――今、この「声優口演」ということで、声優さんが、お客さまの前でライブで演じられることの魅力というのは、どのあたりにあるとお考えですか。
「今までね、声優さんていうのは影の存在と思われてきたんですね。顔が出ないということが第一で。『ひょっとすると、スティーブ・マーティンがしゃべってるんじゃないかな』と思わせることが、ある意味で正論だと思ってたんですよ」
――昔、吹き替え番組を観たある人が、「日本語のうめぇ外人だなぁ」って言ったという……。
「そうそう。小池朝雄さんの『刑事コロンボ』の『ウチのカミさんが……』とか、『この人じゃなきゃ』っていう。向こうの主演のピーター・フォークじゃなくて、『この人がやってくれないと困るんだ』っていう状況が。もう一つ刑事もので『刑事コジャック』、テリー・サバラスの。これなんか森山周一郎さんの声が定着していて、『あの人の声じゃなきゃ許せない』って人がいたりして。それが本当なんですよね。そうしなきゃいけないんですけども、今まで影に隠れていたものを今度はライブでその雰囲気を味わっていただくことによって、さらにテレビにもう一度返っていただくと」
――声優さんの側でも、意識して出ないようにしてこられた方もいらっしゃいますよね。
「『なるべく出さないほうが、観てる人は親近感が湧くのかな』と。『映像とあまりにも違いすぎるじゃないか』『なんであいつがスタローンなんだ。ギャップがありすぎるよ』ということを感じさせないように今までずっと来たんですけども、こういうライブ展開をすることによって、『あ、あの人がやってるんなら、テレビ観てみよう』というふうにしていきたいなあ」
――それでは最後に、これからいわゆる声優の道を志そうという方々に、なにかメッセージをいただけますか。
「これはもうものすごく沢山あるんですよ。その中で最近、非常にアニメを希望される方が多くて『アニメーションの声優になりたい』。これ、私たちの時代にやりたかったことと全然テーマが違うんです。『なりたい』っていうんだけれども、『一瞬でも輝けばいいんだ』っていう考え方。つまりアニメのアイドルになって、みんなにチヤホヤされて『それが夢なんだ』っていう考え方。それも勿論あるかもしれませんけども」
――いまの声優業界は昔のアイドル業界に似ているところもありますね。
「俳優という職業を選んだら『これは生涯掛けて』と思ってやる。もうどんなに飯が喰えなくても、『これが好きで好きでたまらないからやる』ということが、一番の基本だと思うんですね。特に女性の場合はある一定の年代を越えると、もう新陳代謝の激しい世界ですから、だんだん注目されていかなくなっちゃう。いつかはそういう時代がくるでしょう。でも、注目されていかなくなった時代から花が咲いてくるんですよ、ということをぜひお忘れなく」
――昔の声優さんは遅咲きでしたものね。
「やるんだったら、生涯続けてほしい。その覚悟が必要。生涯やっていくためには、この仕事が楽しくてしょうがないと思うこと。重複するけど、お題目みたいに言い続けたい。たくさん本を読んでください。たくさん絵を見てください。たくさん音楽を聴いてください。隣の人の話をよく聞いてください。基本的なことを沢山やってください。お友達ともよくコミュニケーションしてください。それから基本は、『人が楽しんでくれればいいなあ』『人がうれしくなってくれればいいなあ』というものを常に持っている。だから『あの野郎がやってるからイヤだ。あの野郎、ブッ殺してやる』という感性では、俳優は育ちません。やっぱり、自分のパートナーとか自分の演技する相手を温かく見つめながら、自分も育んでいく……ということが大切だと思うんですよ。一瞬のことで、花開いて散るのでは困ります。生涯、毎日毎日が勉強で『ああ、どうしてオレは、こんなにヘタなんだろう』というのを常に思いながら、続けて行くということを意識して頂きたい」
――本日は貴重なお話をどうもありがとうございました。