――総務省の「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」は、情報通信法の中間取りまとめ案で、ネットコンテンツなどを「公然通信」と分類し、違法・有害情報などを規制するための「共通ルール」を定めるとしていますが、この案についてはどう思いますか。
現在の放送法のような、あるべき姿を明示する「基本法」のようなものはあっていいと思います。ただ、具体的な規制となると、放送法のように自主的な規制を促すのがいいのではないでしょうか。
ただ、放送業界とインターネットの世界で決定的に違うのは、「アウトサイダー」の存在です。放送業界の事業者は全て把握できますが、インターネットの世界では事業者が多種多様で、大きな会社もあれば2~3人でやっているような会社もあり、規模もさまざまです。また、海外にサーバを置いている事業者も多く、いくら日本で基本法をつくっても、実際に守る人は少ないということになりかねません。
実際の事業者の数に対し、日本インターネットプロバイダー協会に加盟する事業者の数は、10%程度にすぎません。プロバイダ事業や掲示板の管理は、本来人手とお金をかけて行うべきであり、違法・有害情報などはその都度消していくべきものです。それにもかかわらずそのような情報が氾濫するのは、「放置すればするほど儲かる」というような状況のせいです。
今年10月、違法・有害情報への国際的な対策を行っているINHOPE(International Association of Internet Hotlines)がベルリンで開いた総会に参加しましたが、世界中に会員が存在するソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)であるMySpaceの代表は、約1000人もの体制を築き、自社サイト上の違法・有害情報を監視していると話していました。
また、「モバゲータウン」を運営するディー・エヌ・エー社長の南場智子氏は、自らが同サイト上を監視する委員会の委員長となり、100人体制でチェックしていると話していました。同社は、違法・有害情報をチェックするソフトウェアも用いて、常に自社サイトの状況を把握しようとしているそうです。
――ネット事業者の自助努力が最も大切というわけですね?
そうです。MySpaceやディー・エヌ・エーのように、事業者がしっかりした意識を持って管理しなければ、あるべき姿を示すだけの基本法が、罰則付きになる可能性が増えてしまうのです。人力だけでは無理というのであれば、ソフトウェアなどの技術を使うのもいいでしょう。
「ネット事業には手間がかかる」ということを事業者が認識することから、違法・有害情報対策は始まるのだと思います。