総務省の「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」が今年6月に公表した「情報通信法(仮称)」の中間取りまとめ案に対する第3回の公開ヒアリングが4日開かれ、日本民間放送連盟(民放連)や日本放送協会(NHK)など、4つの放送関連事業者・団体が意見を述べた。この中で民放連は、現在の放送に当たる特別メディアサービスのコンテンツだけでなく、インターネットや新聞を含む全てのコンテンツの内容に対する規制に対して断固反対する姿勢を示した。

同ヒアリングでは、民放連から放送計画委員会委員長の君和田正夫氏、同委員会特別小委員会委員長の城所賢一郎氏、同小委員会委員の前川英樹氏の3氏、NHKから理事の中川潤一氏、日本ケーブルテレビ連盟から理事長代行・専務理事の石橋庸敏氏、常務理事の金田英郎氏の2氏、衛星放送協会から専務理事の林尚樹氏、理事・総務委員長の須田真司氏の2氏が参加した。

有害コンテンツ規制は関係事業者に委ねるべき

民放連は、中間取りまとめ案に示されたコンテンツ、プラットフォーム、伝送インフラの3層構造からなるレイヤー型法体系について、「その必然性や効用が十分に説明されているとは言い難い」とし、「現行の法体系が国民生活や産業経済に及ぼしている具体的な不利益を含め、より合理的な説明が必要」と述べ、反対する意向を示した。さらに、「基幹放送である地上波放送は、電波法に基づく施設免許として放送免許を付与され、番組の内容は放送法に基づいて放送事業者が設けた番組基準や番組審議会で自主的な規律を行っているといいう二重構造をとっている」とし、こうした構造が行政によるコンテンツへの直接的な介入を防いできたとの立場をとっている。

これに対し、通信・放送の総合的な法体系に関する研究会構成員で一橋大学名誉教授の堀部政男座長は「通信業界ではレイヤー型法体系に賛成する企業もあるが、どうして民放連は反対するのか」と質問。民放連側は、「通信は言ってみればコンテンツを運ぶ仕事であり、産業政策的な市場の拡大やボトルネックの排除をしてほしいという発想から賛成しているのではないか。これに対し、放送業界は自らコンテンツを制作し情報発信しているという点が異なる」と説明していた。

さらに「レイヤー型体系におけるコンテンツレイヤーでは、コンテンツを社会的影響力の大小により(特別・一般メディアサービスおよび公然通信に)分類するとしているが、影響力の大小の判断は誰が行うのか。そうした判断が全てのメディアのコンテンツに及び、規制の対象となる可能性がある。我々は現在の基幹放送にあたる特別メディアサービスのコンテンツだけでなく、インターネットや新聞を含む全てのコンテンツに対する規制に反対している」と述べ、社会的影響力を基準としたコンテンツの内容規制に対し、異議を唱えた。

また、民放連側は、「放送と通信の融合への過度な傾斜はあってはならず、放送が果たす文化的な役割やジャーナリズム機能を基本理念として位置づけ、基幹放送の存在を制度上積極的に位置づけるべきだ」と主張したが、研究会構成員で千葉大学法経学部教授の多賀谷一照氏からは、「これからは電波法では縛れない基幹放送並みの影響力を持ったメディアが出てくる可能性があるのではないか」との疑問を表明。

民放連側はこれに対し、「現在の基幹放送には、県域をエリアとして地域の隅々までサービスを行うという社会的役割や、地域文化を発信するという文化的役割がある」と述べ、その意義を強調。また、「中間取りまとめ案では、地上波ラジオ放送やBS放送への言及がないが、これらの社会的役割や影響力を踏まえ、地上波ラジオ放送を基幹放送、BS放送を準基幹放送として位置づけるべき」と述べた。

また、携帯サイトで知り合った者同士による殺人事件などで広がりを見せる有害コンテンツ規制の論議に関しては、「有害コンテンツを取り締まれないのは、法律が足らないというより、その実効性が欠けている部分に問題がある。伝送路資源に有限希少性のないインターネットには、原則として規制をかけるべきではない」とし、有害コンテンツの排除は、関係事業者による自主的な取り組みに委ねるべきであるとの認識を示している。