ビジネスや生活にデジタルテクノロジーが浸透していくなか、地域に根ざしたビジネスを展開する事業者や、地域活性化を担う地方自治体において“データ利活用”のニーズが高まっている。特に小売業や観光・宿泊業など顧客との接点が多い業種では、データを活用した顧客体験(CX/Customer Experience)の向上は最優先のミッションとなっている。NTT東日本が地域課題の解決を図るために立ち上げたREIWAプロジェクトが提供する「CXソリューション」 は、各地域事業者と共創により地域産業の活性化、顧客体験向上に資するデータ利活用環境の構築を目指している。今回は、NTT東日本 ビジネスイノベーション本部 ソリューションアーキテクト部の堺 伸治氏に、CXソリューションを用いた取り組みについて話を伺った。

カスタマーデータの活用が、新たなビジネス、新たな体験を生み出すための鍵となる

働き方改革やコロナ禍などの影響により、企業と顧客との“接点”は大きく変化した。従来の対面型コミュニケーションに制限がかかるなかで、モバイル、インターネットを用いたコミュニケーションが急増。コロナ禍が収束傾向にある現在においても、リアルとウェブ(デジタル)が共存するオムニチャネル化は加速している。アフターコロナ/ウィズコロナ時代に突入し、多くの企業がデジタルを活用した新規ビジネスを模索している状況のなか、その先にいる顧客に新たな価値を提供するカスタマー・エクスペリエンス(CX)の重要性は高まり続けている。NTT東日本でCXソリューション事業に携わるビジネスイノベーション本部 ソリューションアーキテクト部の堺 伸治 氏は、小売業や観光・宿泊業、地方自治体といった、多種多様な顧客との接点を持つ企業・団体におけるデータ利活用の現状について次のように語る。

「デジタル技術を活用して新たなビジネスモデルの創出を図る、いわゆるDXの取り組みは、コロナ禍を機に一気に加速しました。小売業を例にすると、店舗での接客が制限されたことでオンラインショッピングが普及するなど、顧客の価値観も大きく変化。多様化する顧客のニーズに対応して新しい体験・価値を届けるため、DXに取り組む企業は増加傾向にあります。そこで重要になってきたのが、顧客との接点を介して収集・蓄積されたデータの利活用です」(堺氏)

リアルからデジタルまでに広がった顧客との接点を通じて、顧客にまつわる、さまざまなデータが得られるようになった。それらのデータを集約・蓄積し、顧客体験の向上にこれから利活用していきたいと考えている企業・団体は多く存在している、と堺氏は現状を分析。「NTT東日本では、こうしたカスタマーデータ活用における課題を解決するCXソリューションを開発しており、地域産業に携わる企業や自治体と共創しながら、新たな価値の創出を目指しています」と話を展開する。

戦略策定から組織作り、効果の検証までを一気通貫で支援する共創型のCXソリューション

“地域の未来を支えるソーシャルイノベーション企業”を目指して事業を展開するNTT東日本では、社内外のICTアセットを活用して地域社会の課題を解決する「REIWAプロジェクト」を2019年よりスタート。同社が開発したサービスを提供するだけにとどまらず、企業や自治体と密接に連携しながら課題解決のアプローチを具現化していく共創型のソリューションも展開している。CXソリューションもその1つで、同社の技術力をベースに、企業や自治体とのコミュニケーションを通じて地域社会の活性化を推進していく取り組みとなる。

CXソリューションの基盤となるCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)は、同社の通信インフラで培った技術と経験が惜しみなく投入されたREIWAプロジェクトの「地域エッジクラウド」上で構築することで、機密性の高いカスタマーデータを安全に活用できる環境を実現できる。

「リアル、デジタルを問わず、顧客との接点を通じて取得したデータを集約・活用するための基盤となるのがCDPです。セキュリティと利便性を担保しながら、これまで散在していて有効活用できていなかったカスタマーデータを扱えるようになります。REIWAプロジェクトにて提供する地域エッジクラウドは、閉域接続することで安心かつ安定性が高い環境を提供可能です。将来的には CXソリューションもこの環境にて提供することを検討しています。実現すれば、セキュアな環境下で リアルタイムに多種多様なレコメンドを運用できるなど、さらなる顧客体験向上につながるデータ活用が期待できます」(堺氏)

堺氏は、顧客体験向上の観点からDXに取り組む企業や団体が直面しやすい課題として次の3つを挙げる。

1:カスタマーデータをはじめとした機密性の高いデータを管理・活用する環境の構築やそれを実現するノウハウの獲得
2:推進役となる人材の確保や、それを継続運用する体制の構築
3 :個別の企業、自治体だけのデータだけでなく、多種多様なデータ連携による新しい価値の創出のための戦略立案

同社のCXソリューションでは、単にデータプラットフォームを提供するのではなく、計画・戦略の立案から体制の構築、データを価値した新たなビジネスの創出までを、企業との共創で作り上げていく。

「CXソリューションの取り組みは、大きく3つのフェーズに分かれています。まずは顕在化した課題に沿って、どのような計画・戦略で進めていくべきかを検討するフェーズ。次に実際にカスタマーデータを利活用するための仕組みを導入し、人材の確保や組織作りを含めてビジネスを立て付けるフェーズがあり、さらに集約したデータや得られた成果を、次の取り組みに活かしていくフェーズへと続いていきます。いわゆるコンサル的な支援から、システムの提案や導入支援まで、 お客様となる企業、自治体のDXをトータルで支援していきます」(堺氏)

実際、同社のCXソリューションに注目する企業は増加しているという。カスタマーデータを利活用して顧客体験向上を図りたいが、何から着手すればよいのかわからないという企業はもちろん、すでにデータ利活用の仕組みを構築しているが、それが最適解なのか判断できないでいる企業からの相談も増えていると堺氏。その要因として、各地域に通信インフラを構築して事業を展開している同社への信頼感と、地域企業・自治体との共創によって作り上げていくソリューションであることを挙げる。

「データ利活用の観点におけるCXソリューションの強みとしては、企業や自治体の皆様が、接点を持つ顧客の動きや考えを“可視化”できることに加え、これまで形になっていなかった業務のノウハウまでもデータ化して、ノウハウの水平展開をできるところにあると考えています。さらにNTT東日本のCXソリューションでは、データ利活用の効果を検証できることもポイントです。運用にこぎつけた段階で終わりにするのではなく、お客様の事業・業務がよりよい方向へ進むための一手を打ち出すための支援を、運用後も継続的に行っています」(堺氏)

さらに同社では、膨大なカスタマーデータを扱うにあたり、AI技術の活用も見据えた提案を行っている。「例えば、小売業では問い合わせ対応にAIを活用することで、顧客体験の向上、及び従業員の業務効率化を図るといった提案もしています」と堺氏は語り、こうしたAI活用の道筋を丁寧に説明しながら、AIを効果的に使いたい企業や自治体と二人三脚で、最適なアプローチを模索してきたいと展望を口にする。実際、同社のREIWAプロジェクトでは、製造業向けのAI外観検査ソリューションも展開しており、昨今の技術トレンドとして注目が高まっているAIに関しても積極的に提案している。 AI技術を用いた地域課題の解決に取り組んでいるという。

「地方自治体においても、人の流れをAIで解析し、観光や防災といった領域で活用するといった取り組みを検討されるケースは増えてきています。当然ながら、地域の観光や防災は自治体だけでなく地元の企業・団体などとも携して取り組む必要があります。REIWAプロジェクトのCXソリューションは、こうした企業と自治体の連携という観点でも有効と捉えており、両者の間に立って、従来のCXソリューションの枠を超えた新たな価値を提供し、地域活性化に向けて努力していきたいと考えています」(堺氏)

今後も地域の企業や自治体と共に、地域社会の課題解決に向けた取り組みを続けていく

ここまで述べてきたように、企業に蓄積されるデータは増加の一途を辿っており、増えすぎたデータをコントロールできず、自身のビジネスに活用できていないという企業もめずらしくないのが現状だ。 データ利活用の仕組みを導入してみたものの、現場に定着せずに形骸化しているケースも多いだろう。地域のステークホルダーと共創し、データ利活用をフックに地域活性化を目指すNTT東日本のCXソリューションは、まだ駆け出したばかりの取り組みではあるが、地域の企業・自治体に寄り添いながら、データを起点とした顧客体験向上に挑んでいる。堺氏は、データ利活用に取り組む企業・自治体の担当者に向けて、次のようなメッセージを送る。

「カスタマーデータを利活用するための製品・サービスは、さまざまなベンダーから多数リリースされており、どこから着手すればよいのかといった部分も含め、選定に悩まれている企業・自治体は多いかと思います。NTT東日本では、地域のお客様と共に、さまざまな実証実験を通じてソリューションを作り上げていきたいと思っていますので、もしDXや顧客体験向上の取り組みに課題をお持ちでしたら、お気軽にご相談いただければと思います」(堺氏)

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