脱がないでキスするだけなのに、有り得ないほどエロい女宇宙人・メグ