平和を愛し、体制を批判し続けたミュージシャン、故ジョン・レノンと、アメリカ政府との闘いを描いた映画『PEACE BED アメリカVSジョン・レノン』の舞台挨拶が9日、都内で行われ、ジョンの妻であるオノ・ヨーコが出席した。

来日したオノ・ヨーコ

戦争や暴力を憎み、心から平和を愛したジョンが、なぜアメリカという巨大な敵との闘いに身を投じなければならなかったのか……。『PEACE BED アメリカVSジョン・レノン』は、アメリカで圧倒的な人気を得ながらFBIに「危険人物」としてリストアップされ、国外退去命令まで受けていたジョンの知られざる闘いを描いた作品。TVインタビューなどの貴重な未公開映像や、当時のニクソン政権側の高官やFBI捜査官たちによる衝撃的な告白の記録などが織り込まれたドキュメンタリー映画だ。

ジョンとオノは、1969年に新婚旅行先のアムステルダムで「戦争をする代わりにベッドで過ごそう 髪を伸ばそう 平和になるまで」というコンセプトの元、ベッドで抱き合ったままメディアに登場する大胆な意見広告"HAIR PEACE BED PEACE"を発信。同作は、その当時の夫婦を描いた作品で、オノは「これが本当のジョンの姿。世界平和のため、あなたたちのために彼がやってきたことを知ってほしい。見ていて泣いてしまいました。苦労をいっぱい思い出しました」と感無量の様子だった。

「今の子供たちはすごく素敵だと思います」とオノは終始、ポジティブな発言を

また、社会と闘うジョンの姿を描いた映画をたくさんの若者にも見てほしいという気持ちを込めて「(日本の若者の"ひきこもり"現象などは)とっても面白いと思います。昔ね、禅の僧侶というのは引きこもってましたでしょ。お経というのは、誰も読まなくてもお寺がある限り、世界に影響を与えている。(それと同じように)ひきこもりしている子供たちをあまりけなさないでほしい。もしかしたら、彼らは現代の禅僧侶かもしれないですよ」と、独自の考えも語る。

「念力で世界を変えて生きたい、空と海によって全世界がつながっている」とオノ

舞台挨拶では観客たちが「WAR IS OVER!」と書かれたメッセージを掲げた。彼らは、1969年にジョンとヨーコが平和への願いを込めて、ロンドン、ニューヨーク、東京など、世界の都市に掲げた「WAR IS OVER ! IF YOU WANT IT」というメッセージに共感したという。その光景を目の当たりにしたオノは「どうもありがとう。映画館という雰囲気ではありませんね。うれしいです。ステキ! 本当にうれしいわ。ジョンもきっと喜んでいる」と、何度も「ありがとう」と笑顔で語りかけ、ピース・サインを高々と挙げて見せた。

この日、オノは報道陣のさまざまな質問のすべてに対して、大きなゼスチャーを交えながら答えていた

『PEACE BED アメリカVSジョン・レノン』では、全編において、ジョンの作品39曲が流れる。しかも、2曲は初公開である秘蔵音源が含まれている。「ビートルズの歌というのはpositiveでしょ、善を大事にしているんです。それに男性的な歌ではない。いつも女性をエスコートしてくれるような歌。だから世界的に受入れられていると思う」とオノ。最後もピース・サインをかざして、ジョンへの愛をアピールしながら、会場を後にした。

『PEACE BED アメリカVSジョン・レノン』は、TOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて全国ロードショー中