ガールズバンドを組んでいたあの子の記憶とチャットモンチー - 『時をかけるバンド』で思い出すあの頃の熱

私の青春時代は、邦楽ロックに彩られている。BUMP OF CHICKEN、RADWIMPS、ELLEGARDEN……。ラジオを聞いたりテレビを見たり音楽雑誌を読んだりして、気になったバンドは片っ端からCDを借りてiPodに詰め込んでいた。

その中でも異色の存在だったのが、チャットモンチーだ。

今でこそ女性のメンバーがいるバンドが増えたが、当時は全員男性で構成されたバンドが多くを占めていて、だからこそ、全員女性のバンド・チャットモンチーは特別だった。ギターボーカルを担当する橋本絵莉子の透き通るけれど存在感のある歌声を、ベースの福岡晃子とドラムの高橋久美子がしっかりと力強いビートを刻むことで支える。他の男性のみのバンドにまったく引けを取らない、真っすぐな邦楽ロックバンドなのである。

私が15歳の時にリリースされたアルバム『生命力』が、私とチャットモンチーの出会いだ。アルバムには「シャングリラ」のようにアップテンポな曲から、「世界が終わる夜に」のように少しノスタルジックな曲まで収録されている。自分と近い年齢の女性がかっこよくバンドとして活躍しているのを見るのは、嬉しさもあり、眩しくもあった。

FODオリジナルドラマ『時をかけるバンド』第1話より ※画像クリックで詳細へ

　ガールズバンド「ちゃあはん」はメジャーデビューできるのか？
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欠かさなかった手紙の交換

中高一貫の女子校に通っていた私にとって、15歳はモラトリアムの時期だった。制度上、高校に上がるための試験は受けなければならなかったが、誰でも通る試験だったため、最低限の勉強の時間以外は趣味に費やしていた。通学中は音楽を聴き、寝る前には深夜ラジオを聞き、休日は音楽番組のランキングを一通りチェックしたあと、図書館から借りてきた本を読むなどしていた。

そして並行して欠かさなかったのが、当時大好きだった女の子とのメールだ。彼女とは、席替えで隣の席になったのがきっかけで仲良くなった記憶があるが、同じクラスになったときから「可愛い子がいるな」と思っていた。おっとりとしていて、マイナスイオンでも放っているのかというくらいふわふわとした雰囲気。だが、お兄さんの影響で邦楽ロックに詳しく、彼女から教えてもらったバンドはたくさんある。軽音楽部に所属していてドラムを担当していると聞いたときは、彼女の醸し出す空気からは想像できなくて驚いた。

FODオリジナルドラマ『時をかけるバンド』第4話より ※画像クリックで詳細へ

私たちは、学校では手紙を交換し、家に帰ってからもさまざまなことでメールを交わした。それが日課になっていた。私が調子を崩して保健室にいるときは、必ず会いに来てくれたし、彼女が保健室にいるときは私が会いに行った。ミッキーとミニーのおそろいのキーホルダーも持っていた。

時間がたっても消えない気持ち

高校にあがってクラスが変わってから、彼女との付き合いはだんだん遠くなっていった。私の気持ちばかりが大きくて、彼女は新しいクラスで新たな友人関係を構築していった。それでも私はたまに思い立ってはメールを送り、彼女は以前より頻度は落ちるけれど返してくれた。彼女が留学に行ったときは、メールの件名に日時を入れて、時差があることをお互い面白がった。しかし、それも大学入学以前の話。お互い違う大学に進学してからは一度会ったきりだ。たまにFacebookに投稿があると、私の知らない場所で元気にしてるんだな、と心のどこかがギュッとなる。彼女と一緒の環境にいる人がうらやましくなる。今でも、彼女は私にとって特別に好きな人だ。

その特別な感情が、女子校という空間だったから成り立ったものなのか、そうでないのかは分からない。でも、チャットモンチーを聞くと、15歳の頃に彼女と「バンドをやりたいね」「チャットモンチーみたいになりたいね」と話したことを思い出してしまう。それは特別な日ではなく、淡々と続いていく学校生活のなかでの1コマの、ささいな会話なのにもかかわらず。

もう彼女はそんな日々を覚えていないと思う。でも私は、あの当時聴いていた音楽を再生することで、彼女と過ごした特別な時間が脳裏に蘇ってくるのだ。

あなたの青春を彩ったガールズバンドを思い起こさせてくれる話題のドラマ

音楽というのは不思議で、頭のなかのいろんな記憶と結びついているもの。聴くと青春時代の楽しかった思い出、ほろ苦い思い出、いろんな思い出が呼び起こされて、きゅっと切なくなってしまう……そんな名曲があなたにもあるのでは? 特にガールズバンドの楽曲は、切ない恋心や、どうしようもない自分自身との葛藤など、若者の等身大を歌ってくれるものが多く、いつまでも忘れられない名曲が多い気がする。

FODオリジナルドラマ『時をかけるバンド』 ※画像クリックで詳細へ

そんなガールズバンドの魅力に今一度フォーカスしたドラマが、フジテレビが運営する動画配信サービス「FOD」に登場。その名も『時をかけるバンド』だ。

『時をかけるバンド』は、韓国初のオリジナル原案を日本人クリエイター、キャストで大胆に再構成した作品。日本、中国、そしてアジア諸国で各国版のドラマとしてローカライズされ、順次制作される大型プロジェクトの日本版となっている。

舞台は2006年の東京。解散寸前のスリーピースガールズバンド「ちゃあはん」のもとへ、「未来からやって来た」と自称する容姿端麗な謎の男、亮(三浦翔平)が現れ、３人のプロデューサーとして彼女たちをスターダムへと導いていく。一風変わった亮の試練に耐えながら、困難を乗り越え、バンドの結束を深めていく３人は、無事にメジャーデビューを果たすことができるのか!? 音楽×ラブコメ×SFと、楽しめる要素が盛りだくさんのオリジナルドラマである。

FODオリジナルドラマ『時をかけるバンド』第1話より ※画像クリックで詳細へ

プロデューサーの亮を主演・三浦翔平が、「ちゃあはん」のメンバーを白石聖、長井短、大原優乃が演じる。ダメダメな女子３人を引っ張っていく謎めいた亮と、バンドのリーダー的存在の有希、極度のあがり症で本番に弱い汐里、引っ込み思案の瞳子など、それぞれのキャラクターが際立ち、コミカルでテンポの良い会話は見ていて飽きない。「こんな掛け合いをしているガールズバンド、実際にありそうだな」と思わせる、キャスト陣のナチュラルな演技も魅力のひとつだ。

また、共同生活を送るうちに、シェアハウスでは恋の予感も……。そのほかにも、亮との関わりを通して3人の考え方やモチベーションが徐々に変化していく様子には、観ていて勇気を与えられる。