――切り絵というと、なんとなく和風な響きがありますが、作品を拝見しますと必ずしもそういうものばかりではありませんね。
「そうですね。僕の場合は切り絵という技法を使っているから、という理由でモチーフを選ぶことはありませんね」
――今後も、切り絵という技法を究めていかれるのでしょうか?
「今、実際に切り絵をやっているにもかかわらず、必ずしも切り絵がやりたいというのではないんです。たまたま自分がイメージする世界を形にするのに、僕の場合は切り絵という技法が一番合っているという感じですね」
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――切り絵という技法のどんな点が、ご自身でおやりになりたいことにかなっているとお考えですか?
「作業工程上、切っていくと最終地点というのがすごくはっきりと定まっているわけなんですね、切り絵の場合は。下絵ができてしまえば、この穴とこの穴を抜けば終わり、なんです。例えば、以前ちょっとやっていたんですが、色を塗り重ねていく油絵の場合ですと、いつまでも塗っちゃうタチなんですね、僕は」
――そういえば、学校で美術の先生に教わったことがあります。自分で納得した時が、描き上がりだと。
「そこがつかめないんですよね。色とかを足していく作業の場合は。彫刻でいうと粘土を盛っていく作業ですよね」
――切り絵の場合には、数学みたいに、答えがひとつに決まるわけですね。
「最初、頭の中に絵が浮かんで、それを形にしていくんですが、鉛筆で描いて、筆で描いて、さらにカッターで切ることで最終的な線が定まるという。イメージの一番照準が合うのが切り絵なんですよね」