安全・安心に利用できる環境の整備がクレジット業界に求められる中、新型コロナウイルスの感染拡大を背景にキャッシュレス決済はより衛生的な決済手段として期待されています。
今回は、日本クレジット協会の副会長でもあるユーシーカード株式会社の中西社長に新しい時代に求められる企業像、新たな取り組み等についてお話を伺いました。

中西 章裕(なかにし・あきひろ)
1962年4月20日生
1985年 4月 株式会社第一勧業銀行(現 株式会社みずほ銀行)入行
2012年 4月 株式会社みずほコーポレート銀行 執行役員営業第八部長
2013年 7月 株式会社みずほ銀行      執行役員営業第八部長
2014年 4月 同行 常務執行役員営業担当役員
2016年 4月 株式会社みずほフィナンシャル・グループ 常務執行役員
       リテール・事業法人カンパニー特定業務担当役員
       兼 株式会社みずほ銀行 常務執行役員
       リテール・事業法人部門共同部門長
2017年 5月 みずほビジネスサービス株式会社 代表取締役社長
2020年 4月 ユーシーカード株式会社 代表取締役社長(現任)
2020年 6月 一般社団法人日本クレジット協会 副会長(現任)

川村 美保(かわむら・みほ)
埼玉県出身。恵泉女学園大学人文学部英米文化学科卒。2010年4月からTBSラジオキャスターとして活躍。その後、琉球朝日放送報道制作局アナウンサーからフリーに。琉球朝日放送「速報! めざせ甲子園!」メインMC、テレビ朝日「ナニコレ珍百景」リポーター、日本テレビ「有吉反省会」出演、「大沢悠里のゆうゆうワイド」リポーターなど、様々なメディアで活躍中。

クレジット業界を取り巻く環境について

「指静脈認証」決済サービスの提供でより安全・安心なキャッシュレス社会の実現に貢献

川村:新型コロナウイルスの影響により、国内だけでなく全世界での個人消費が落ち込み、経済全体が大きな打撃を受ける中、より衛生的な手段としてキャッシュレス決済が注目されています。このような状況を踏まえ、業界の現状についてどのようにお考えですか。

中西:新型コロナウイルスの拡大は、経済に大きな影響を与え、我々は「新しい生活様式」を実践する必要があります。

この「新しい生活様式」は、日本のデジタル化を加速させるきっかけとなっています。通信販売、電子決済の利用の推奨は、キャッシュレス決済利用者を増加させ、また、最近では医療・公共サービスのオンライン化にも進展してきています。生活様式の変化、デジタル技術の進化は、時間と場所を超越するオンライン取引を拡大させ、同時にキャッシュレス決済も拡大させていきます。

クレジットカードはこれまでも使い易さ、安全性から消費者に支持され、日本のキャッシュレス決済の中心に存在してきました。経済産業省の主導で実施した「キャッシュレス・ポイント還元事業」の追い風を受け、電子マネー、コード決済等、様々なキャッシュレス決済の普及が進んでいますが、2019 年の民間最終消費支出との比較における日本のキャッシュレス決済比率は26.8%、うちクレジットカードは約9 割を占めており、これからもキャッシュレス決済の主役であることに変わりはありません。

我々クレジットカード業界はこれまで同様に、安全・安心な決済手段を提供し、消費者利便性を向上させることにより、消費を喚起し、日本経済の回復に貢献していくことが期待されています。デジタル化が進み、益々キャッシュレス決済の需要が高まる中、クレジットカード業界は必要不可欠な社会インフラとしての役割を果たしていくことが重要と考えます。

川村:キャッシュレス決済のさらなる普及においては、より利便性が高く安全な認証手段として、「生体認証」への期待が高まっています。その中で御社は、「指静脈認証」の決済への取組みをされていますが、その取組みの背景、実証実験を踏まえた今後の展望についてお聞かせください。

中西:より利便性が高く安全な認証手段として「生体認証」への期待が高まる中、当社では、複数ある生体認証方式の中でも、より決済分野に適した認証方式として「指静脈認証」に着目し、2019 年12 月より、株式会社日立製作所と協働し、生体情報を暗号化して登録・照合する「公開型生体認証基盤(PBI)」を活用した、指静脈認証によるキャッシュレス決済の実証実験を開始しました。

2020年3月まで実証実験を行い、利用者から好反応を得られたことから、改善を加え商用化し、2020年12月に1stユーザーとして製造業の工場内食堂(Cafe)への導入に至りました。現在、第2号案件となる企業様への導入に向け取組中です。

コロナ禍では、財布もカードもスマートフォンも使わない非接触決済手段として、「指静脈認証」決済への期待・ニーズは確実に高まっていると感じており、今後もさまざまな分野において「指静脈認証」決済サービスを提供し、より安全・安心で便利なキャッシュレス社会の実現に貢献したいと考えています。

川村:改正割賦販売法が4 月に施行され、利用者が安全・安心に多様な決済手段を利用できる環境を今まで以上に整備することが必要となります。今後、業界として取り組むべき課題についてお聞かせください。

中西:クレジットカード情報の適切な管理、不正利用対策の実施を義務付けた前回の改正割賦販売法の施行から2年が経過し、日本のセキュリティレベルは着実に向上しています。対面取引では、共同利用端末のIC化も進み、偽造カードによる不正利用は減少しています。しかしながら、非対面取引ではEC市場の拡大に伴い、偽の決済画面への誘導によるカード情報の詐取等、新たな手法の増加もあり、番号盗用による不正利用は増加の一途を辿っています。2019年の非対面取引での被害額は223億円、2020年は新型コロナウイルスの影響もありましたが、2019年と変わらず223億円と高止まりしている状況です。
我々クレジットカード業界は、この増加を食い止めるべく、クレジット取引セキュリティ対策協議会が取りまとめる「クレジットカード・セキュリティガイドライン」に則り、セキュリティ対策を更にレベルアップしていくことが求められています。

「クレジットカード・セキュリティガイドライン」では、本人認証、券面認証、属性・行動分析、配送先情報の活用の4方策が非対面不正利用対策として掲げられ、カード会社、加盟店にて対応が進められておりますが、必ずしも期待する効果が得られておらず、クレジット取引セキュリティ対策協議会傘下の非対面不正対応WGでは、更なる実効性のある対応策や基準等の見直しが検討されています。

技術が日進月歩で進化し、不正利用の手口も日々変化する現状では、足元の被害抑制策の検討も重要ですが、一歩先を見据えた対策の検討も並行して行うこともまた重要であり、中長期的な視点に立った被害抑制策を検討していく必要があると考えています。

ユーシーカードとしての取り組み

創立50周年を迎え、「新UC」として新しい時代に求められる企業へ

川村:御社のこれまでの歩みをお聞かせください。

中西:当社は、1969年に創業以来、UCブランド及び、会員、加盟店やUCブランドカード発行カード会社であるブラザーズカンパニーの発展に努めています。

2019年6月23日には創立50周年を迎えましたが、次の50年に向け、これまで以上にお客さまのニーズにお応えできるよう、様々な決済サービスの提供を通じ、お客さまの利便性向上と日本社会における安全・安心なキャッシュレス化の推進に努めて参ります。

川村:2020年4月に社長に就任されました。今後の御社の展望についてお聞かせください。

中西:2019年10月に、当社は提携企業と協働してきたプロセシング事業を内製化し、2020年3月にはみずほ銀行の100%子会社となり、フルラインのキャッシュレスサービスを提供する「新UC」として再スタートしました。

2020年4月の社長就任以来この1年間は、新しい時代に則した組織の再編・新設、業務の合理化・デジタル化、営業部門や商品開発力の強化等、社内構造改革に取り組み、事業基盤の足固めをしてきました。

足元、特に注力しているのが、BtoBの分野です。どの企業においても、経費精算や商取引決済の合理化ニーズは高く、そこにクレジットカードを活用することで、社内経費処理の簡素化、経費の透明性、更に商取引での活用ケースでは、決済までの相応の期間が、キャッシュフロー改善にも繋がり、お客様から大変喜ばれています。最近では社内システムと連動させての導入を希望する企業が増えてきており、法人取引に強いみずほ銀行と連携しながら推進しているところです。

企業間の商取引においてクレジットカード決済を活用する際は、カードの現物を発行することなくカード番号のみを発行します。海外では既に相当進んでいますが、国内での利用対象は、デジタル広告、通信費等に限定されており、今後拡大の余地があろうかと考えています。企業間決済の代表的な手形取引も、経済産業省から2026年を目途に廃止する提言がなされており、その代替手段としても、でんさいネットの活用とともに、有効となりうると期待しています。

また、プロセシング事業にも力を入れています。他社が展開している会員事業や加盟店事業に係るシステムや事務等の業務の受託です。当社は、提携先と共同開発した最新鋭の基幹システムを保有しています。クレジットカードに関するノウハウ・知見を備えた人材が揃っています。この1年間で、プロセシング部門の業務を大幅に見直し、合理化・デジタル化を進め、価格競争力の高い業務受託が可能となりました。発展を続けるキャッシュレス社会を、黒子役としても、しっかりと支える事業基盤を備えることが出来たと確信しています。

川村:職場環境の改善への取組みについてお聞かせください。

中西:「スピード&コミュニケーション」をテーマに、上司・同僚・部下とのコミュニケーションを大事にすることを徹底しています。悪い情報ほどスピーディに報告・対処し、毎日が充実した、仕事にやりがいを持てる職場環境作りに励んでいます。組織活性化の一環として、昨年5月に、全社員を対象に「特別提案制度」を実施しました。自分の仕事とは全く関係のない新しいビジネス提案も多数あり、いくつかの案件を採用し、提案者には社内兼業を認めて自ら取り組んでもらい、実際に実用化に至ったものが何件かあります。

また、昨年12月には、経営と管理職層によるラウンドテーブルを開催し、今後の決済ビジネスの在り方や当社の成長戦略について、熱い議論を繰り返し行う等、社員とのコミュニケーションを重ね、一体感ある組織の醸成にも努めています。

川村:コロナ禍をきっかけに、社内での働き方に変化はありましたか。

中西:テレワークや服装の自由化は数年前より導入しており、営業/企画部門では新型コロナウイルス感染拡大以前から働き方改革の観点から在宅勤務の体制を整備してきました。一方、オペレーション部門では、現物を取り扱うことやシステム的な制約により4月の緊急事態宣言時にはほとんどの社員が出社しなければならない状況でした。

その後、業務の合理化を目指し、業務フローの見直し・整備や、デジタル化を図るとともに、人材の面でも多能化を進めて、1人2役・3役を可能としたことで、業務の相互補完が可能となり、現在、オペレーション部門でも2割程度の職員の自宅待機が可能となりました。待機中の社員には、更なる多能化に向けた自己啓発を実施いただいています。

時差出勤は、社員の声を取り入れ、7:30~10:00の間、15分ごとに設定しており、ワークライフバランスの向上に努めています。

また、カード利用明細のWEB化の促進や加盟店事業での各種事務工程の自動化(ワンストップ化)など、サステナビリティへの取組みにも注力しています。

日本クレジット協会が果たす役割

より一層のセキュリティ強化を支援し日本経済の発展に貢献を

川村:最後に、中西様はユーシーカード株式会社の代表取締役であるとともに、日本クレジット協会の副会長でもいらっしゃいますが、クレジット業界が果たすべき役割、また協会が果たす役割について協会副会長のお立場からお考えをお聞かせください。

中西:クレジットカード業界は、大きな転換期にあります。FinTech事業者等のクレジットカード業界への参入等を踏まえた改正割賦販売法の施行、新型コロナウイルスの拡大を踏まえた事業環境の変化等、業界の様相は日々変わりつつあります。

クレジットカード業界はより一層成長、発展していくとともに、決済手段を通じて消費者へ利便性を提供していく必要がありますが、その前提としてこれまで以上に安全・安心な環境づくりが必要不可欠です。

そのためには、先ほども申し上げた「クレジットカード・セキュリティガイドライン」や自主規制規則等で示すセキュリティ基準、対策により多くの事業者が対応する必要があります。

日本クレジット協会には、クレジット取引セキュリティ対策協議会の事務局として、また認定割賦販売協会として、各業界関係者へ正確に周知を行い、理解、実践の促進を行う事が求められていると思います。

それらの活動を通して作られた安全・安心な利用環境において消費者へ利便性を提供することで、消費の活性化を図り、ひいては日本経済の発展に寄与することがクレジットカード業界には求められており、日本クレジット協会はその一助となることが期待されていると考えています。

[PR]提供:一般社団法人日本クレジット協会