――毎年おやりになってらっしゃる仕事には、どのようなものがありますか?

「季節もののハガキと、あと毎年カレンダーは必ず作っています。もう15年くらいになりますね」

2008きりえやカレンダー「まちのおおねずみ」より、1月「五位」、3月「視線」、7月「集会」
(C)KIRIEYA

――ハガキは、首都圏のいろいろなお店に置いてあるそうですが……。

「最初、飛び込みで置かせていただくようになったポストカードの専門店さんがあるんです。そのお店の方がいろんなところに営業して卸すという仕事をなさってまして、それで僕のハガキも徐々にこの3年くらい、首都圏のいろんなお店に置いていただけるようになりました」

――そのほかには?

「春の展示に使ったんですが、紙のブックカバーを100種類作ったりとか」

――ブックカバーって、本屋さんに行くと「カバーおかけしますか」っていうアレですか。100種類も作ったんですか。

「ええ、壁一面それで埋めました(笑)。そのときは、本屋さんのカフェラウンジでの展示だったので、本にちなんだものをやろうということで作りました」

ブックカバーの「no.58 / つかずはなれずの書皮」と「no.83 / じっとしていられない人の為の書皮」
(C)KIRIEYA

――今回、竹書房さんの「まんがライフ」12月号(10月17日発売)に掲載された『ティックの大冒険』も、以前から描きためてこられたモチーフのひとつですね。

「もとは、ずっと以前から作製してきたシリーズで、これを今回、掲載に合ったフォーマットに合わせて作り直して、色も着けました」

1993年9月頃制作の『ティックの大冒険』より「かまって」。
「あー、子犬だー」「かわいー」「でもまん中の子、犬じゃないみたーい」「そうかなー」

同作より「とって」。
「あー、おしい」「でも今、何かそこ動かなかった?」「気のせいだよ」

同作より「ねこ」

――竹書房さんの「まんがライフ」は毎月17日発売だそうですが、これを機会に『ティックの大冒険』を連載できるようになるといいですね。

「いや、これすごく手間がかかる仕事なので、毎月連載だと死んじゃいます(笑)。というか、ほかの仕事をしている時間が全然取れなくなっちゃうので、どうしても隔月ぐらいになってしまうでしょうね。本当は毎月作りたいんですけど」

『ティックの大冒険』が掲載された竹書房の「まんがライフ」12月号表紙。右下に注目
(C)竹書房

竹書房「まんがライフ」12月号「かまって」(左)と「よせて」(右)
(C)竹書房

――これだけ作品のストックがあると、それをまとめた形で出版されたり、ということはありませんか?

「もちろん多くの方に見ていただきたいので、出版社に持ち込みをすることはあります。けれども、例えば絵本の所に行くと、君のはページ数が伝統的な絵本のフォーマットと合わないとか、作品の内容とはべつのことで断られてしまったり、あるいは今の流行の絵はこうだから、君のはコントラストが強すぎて扱えないとか、主にマーケティングをもとにしたお話をされることが多かったですね。今はそこで葛藤することに時間をかけるより、まず自分のできる範囲で、自分の世界をお客さまにお届けできればと思っています。そうしていくなかで、いいお話がいただければいいな、と思っています」

――今後、広げていきたい作品の方向性についてうかがえますか?

「これまでの作品というのは、1枚の絵の中に物語性を込めた形のものが多かったんですが、今後はその特徴を残しつつも、もうちょっと連続した形のものをやりたいですね。例えば、それが物語になっているとか。一瞬だけをとらえたものではなくて、時間軸の方向に広げたような、そうやって物語を紡いだりとか」

――例えば、今回掲載された『ティックの大冒険』のようなものですか?

「そうですね」

――これも連続したコマで構成されていて……。

「ええ、この作品の場合はページの最初に1枚の大きな絵がありまして、そこからちょっとこう、その一瞬から時間軸を広めにとって、その後の後日談みたいなことで4コマを構成する。1枚の絵から派生した物語が4コマ続くという……」

――一連の時間的な流れがあって、最後にオチがつく、みたいな(笑)。

「そうですね(笑)」

――本日は、個展でお忙しい中、どうもありがとうございました。

(写真: 中村浩二)